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“魔法の旅人”ストリートマジシャンが世界の子どもたちへ届ける心のうるおい

  • 2025.10.15

困難に向き合う子どもたちへ、笑顔を届け続ける日本人男性がいます。
世界を旅しながら活動する、元高校教師のストリートマジシャン。
その思いを見つめました。

中国とパキスタンを結ぶ『カラコルム・ハイウェイ』。
舗装道路としては、世界一の標高を誇る道です。
1人の日本人が、パキスタンに向かうバスに乗っていました。
加藤竜平さん、29歳。
世界各地を巡る、ストリートマジシャンです。

Sitakke

世界各地の路上に立ち、加藤さんはコインやトランプなどを使ったマジックで現地の子どもたちを魅了しています。

その鮮やかな手さばきを目の当たりにした瞬間、子どもたちの表情は笑顔で溢れます。
ストリートマジシャンの加藤さんは、1年の半分を旅先で過ごすのだといいます。

「マジックは言語の壁を超える。みんなストレスとかを全部忘れて、乾いた日々を、わっと潤してくれる、魔法が広がるような時間がいいなと思っている」

マジックも「タブー」な場所も

Sitakke
インスタグラム ryuheimagicより

加藤さんは9月、中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区にいました。
標高は3000mで、朝はとても寒い場所です。

現地では、厳しい監視下で多くのウイグル族が息苦しい暮らしを強いられています。

「どこに行っても監視カメラはあるし、宗教的なことは一切タブー」

ストリートマジックも同様です。

Sitakke

「路上でやって、結構ウケていました。反応はよかった。けれどやっぱり…あまり自由な感じに、ここでは旅ができない」

これまでに訪れた国や地域は100を超えます。

毎年夏は札幌へ

Sitakke

そんな加藤さんの姿が8月、札幌にありました。

毎年夏の札幌を訪ねて、大通公園のビアガーデン会場やススキノの飲食店などを回って、マジックを披露しています。
旅をつなぐ渡航資金を得るための、貴重な1か月なのです。

「ビアガーデン会場では声を張らないと通らないので。休憩しながら、水も飲みながらマジックを披露して回る」

高校教師から路上マジシャンへ

Sitakke
加藤竜平さん

大阪で生まれ育った加藤さん。
幼いころから、人を驚かすマジックが好きでした。
大学を卒業後、世界史を教える高校の教師になりましたが、どこか違和感を拭えなかったといいます。

「当時は23歳で、生徒とは年齢では5~6歳の差。みんな“Ryuhei”と呼び捨てにするくらい距離感が近すぎて。教員として、一人前と言えるには乏しかったものですから…」

加藤さんはほどなくして教師を辞め、独学したマジックと共に、旅に出ました。

Sitakke
去年5月

訪問先は、ネパールの孤児院であったり、シリア内戦を逃れた難民キャンプであったり。
困難に直面する子どもたちの前に立って、その心を和ませてきました。

世界各地で笑顔と触れ合うようになり、6年になります。

対立続くマチからSNSで…

Sitakke
インスタグラム ryuheimagicより パレスチナ自治区

世界各地で、今も紛争が絶えません。
パレスチナ自治区のベツレヘムを訪ねたのは、2025年3月のことです。

「こっちはユダヤ人の入植者がたくさんいる、壁の向こうがアラブ人たち…」

「この通りも、昔はパレスチナの商店が並んで賑わっていた。だけれど、ことごとく閉鎖されて」

Sitakke
インスタグラム ryuheimagicより パレスチナ自治区

紛争と対立が続く現地で、厳しい現実を記録してSNSを通じて発信しています。

旅先では現地で交流が生まれた人の家に招かれることが多く、加藤さんは可能な限り、滞在費を抑えながら、旅を続けています。

ただ、紛争地や政情が不安定なマチでは危険とも隣り合わせです。
アフリカのある国では、旅先の村でパスポートを取り上げられ、地元の警察に拘束される事態にも見舞われました。

子どもたちの驚きと笑顔が力に

Sitakke

夏の札幌で渡航費を稼ぐため、加藤竜平さんは、夜からススキノの店を回ります。
その前に立ち寄ったのは、札幌・手稲区にある『子ども食堂』です。

トランプのカードを使ったマジックを次々と披露すると、集まっていた子どもたちから、大きな驚きの声と歓声が上がります。
いつも子どもたちの驚きと笑顔は、加藤さんにとって、とびきりの報酬なのです。

Sitakke

「来週からまた海外に行っちゃう。年に一回は、必ず札幌に来るから、来年もここにいたら、また新しいマジックを見せるね」

子どもたちとの約束です。

「シリア難民キャンプは、ちょっと大人たちの表情が暗かったと感じました。もしかしたら、僕らもそういうところに生まれたかもしれないと思ったら、他人事にならないから自分の目で見たいし…」

「僕はマジックでみんなを喜ばせたくてあちこちのマチへ行ったのに、逆に僕がパワーをもらうほど、みんなパワフルで笑顔が絶えないくらい…世界中を回りたい、もっともっと」

Sitakke

現在はパキスタンに滞在中で、今後はリビアやチュニジアなどを回り、赤道を南下して、アフリカ大陸を旅する予定だといいます。

ストリートマジシャン、加藤竜平さん。
『魔法の旅人』は、当たり前の日常を奪われた子どもたちへ、笑顔を運ぶ旅を続けています。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年9月10日)の情報に基づきます。

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