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30年前、ホラー番組で流れた“優しいメロディ” 主流に乗らず響き続けるワケ

  • 2025.11.22

「30年前の秋、どんな夜を過ごしていた?」

街の明かりがどこか淡く感じられた1995年。華やかだった音楽番組のステージにも、少しずつ“静けさ”が漂い始めていた。そんな時代に生まれたのが、穏やかで温もりのあるこの曲だった。

L⇔R『DAY BY DAY』(作詞・作曲:黒沢健一)――1995年11月17日発売

フジテレビ系ドラマ『木曜の怪談』のエンディングテーマとしてオンエアされたこのナンバーは、ホラー作品の締めくくりとしては異例なほど“柔らかく、切ない余韻”を残した。夜の静寂を包み込むようなメロディが、放送のたびに人々の心に染み渡っていった。

“L⇔R”が描いた、90年代の都会の呼吸

L⇔Rは、黒沢健一・黒沢秀樹兄弟を中心としたバンド。英国的なポップセンスを軸に、1990年代のJ-POPシーンで異彩を放った存在だ。

彼らの音楽は、派手さではなく“構築された美しさ”で聴かせるタイプ。ビートルズやクラウデッド・ハウスを想起させるメロディラインとハーモニーは、洗練の香りを漂わせていた。

『DAY BY DAY』は、そんな彼らの世界観が最もナチュラルに表現された一曲だ。黒沢健一によるメロディは、日常にある「ため息」や「やさしい諦め」を音に変えたように穏やかで、静かに寄り添うギターと透明感のあるコーラスが、その情景をさらに引き立てている。

“どこかにある風景を見せてくれる音楽”――それがL⇔Rの真骨頂だった。

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※Google Geminiにて作成(イメージ)

小さな奇跡のように輝く、ポップスの品格

『木曜の怪談』のエンディングに流れる『DAY BY DAY』は、恐怖の緊張感を和らげるように、“静かに現実へ戻してくれる音”として機能していた。

黒沢健一のボーカルは、力強くも繊細。息づかいの中に漂う温度感が、まるで夜風のように心に触れる。サビで少しだけ高鳴る旋律は、聴く人それぞれの“明日への歩幅”をそっと整えてくれるようでもあった。

当時の音楽シーンの中で、L⇔Rのような繊細で内省的なポップバンドは、主流とは一線を画していた。だがその分、彼らの作品には“時代に左右されない強度”があった。打ち込み全盛の中でアナログな温かみを重視し、飾らないサウンドデザインでリスナーの心に残る一曲を紡ぐ――その姿勢こそ、90年代ポップスのもうひとつの美学だったといえる。

黒沢健一の死後もなお、『DAY BY DAY』はファンの間で語り継がれている。そこには、派手なヒットではなく、「日々を共にした記憶」として残る力がある。聴くたびに、あの頃の自分に優しく会える。そんな“静かな奇跡”のような存在だ。

あの日の夜に戻れる音

秋の終わり、街灯の下でふと立ち止まる。遠くで流れるあのイントロが聞こえた瞬間、心の奥に柔らかな光が灯る。焦らず、騒がず、ただ一歩ずつ歩いていけばいいと教えてくれるような音。30年経った今でも、『DAY BY DAY』は、そんなメッセージを変わらず運び続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。