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「悪質な水道業者に数十万円請求された…」法律のプロが教える、高額請求トラブルで泣き寝入りしない方法

  • 2025.10.21
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

日常生活を送る上でなくてはならないものはたくさんあるものの、その中でも「水道」は最上位に挙げられるものの一つでしょう。トイレや洗濯、食事の後片付けなど、さまざまな場面で使用される重要なライフラインです。

しかし、悪意のある人物の標的になることもしばしば。SNSでも「水道トラブルで業者を呼んで修理をしてもらったら、のちに数十万円の請求をされた。トラブルの内容に比べて高額すぎる」という投稿が頻繁に話題になります。

実際に、全国各地の自治体からも定期的に注意が呼び掛けられています。では、水道トラブルの被害に遭った際、具体的にどのように対処したら良いのでしょうか?弁護士の解説とともに、詳しく解説します。

都道府県や自治体からも注意喚起が行われている

東京都水道局は「悪質な水道修理業者にご注意を!!」として、悪質な水道業者が増えている事態に注意を呼び掛けています。

それらの水道業者は、依頼していない作業をして高額な請求をしたり、部品交換で修理できるにもかかわらず、虚偽の発言をしてトイレタンク等本体の交換を勧誘してくるとのこと。また、申し込み時に見積もりをしてから作業すると説明したのに、実際には正確な見積もりを出さないまま作業を進め、最終的に高額な代金を請求してくる場合もあるのだとか。

神奈川県の公式Webサイトによると、相模原市で「夜間水道が壊れたので、インターネットで見つけた24時間修理サービスの業者に連絡した。事業者はすぐに来たが修理代として高額な金額を請求してきた。断ると見積代金を請求された」という事例が起きたとのこと。

東京都水道局は水道業者に修理を依頼する際は、下記の点に注意するよう呼び掛けています。

・蛇口などの水が止まらない場合は、あわてず水道メータ部のバルブを閉めましょう。(普段から水道メータの位置を確認しておきましょう。)
・チラシの「低料金」や「見積無料」の広告を鵜呑みにせず、申込時にしっかり確認しましょう。
・器具などを「交換しなければ直らない」と言われた場合でもすぐに契約せず、応急措置を求め、十分に説明を聞き納得してから契約するか決めましょう。高額だと思う場合は、ほかの業者に聞くなど、契約は慎重に行いましょう。
・内容と金額に合意した場合は、例え市価に比べ高額であっても有効な契約であり、解決は困難です。 くれぐれも注意しましょう。
出典:悪質な水道修理業者にご注意を!!(東京都水道局)

支払い義務はあるの?弁護士が解説

水漏れなどの水道トラブルが発生し、業者を呼んだら修理後に高額請求されたという事態に遭遇した場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?

法的観点から、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に解説していただきます。

---事前に料金説明のないまま作業された場合、後から高額請求されても支払う義務はあるのでしょうか?

寺林弁護士:

事前に料金説明がないまま作業が行われた場合、原則として高額な請求に対して直ちに支払義務が生じるとは限りません。

民法上、契約は当事者間の合意によって成立しますが、料金や作業内容についての説明が不十分であれば、合意があったとは認められにくく、請求の妥当性が問われます。

特に、一般的な相場を大きく超える金額であれば、消費者契約法に基づき「不当な勧誘」として取り消しの対象となる可能性もあります。

高額請求を受けた場合は、支払う前に契約内容や作業の正当性を確認し、必要に応じて消費生活センターや弁護士に相談することも検討しましょう。

---すでに現金、クレジットカード払いや電子決済で支払ってしまった場合、返金(チャージバック)を求めることは可能ですか?

寺林弁護士:

すでに支払いを済ませた場合でも、状況によっては返金やチャージバックを求めることが可能です。

まず、現金払いの場合は業者との交渉が基本となりますが、領収書や契約内容が不明確で不当な請求だった場合、消費生活センターや弁護士を通じて返金を求めることができます。

クレジットカードや電子決済の場合は、カード会社や決済サービスに「チャージバック(支払い取り消し)」を申請できる可能性があります。
特に、詐欺的な請求や契約内容に重大な不備がある場合は、一定の期間内であれば調査のうえ返金されるケースもあります。ただし、申請には証拠(契約書、請求書、業者とのやり取りなど)が必要となるため、記録を残しておくことが重要です。早めの対応が必要です。

---トラブルを未然に防ぐため、消費者が契約前に確認すべき「法的チェックポイント」を教えてください。

寺林弁護士:

水道トラブルなどの緊急対応業者と契約する際、消費者が事前に確認すべき法的チェックポイントは以下の通りです。

1、料金体系の明示
基本料金、出張費、作業費、部品代などの内訳が明確に提示されているか確認しましょう。口頭だけでなく、書面やメールでの確認が望ましいです。

2、契約内容の合意
作業前に「何を、いくらで、どの範囲まで」行うのか、双方が合意しているかが重要です。曖昧な説明や「とりあえず見てみます」は要注意です。

3、業者の身元と資格
会社名、所在地、連絡先、登録番号(建設業許可など)が明記されているか確認し、信頼できる業者かどうかを見極めましょう。

4、キャンセル・返金条件
作業前のキャンセル料や、万が一の返金対応についても事前に確認しておくと安心です。

5、消費者契約法・特定商取引法の理解
不当な勧誘や説明不足があった場合、契約の取り消しが可能な場合があります。基本的な権利を知っておくことが予防につながります。

水道トラブルが発生したらどうするべき?

水道トラブルが発生した際の対応は、居住地によって異なります。

例えば、東京都水道局は公式Webサイトで「漏水修繕の依頼先」を紹介しています。修理内容ごとにフローチャートでわかりやすく説明されています。

「○○市 水漏れ」などで検索し、お住まいの地域の自治体の公式Webサイトを確認してみましょう。

ただし、検索結果の中には悪徳な水道業者のWebサイトが表示されている可能性もあります。一見料金が安価だからといって安易に信用せず、少しでも不審な点があれば利用するのは控え、まず自治体の公式Webサイトを確認することをおすすめします。

まず自治体の公式Webサイトで確認を

水道トラブルで業者に修理を依頼した際の高額請求被害が全国で相次いでおり、自治体からも注意喚起が行われています。

被害を防ぐためには、事前の料金確認が最重要です。作業前に必ず見積もりを書面で取得し、料金体系の内訳を確認しましょう。万が一高額請求された場合、事前説明がなければ支払い義務が生じない可能性があります。すでに支払った場合でも、クレジットカードならチャージバック申請、現金払いでも消費生活センターや弁護士を通じた返金交渉が可能です。その際、契約書や領収書などの証拠を保管しておくことが重要になります。

水道トラブルが発生した際は、チラシやマグネット広告の業者ではなく、まず自治体の公式Webサイトで指定業者を確認することをおすすめします。緊急時こそ冷静に対応し、信頼できる業者を選びましょう。


記事監修:NTS総合弁護士法人札幌事務所 寺林智栄 弁護士
2007年、弁護士登録(札幌弁護士会所属)。 2013年から2017年まで東京家庭裁判所家事調停官を務める。 離婚・相続などの家事事件、労働問題、一般民事事件、企業法務など、幅広い分野を担当している。


参考:
悪質な水道修理業者にご注意を!!(東京都水道局)
悪質な業者や詐欺にご注意ください(神奈川県)


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