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「孤立が寿命を縮める」とは言うけれど…米スタンフォード大教授が指摘する「本当に必要な友達の数」とは

  • 2025.10.27

老後を健康に過ごすためには、どうすればいいのか。スタンフォード大学心理学部のローラ・L・カーステンセン教授は「長生きするためには、“友達の多さ”や“一人暮らしかどうか”は重要ではない。本当にリスクが高まる要素は別にあり、認知症になる可能性もあがってしまうだろう」という――。(第1回)

※本稿は、ローラ・L・カーステンセン(著)、米田隆(監修)、二木夢子(訳)『スタンフォード式 よりよき人生の科学』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

何人かの人々が手を組む場面
※写真はイメージです
長生きのためには「社会的な孤立」を防ぐ必要がある

親しい人間関係が長寿に与える総合的な影響を確認するため、研究者は巧みな方法を考案してきた。たとえば、カンザス大学のサラ・プレスマンと、ピッツバーグ大学医療センターおよびカーネギーメロン大学のシェルドン・コーエンは、出版されている自伝を分析した。

被験者のうち一群は、心理学の歴史に関する全8巻の専門書に自伝の利用を許可した著名な心理学者たちだった。もう一群は、詩人、小説家、ノンフィクション作家など。プレスマンとコーエンは、自伝のなかで人間関係を表す用語、すなわち父、兄(弟)、姉(妹)など家族を表す単語や、「私」ではなく「私たち」「我々」などの包括代名詞が使われる回数を数えた。

次に、人間関係を表す用語の頻度と死亡年齢の相関を示すグラフを作成した。その結果、自伝のなかで社会的役割にふんだんに言及した著者は、そうでない著者より平均で5年長生きしていることを発見した。

では、社会的つながりの恩恵を受けるには、社交家にならなければならないのだろうか。まったくそんなことはない。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学者であり腫瘍学の研究者でもあるスティーブ・コールが、シカゴ大学の心理学教授であるジョン・カチョッポと共同で実施した高齢者研究によれば、健康状態が最も悪かったのは社会的に孤立していると感じている人であって、必ずしも友人の数が最も少ない人ではなかった。

友達は少なくても大丈夫

社会的に満足している人々と比べ、孤独を感じる人の「社会的ネットワークは若干小さいものの、劇的に小さいわけではありません。それにもかかわらず、生理的反応がまったく異なるのです」とコールは述べている。ストレス反応が起こるかどうかを決めるのは、周囲の社会の実際の大きさではなく、周囲の社会がどれほど安全か、自分の未来はどうなるのかという、脳の主観的な計算だ。

『Party of One: The Loners' Manifesto(おひとりさま──独り者のマニフェスト)』の著者であるアンネリ・ルーファスは、独立独歩を自認する人でも、ごく小さいがとても大切な社交の輪に十分つながりを感じ、満足している場合があるという。

ルーファスは言う。「私たちにはたいてい、本当に大切な関係があります。配偶者、親友、親、子、メンター、親戚などとのごくわずかな関係を除けば、友人候補やたんなる話し相手でしかないその他の人とは二度と話さなくても問題ありません。問題ないどころか結構なことかもしれません」

こうした関係は、外向的な人の築く関係とは少し違うかたちをとっているかもしれない。メールが中心で、大人数の外出は少なく、アポなしの訪問はもちろん少ない。しかし、人間関係が大切であることには変わりない。「こうしたわずかな関係を失うのはきわめて重大なことです。仲間が欲しいからというより、その人自身が(中略)私たちにとって大切だからです」とルーファスは語る。

リスクが高いのは「1人暮らし」よりも「孤立している人」

ごく少数の絆で満足できる場合があるのと同様に、集団のなかにいても孤独を感じ、その結果として身体がストレスを感じる場合もある。ここで衝撃的な例を紹介しよう。長寿研究に携わっていた疫学者のローラ・フラティリオーニの研究による観察では、強力な社会的ネットワークのある人は認知症を発症する率が低いが、それは社会的関係がポジティブである場合に限られていた。子どもとの関係が悪い人は、子どものいない人よりも認知症のリスクが高かった。

じつのところ、悪い関係による害は、よい関係による利益以上に大きいのかもしれない。さらにこの研究では、社会に適応した大人に不可欠な要素と考えられがちな結婚と子どもの誕生は、認知症リスクが低い状態になるために必須ではない、という結果が出ている。

