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かつて一世を風靡した“伝説のヴィジュアル系ボーカル”。日本アカデミー賞に輝いた「崩れない俳優」とは

  • 2026.6.13
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2001年、「ノイエメンズ」のCM撮影現場より(C)SANKEI

強者を演じさせて、これほど様式の崩れない俳優はいない。王、武将、支配者。GACKTがまとう役には、いつも揺るがない佇まいがある。

歌の世界で長くカリスマであり続けた人が、俳優としても「崩れない王」であり続けてきた。役柄が変わっても、その芯にある立ち姿は変わらない。様式を崩さないこと。それがGACKTという表現者の一貫した強さだ。

すべては音楽の世界から始まった

GACKTの出発点は御存知の通り音楽だ。1990年代、ヴィジュアル系バンドMALICE MIZERの二代目ボーカルとして頭角を現した。『月下の夜想曲』などでヒットした同バンドで、退廃と耽美の世界を一身に担う声だった。

1999年にソロへ転じ、自ら作詞・作曲し、世界観ごと組み立てるスタイルを貫いている。物語を先に描き、そこに音楽を付ける。誰かに作ってもらうのではなく、王の世界を自分で設計してきた人なのだ。作り手としての一貫した美意識が、このころすでに固まっていた。

ソロに転じてからは、デビュー直後から発表する曲が次々とランキングの上位に入った。そして2007年、シングル『RETURNER〜闇の終焉〜』で、ついにランキングの首位に立った。作られたはずの様式を、本物として通してしまう力。それが、のちの俳優業の土台になる。

軍神を様式のまま立たせる

俳優GACKTを決定づけたのが、2007年のNHK大河ドラマ『風林火山』だった。演じたのは越後の戦国大名・上杉謙信。軍神と呼ばれた孤高のカリスマを、様式美をまとったまま画面に立たせた。

この上杉謙信は、音楽にも影響を与える。先ほど触れた『RETURNER〜闇の終焉〜』は、ハリウッド映画『プレステージ』の日本版テーマに起用された曲だが、ちょうど謙信を演じていた縁から、その年の大晦日、第58回NHK紅白歌合戦では謙信の扮装のまま歌い上げている。役で立った男が、同じ姿で歌の舞台にも立つ。境目がなかった。

崩さないから笑いになる

その様式が思わぬ形で武器になったのが、2019年の映画『翔んで埼玉』だ。二階堂ふみとW主演で演じたのは、埼玉解放戦線を率いる麻実麗(あさみれい)。荒唐無稽なギャグの世界である。普通なら、照れや笑いでどこか緩んでしまう。だがGACKTは、その文法の中でも様式を一切ゆるめなかった。本気で美しく、本気で王のまま立っていた。

崩さないからこそ、まわりの笑いが成立する。茶化さない一人がいるから、世界が締まる。様式を守り抜くことが、コメディの中でいちばんの武器になった。普通なら逆だ。ふざけた世界では力を抜くほうが楽なのに、この人は王のままでいることを選び、それが正解になった。この演技で第43回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受けている。

2024年の映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』では織田信長を演じるなど、覇者を背負う系譜はその後も途切れていない。

音楽と俳優がひとつに重なる

2026年の初夏、GACKTは音楽と俳優の二つの顔を、一つの作品で重ねてみせた。

6月に始まったWOWOWの『連続ドラマW コンサルタント―死を執筆する男―』は、GACKTにとってWOWOWの連ドラ初出演となった。伊藤健太郎が主演するダークサスペンスで、GACKTが演じるのは物語を裏から操る黒川。表に立つ王ではなく、見えないところで全体を動かす役どころだ。

そして主題歌『FALL AGAIN』も、自ら書き下ろした。演じることと、歌うこと。出発点だった音楽と、長く積み上げた俳優業が、ここでまた一つに溶け合う。音楽で王の世界を作り、芝居で王を生きる。その二つが、この一作で融合していく。

初めて現代の主役へ座る

そして2026年の夏、GACKTはさらに新しい場所へ踏み出す。7月クールのフジテレビ系月9ドラマ『ブラックトリック〜裁きを操る弁護人〜』で、フジの月9で初主演をつとめる。弁護士でありながら一級建築士でもある、異色のダークヒーローだ。

歴史や様式の中で王を演じ、これまで積み上げてきた「揺るがなさ」を、今度は現代劇の主役として見せることになる。

様式を崩さずに生きてきた男は、これからも崩れないまま、新しい役の中へ入っていく。歌でも芝居でも、その立ち姿は変わらない。次はどんな王を見せてくれるのか、楽しみだ。


※記事は執筆時点の情報です

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