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『Amazonプライム』CMで注目女優の“初主演ドラマ”初回放送で描かれた週刊誌のリアルな裏側【ドラマストリーム】

  • 2025.10.8

「人の人生を壊して楽しいか?」……10月7日(火)に放送された第1話で、主人公・信田日向子(奥山葵)が、クレームの電話口で投げかけられたこの一言。TBS系 ドラマストリーム『スクープのたまご』は、まさにこの問いに向き合うようにして始まる、お仕事奮闘ドラマだ。原作は、大崎梢の同名小説。実際に『週刊文春』への徹底取材をもとに執筆された作品であり、週刊誌の“知られざる裏側”をリアルに描いている。

引用元:“スクープ”はこうして生まれる「文春砲」のリアルな舞台裏 週刊文春デスクに聞く1週間のルーティーン | TBSテレビ

※【ご注意下さい】本記事はネタバレを含みます。

「スクープだ、スクープだ!」の裏にある取材の汗:虚偽ネタを見破るまで

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(C)ドラマストリーム『スクープのたまご』製作委員会

舞台となるのは、大手出版社・千石社が発行する『週刊千石』の編集部。24歳・入社2年目の日向子は、希望とは裏腹に、もっとも近づきたくないと思っていた週刊誌に異動を命じられる。憧れの出版社人生は、一気にクレームとボツ企画の連続に転落。「私の瞳は、まだ濁っていないだろうか」と憂うその姿は、まさに“迷える新社会人”の象徴だ。

ところが、そんな彼女にも初の“スクープのたまご”が舞い込む。国民的アイドルグループ・ティティの人気メンバー・石川まとみに関する情報提供。ネタを提供してきた相手は、確かに写真を持っていると言う。しかし、もしそれが本当なら、まだ17歳である石川の芸能人生を潰しかねない。初めての手柄を掴むチャンスに胸を躍らせつつも、どこか複雑な表情を見せる日向子。

実はこの構造こそが、本作の一番の魅力だ。明確な正義や悪などない。記者としての“仕事”と、人間としての“良心”が綱引きを始める。そのバランスに葛藤する日向子の揺らぎは、演じる奥山葵のナイーブな存在感によって際立っていた。

表情のひとつひとつがどこかぎこちなく、しかしそこがいい。慣れない仕事に戸惑いながらも、目の奥には確かに火が灯っている。そんな“成長の余白”を感じさせる佇まいが、日向子という人物にリアリティを与えている。

リアルに描かれる“スクープの裏側”地味で地道なジャーナリズム

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(C)ドラマストリーム『スクープのたまご』製作委員会

やがて、同僚や先輩記者のアドバイスを受けながら、日向子はネタ提供者に直接会いに行く。しかし、持参された写真に違和感を覚えた彼女は、いつも持ち歩いている雑誌を手がかりに、写真の合成トリックを突き止めた。つまり、ガセネタだったのだ。日向子の地道な観察眼と誠実さが、スクープにはならなかったけれど、ひとつの“真実”を守ったことになる。

本作がおもしろいのは、週刊誌というと一般的に“信憑性が怪しい”とされがちなメディアの裏側に、綿密な取材や裏取りの努力があることを、きちんと描いている点だ。

情報提供があれば、すぐさま記事になるわけではない。複数の角度からの裏付け、証言、証拠。そのひとつひとつを拾い集めて初めて“世に出せる記事”になる。ドラマはその過程を、決して浮ついた演出で描かず、淡々と、リアルに、しかし丁寧に映し出していく。

印象的だったのは、日向子が編集部で、ネタの提供者から聞いた話を詳細に共有するシーン。その背後には、原作の漫画コマが大きく映し出されるというユニークな演出があった。映像で実際の取材シーンを回想するのではなく、あえて原作の“静止画”を使うことで、情報の“虚実”が交錯する曖昧さ、取材者の視点の偏りを感じさせる効果がある。

真実とは、常に“見る角度”によって変わるもの。そのことを、演出が巧みに物語っているのだ。

主演・奥山葵のたどたどしさが“新人記者”とリンクする

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(C)ドラマストリーム『スクープのたまご』製作委員会

主演の奥山葵は、今回がドラマ初主演。AmazonプライムのCMなどで注目され始めた彼女だが、芝居のキャリアはまだ浅く、どこかセリフのテンポに粗さが残る箇所もある。

しかしそれが、むしろ信田日向子という“記者1年目”のフレッシュな輪郭を浮かび上がらせる結果となっている。変に達者でないからこそ、観る側は日向子の視点に自然と重なっていくのだ。

第1話ではまだ、彼女は記者としての一歩を踏み出したばかり。しかし、石川まとみの一件を通じて、スクープの裏にある“責任”を実感した日向子が、今後どのように“週刊誌の存在意義”を自らの言葉で語れるようになっていくのか。それが、このドラマの本当の見どころだ。

スクープは、人を傷つけるためにあるのではない。事実を伝え、真実に迫るためにある。その思いを胸に、日向子の奮闘は続く。


TBS系 ドラマストリーム『スクープのたまご』毎週火曜0時58分〜 ※一部地域をのぞく

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧・Twitter):@yuu_uu_