ハーバード大学の疫学研究者、リサ・バークマンは次のように述べる。「リスクが高いのは、1人暮らしではなく、孤立です」

また、概して人は1人では生きていない。ミシガン大学の心理学者、トニー・アントヌッチとロバート・カーンは、人生をともにする中心的な人々を「ソーシャル・コンボイ」(社会的護送船団)という造語で表している。この護送船団は巨大ではなく、通常はおもに近い親戚で構成されている。護送船団は長い時間のなかで拡大あるいは縮小する。小さな子どものころは、幼なじみが護送船団に加わる。

シニアの後ろ姿
※写真はイメージです
「人生をともにする中心人物」は柔軟に変わる

歳を重ねたあとは、自分の子どもや、とくに好感をもっている仕事仲間や近所の人が加わる。時がたつにつれ、護送船団に新たな面々が加わる。一方で護送船団を去る人もいる。結婚式に来てくれた親友や、角を曲がったところに住んでいた幼なじみはいまどうしているだろう、と首をひねった経験があれば、それが護送船団に起こりうる変化だ。そのときどきに築いた絆が偽物だったわけではない。核となる社会集団でさえも時間の経過にともなって柔軟に変わるというだけだ。

社会集団は一般的に年齢とともに縮小するので、80歳になるころには50歳のころよりも護送船団の人数は少なくなっている。

長年のあいだ、社会科学者のなかでは、社会集団の縮小は高齢者にとって問題だという見方が優勢だった。友人や大切な人の死、あるいはエイジズムの蔓延によるさまざまなレベルでの高齢者差別が原因で消耗するとされた。やがて、高齢者は社会に関心がない、または社会との関係から醒めた人々だと考えられるようになった。1960〜70年代に優勢だった「離脱理論」では、社会と高齢者は相互に離れていくものだと仮定された。

高齢者の交友関係は“狭く深く”で問題ない

高齢者はみずから死に備えて親しい人との関係から距離を置くようになり、一方で社会も市民の死に備えて高齢者から距離を置くのだとみなされた。多くの政策立案者や科学者は、この理論によって認識された孤独を驚きをもって受け止め、それを緩和するための介入を設計するために多くの時間と労力を注ぎ込んだ。

しかし、情緒的に強く結びついた関係ができていれば、身のまわりの社交の輪が小さくても問題ない。これこそまさに、老年期にありがちな関係だ。じつのところ、高齢者のほうが社交の輪が小さいにもかかわらず、若者よりも人間関係の質が高いと報告されている。

これもまたパラドックスだろうか。私はそうは思わない。人は歳を重ねるにつれて自然と人間関係を刈り込み、あまり満足できない人を取り除きつつ、満足できる人間関係を維持する。青年期や壮年期の大人は、みずから選び取ったわけではない知り合いや人付き合いを多く抱えている。職場で近くの席になった同僚、PTAで一緒になった母親、友人の友人の友人などだ。

こうした人たちは、とくに魅力的だと感じたから人生の一部になったわけではない。同じ会議に出席している、同じブロックに住んでいる、子どもが同じマーチングバンドでトランペットを吹いているなど、たまたま人生が重なりあっただけだ。しかし歳を重ねるにつれ、社会的ネットワークは厳選され、周縁的な関係が自発的に捨てられ、やがて最も大切なつながりだけが残るようになる。

成熟した息子と公園に立っているシニアカップル
※写真はイメージです
高齢者は“すでにある関係”を深めようとする

この現象のじつに興味深い事例を目撃したことを、私はよく覚えている。ある年、スタンフォード大学の学生グループが善意で「もう1人の祖父母をもとう」というプログラムを設定しようとした。若い訪問者がいれば、大学周辺の地域の高齢者が元気になるだろうと考えたのだ。登録する学生を集めるのには何の問題もなかった。

しかし、祖父母をリクルートするのは大変だった。なぜだろうか。大学生と異なり、多くの高齢者は社交の範囲を広げようとせず、すでにある関係を深めようとするからだ。たいていの高齢者にとっては、大学生の年齢の他人を一から知るよりも、大学生の年齢の孫と一緒にいるほうがいい、ということだろう。

また、高齢者は若者より長い時間を1人で過ごし、そのことをとくに不安に思っていないように見える。他人が嫌いなのではなく、人と一緒にいる必然性が低い。そのため、先ほど紹介した善意の学生のように、高齢者が社会的に傷ついていないときにも、傷ついているのではないかと推測してしまいがちだ。ここで、高齢者はうつ病や社会不安を含むほとんどの精神衛生上の問題を抱える割合が若者より低いという事実を覚えておいてほしい。思うに、人間関係によってプラスとマイナスの両方の感情が生まれることが忘れられがちではないだろうか。

