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麻痺する右半身が愛おしい…左手のフルート奏者「アドバンテージをもらった」体の対話

  • 2025.9.21

右半身に麻痺を抱えながらも左手でフルートを演奏する畠中秀幸(はたけなか・ひでゆき)さん56歳。
病気によって生まれた異なる2つの感覚を受け入れ、音楽と農業が対話する新たな空間をつくろうとしています。

畠中さんはいま最も忙しく、最も演奏依頼がきているフルート奏者のひとりかもしれません。
この日は、能楽師の津村禮次郎さんと共演です。

Sitakke

これまで築地本願寺や沖縄の戦争遺跡など、全国各地で演奏してきた畠中さんにはもう1つの顔があります。

「農業をやりながらアート活動をしよう、めっちゃ面白そうでしょ」

到着したのは、長沼町の農業で使われるD型倉庫。
建築家としての新たな活動場所です。

「ここにも野菜を貯蔵するんですが、一般の人にも開放して音楽を聞かせた作物を売ったりするスペースと、ステージにして演奏会ができるような形にする」

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目指すのは、音楽と農業をかけ合わせた「アートヴィレッジ」という施設。
暗く、農器具が並んでいた倉庫は、サビや土を生かしながらも、木のあたたかい香りが広がる空間へ。

「演奏会のときにパタンと開くと音が抜けると回る。塞ぐと音が止まる」

大きな観客席が並び、トタンがむき出しだった壁は、音が反響しやすい材料を施し、音楽ホールとなりました。

「壊して新しいものを建てるのはいいのかもしれないが、いい空間があったら使わせてもらう」

建築と音楽。

音楽と農業。

異なる2つのモノを繋ぐ活動のきっかけは、14年前に畠中さんを襲った病にありました。

「右半身はあきらめた方がいい」

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「人間ドックの前日に具合が悪くなった。指揮をしている途中に倒れちゃった」

脳内出血でした。
医師からは、「右半身はあきらめた方がいい」と告知されたといいます。

「病気をしてから人間関係がガサガサと崩れていき、怖かった。対人恐怖症とパニック障害を併発して引きこもった」

しかし、病気自体に絶望していたのではありません。
そのわけは、見舞いに来た友人の美術家の言葉でした。

「できる体で感じることと、できない体で感じることになるから、感覚が2倍になるでしょと。それはアート的に絶対いいことなんだと」

今も、週に2回のリハビリに通います。

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「リハビリをやらないと、アイディアが浮かばなかったり、間違いなく楽器については、体が固まって演奏できなくなるので」

麻痺が残る右と、そうではない左。
違う感覚の両者がいることで、体の中で対話が生まれるといいます。

「元気な左手側と、ちょっと弱い右側が一緒になって。感覚が違うので、ごはんを食べるときや歩くときにちゃんと右と左が対話をして、どうやってやるか話し合いが起きるんです」

今は、右半身が愛おしい

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長沼町にアートヴィレッジを建てた理由のひとつは、フルート製作者の山田和幸さんの存在です。
左手だけで演奏できるフルートを作ったのは山田さんでした。

山田さんは「速くいろんな音が出るのも技術の1つだが、だんだん音がとっても音楽的な形で良くなっている」と話します。

この日、新たな発見がありました。
右手がフルートの穴をふさぎ、音が出にくくなっていたのです。

「正直ラッキーだったと思っています。この体になったことの方が。一般的には、障害を持つことはハンディキャップと言われるかもしれないが、アドバンテージをもらったと思っている」

「健常」と「障害」。
自身の中にある2つの違う感覚を受け入れ、排除せずに対話する畠中さん。

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「今は、右半身の方が愛おしいですよ。できないから。右半身を頑張ろうねって言っている左も尊いし、一生懸命できることを頑張っている右も尊いじゃないですか」

アートヴィレッジでは野菜の販売とアート活動を一体としたイベントを予定していて、音楽と農業の対話が生まれそうです。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年8月2日)の情報に基づきます。

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