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25年前、“一つの呼吸”で響いた3人の歌声 「未完成」の名曲が心に響くワケ

  • 2025.11.22

「25年前、あのアニメのエンディングで流れた曲、覚えてる?」

2000年の冬。世紀が変わろうとしていた日本には、不思議な静けさがあった。誰もが新しい時代を前に少しだけ立ち止まり、見えない未来に耳を澄ませていた。そんな季節に、心の奥をやさしく撫でるような一曲が届く。

dream『My will』(作詞:松室麻衣・作曲:y@suo ohtani)――2000年11月29日発売

日本テレビ系アニメ『犬夜叉』の第1期エンディングテーマとして放送されたこの曲は、派手な装飾もなく、ただ“まっすぐ”に響くメロディで多くの人の記憶に残った。

揺れながら始まった、新世紀のガールズ・ポップ

dreamは2000年、avex traxからデビューした女性ヴォーカルユニット。楽曲『My will』では、内省的で穏やかな表情を見せた。作詞を手がけたのはメンバーの松室麻衣。透明感のある詩世界と、どこか達観したようなフレーズが印象的で、作曲のy@suo ohtaniこと大谷靖夫による柔らかな旋律と美しく溶け合っている。

アニメ『犬夜叉』のエンディングとして、作品の“時を越える恋”というテーマにも自然に寄り添った。この曲が流れるたび、物語の余韻とともに静けさが心に満ちていった。

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dream-2000年撮影(C)SANKEI

『My will』の魅力は、その未完成さの美しさにある。強いメッセージや決意を歌い上げるのではなく、まるで心の中でそっとつぶやくようにメロディが紡がれていく。スローテンポながら、静けさの中に確かな意志を感じさせる構成になっている。

dreamの3人のボーカルも秀逸だ。重なりすぎず、離れすぎず、まるで一つの呼吸のように響き合う。音の厚みを抑えたアレンジも功を奏し、聴く人に“静かに前を向く勇気”を与えてくれる。

『犬夜叉』がくれた永遠の余韻

この曲が多くの人の心に残った理由のひとつは、アニメとの完璧なシンクロにある。物語のエンディングで、夕焼けや風の音とともに流れる『My will』は、戦いや恋、別れといったドラマの後に訪れる“静かな決意”の象徴のようだった。

25年経っても色あせない“静かな願い”

2000年代初頭のJ-POPは、テクノロジーやスピード感が加速していく時代だった。だがその中で『My will』は、まるで時の流れから少し外れた場所に立つように、静かに輝いていた。

派手さはない。けれど、何度聴いても心が洗われる。それはきっと、「夢を見ること」と「現実を生きること」のあいだにある微妙な揺らぎを、この曲が優しく包み込んでいるからだろう。

25年経った今も、聴けばあの頃のように胸の奥が少しだけざわめく。それは懐かしさではなく、まだ終わっていない“自分の物語”への呼びかけのように感じられる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。