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35年前、冬の定番曲へ押し上げた“90万の衝撃” 主流サウンドを避けて大ヒットしたワケ

  • 2025.11.22

「35年前の冬、あなたは誰と過ごしていましたか?」

街を歩けば、ショーウィンドウに雪の結晶が光り、ラジオからは新しい冬の歌が流れていた。バブルの残光がまだ街を照らしていた1990年の冬に、そっと心を温めてくれた一曲がある。

DREAMS COME TRUE『雪のクリスマス』(作詞:吉田美和・作曲:吉田美和、中村正人)――1990年11月21日発売

ふたりの時間を、静かに照らした“冬の灯り”

DREAMS COME TRUEにとって8枚目のシングルとなったこの楽曲は、しっとりとした温もりを軸にした冬のバラード。デビュー以来、「笑顔」「前向きさ」「夢」といったテーマで世代を超えて支持を集めていた彼らが、ここで見せたのは少し大人びた表情だった。

吉田美和の柔らかくも芯のあるボーカルは、粉雪のように空気に溶ける。エレクトリックピアノときらびやかな鈴の音が寄り添い、「誰かを思う時間」そのものを音にしたような静けさが流れていく。

恋人たちの会話が少なくなる夜。そんな沈黙を肯定してくれるような優しさが、この曲にはあった。

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DREAMS COME TRUE-2006年撮影(C)SANKEI

言葉を選ばない“美和の歌声”が描く冬の情景

『雪のクリスマス』の最大の魅力は、吉田美和の声に宿る間の美しさだろう。聴く人の胸に自然と染み込む語り口。まるで街の灯りをぼんやり見つめながら、ふと過去を思い出しているような余白がある。

作曲をともに手がけた中村正人のアレンジは、音数を最小限に抑えながらも奥行きのある響きを生み出している。当時主流だった派手なサウンドを排し、エレクトリックピアノを中心に包み込むようなベースで構成されたサウンドは、90年代ポップスの中でも異彩を放つ。

“ラブソング”というより、“誰かを想う歌”。そんな普遍的な感情を、誰にでも当てはまる形で残したことが、この曲の強さにつながっている。

冬を超えて広がった、“もうひとつの物語”

この楽曲がのちに辿った道も、また特筆すべきものだ。1994年、英語詞バージョン『WINTER SONG』として新たにリリースされる。吉田美和自身が英語で歌唱し、トム・ハンクスとメグ・ライアンが主演をつとめた名作恋愛映画『めぐり逢えたら』の日本版オープニングソングとして起用された。その温かく澄んだ響きは共感を呼び、90万枚を超えるヒットを記録した。

『雪のクリスマス』というタイトルが示すのは、単なる季節の描写ではない。それは、“誰かの心に降り積もる記憶”という意味に近い。聴くたびにその人なりの冬が蘇る。街の灯、吐く息、白い空気――そのすべてがこの曲の中に生き続けている。

“時を超える静けさ”が教えてくれること

35年経った今でも、冬になるとどこかで流れてくる『雪のクリスマス』。時代が変わっても、恋の形が変わっても、人はきっと誰かと「同じ空気を感じたい」と願う。この曲は、そんな普遍の想いを静かに包み込む。

ドリカムの音楽が長く愛される理由は、派手さよりも“温度”を大切にしているからだ。それは、聴く人の心を押し流すのではなく、そっと寄り添ってくれる力。『雪のクリスマス』はまさにその象徴であり、今なお冬の定番として息づいている。

雪が降る夜、ひとりでも、誰かとでも。この曲が流れた瞬間、きっとその場の空気は、少しだけやさしくなる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。