「3人」を下回るとリスクが高まる

維持する人間関係が習慣や義務ではなく、真に情緒的な豊かさの源であるかぎり、加齢とともに社交の輪を狭めていくことは申し分なく健全だ。私は長年にわたって、成人になった多くの人に対して、両親を地元の老人センターにしつこく誘ったり、さらに悪いことにビンゴゲームを無理やりやらせたりするのをやめるよう促してきた[アメリカでは5×5マスのビンゴゲームが高齢者向け娯楽として定着している]。この種の表面的な社会的ふれあいが健康によいという証拠はない。無理な付き合いで不安になる場合は、むしろ逆効果かもしれない。

ローラ・L・カーステンセン(著)、米田隆(監修)、二木夢子(訳)『スタンフォード式 よりよき人生の科学』(サンマーク出版)
ローラ・L・カーステンセン(著)、米田隆(監修)、二木夢子(訳)『スタンフォード式 よりよき人生の科学』(サンマーク出版)

ただし、私自身の研究チームやほかの健康長寿研究チームの研究によると、親しい知り合いがあまりに少ないとリスクがあることが示唆されている。その理由については推測の域を出ないが、高齢者の場合に鍵となる数字は「3」のように思われる。

つながりが3人未満だと、安心するには少なすぎる。また、友人、親戚、恋人、専門職の仲間のように、関係が多様であるほうが望ましい。1つの強い社会的な絆に閉じこもっているのは不十分だ、とバークマンは指摘する。孤立した恋人関係のように、すべてに優先されるたった1つの近い関係しかない状態は不安定だ。なぜなら、絆はいつでも切れる恐れがあるからだ。歳を重ねていくと、社会集団のなかの大切な人たちとは徐々にお別れすることになる。高齢者は亡くなり、若者は家を出ていく。だからこそ、社会的ネットワークのしなやかさがとりわけ重要になる。

高齢者3人
※写真はイメージです
“同年代の人とだけ”付き合っていると急に孤独になる

高齢者が同年代の人とだけ親しい関係を築いていると、ネットワークをまるごと失ってしまう恐れがある。

私は、老人ホームに入居していた女性の話を鮮明に覚えている。その人は、3人のすばらしい親友と人生をともにしてきた。この3人の女性以外は誰もいらないと思っていた。しかし、電話で3人のうち最後の1人が亡くなったと伝えられたとき、その事実を伝える相手も、電話をする相手もいなくなっていたことに打ちのめされた。それほどまで孤独を感じたことはなかったという。

(参考文献)
・包括代名詞が使われる回数を数えた:Pressman, S. D., & Cohen, S. (2007). The use ofsocial words in autobiographies and longevity. Psychosomatic Medicine, 69, 262-269.
・「リスクが高いのは、1人暮らしではなく、孤立です」:Berkman, L. (2000).Which influences cognitive function: Living alone or being alone? Lancet, 355(9212), 1291-1292.
・「ソーシャル・コンボイ」(社会的護送船団):Kahn, R., & Antonucci, T. C. (1980). Convoys over the life course: Attachment, roles, and social support. In P. B. Baltes & O.Brim (Eds.), Life-span development and behavior (Vol. 3, pp. 81-102). New York: Academic Press.
・しなやかさがとりわけ重要になる:Berkman, L., & Glass, T. (2000). Social integration, social networks, social support and health (pp. 137-173). In L. F. Berkman & I. Kawachi(Eds.), Social epidemiology. New York: Oxford University Press.(リサ・F・バークマン、イチロー・カワチ、M・マリア・グリモール編『社会疫学(上)(下)』大修館書店、高尾総司、藤原武男、近藤尚己監訳、2017年)

ローラ・L・カーステンセン
スタンフォード大学心理学部教授
カリフォルニア州ロス・アルトス・ヒルズ在住。スタンフォード大学フェアリー・S・ディキンソン・ジュニア記念講座公共政策学教授や、同大学長寿研究所の設立者で所長も務める。カーステンセン博士の研究は20年以上にわたってアメリカ国立老化研究所から支援を受けている。グッゲンハイム・フェロー、アメリカ国立衛生研究所(NIH)メリット賞受賞者、マッカーサー財団高齢化社会ネットワーク会員でもある。

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