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映画化で脚光を浴びる原作者の“もう一つの代表作”「超傑作」「家族でハマった」芸能界にまでファンを広げた“大人気アニメ”

  • 2025.9.16

漫画家・魚豊の連載デビュー作『ひゃくえむ。』がアニメ映画化される。陸上競技の世界で“100メートル”という一瞬の輝きを描く作品で、天才ランナーのトガシと努力家の転校生・小宮の友情とライバル関係を軸に物語が展開する。松坂桃李や染谷将太ら豪華声優陣が参加する。

異端と信念を描く『チ。』

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

今回注目したいのは、魚豊のもう一つの代表作『チ。 地球の運動について』だ。原作は2020年から2022年まで『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載され、2024年10月からテレビでアニメ化された。舞台は15世紀ヨーロッパ。天動説が信じられる時代に、地動説の研究に挑む者たちの命懸けの物語だ。

他の作品ではなかなか見かけない、章ごとに主人公が交代する斬新な構成が魅力的だ。信じたものを追い求めた結果、拷問にかけられたり、志半ばで命を落とす残虐な描写も少なくはない。そのため、新章が始まるたびに「次は誰が主役か」という期待と、「この人物も消えてしまうのでは」という焦燥と緊張感が生まれる。次々と変わる主人公たちとともに、読者や視聴者は危険と孤独の中で信念を貫く人々の姿に引き込まれていく。ページをめくる手の震えや、画面越しに伝わる熱量すらも、作品の持つ切実さを裏打ちするようだ。

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

また、人気俳優の松山ケンイチ、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴、お笑い芸人のやす子など、幅広いジャンルの著名人もXで本作について言及しており、芸能界にもファンの輪が広がっている。
SNS上では「テレビアニメは普段見ないのですが、これは引き込まれます」「正にアニメの超傑作」「家族でハマった」など、世代を問わず熱い支持の声が相次いでいる。さらに、原作者の魚豊氏が2025年9月現在で28歳であり、連載中はより若かったことも注目を集め、「驚愕してる」「ひえーってなった」「年齢見て声出た」といった反応も見られている。作品そのものの完成度に加え、若き才能の存在がファンを一層惹きつけているといえそうだ。

魅力的な名言と普遍的テーマ

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(C)魚豊/小学館/チ。 -地球の運動について-製作委員会

本作のもう一つの魅力は、登場人物の発する鋭い言葉だ。例えば、「本を書きたい」と話す代闘士・オクジー(小西克幸)に対し、修道士・バデーニ(中村悠一)は「大半の人間が読み書きできないのはいいことなんだよ」「誰もが簡単に文字を使えたらゴミのような情報であふれかえってしまう」と語る。SNS時代の今でも胸を突く示唆に富んだセリフだ。

また、1章の主人公・ラファウ(坂本真綾)も同様に、自らの信念を貫くがゆえに命を捨てる決断をする。周囲から見れば滑稽で無謀な選択をしているように映るかもしれないが、彼は「不正解は無意味を意味しません」ときっぱりと告げた。難しい話ではあるものの、突然こちらへナイフを突きつけるかのような鋭く確信に満ちた言葉。それこそが読者を魅了し、理不尽な世界で正しいと信じることの価値を伝える。

残虐な描写や宗教的な葛藤も多く、決して気軽に観られる作品ではないかもしれない。それでも登場人物たちの命懸けの挑戦や信念の輝きは、読む者の胸に深く響く。『ひゃくえむ。』が人生の一瞬を切り取る物語だとすれば、『チ。』は時代と命を超えて、信念や挑戦の普遍的な価値を問いかける物語だ。

新作『ひゃくえむ。』の映画化をきっかけに、ぜひ『チ。』の世界を改めて味わってほしい。


チ。 ―地球の運動について―
ABEMAで視聴可能
[番組URL]https://abema.tv/video/title/568-32

ライター:柚原みり。シナリオライター、小説家、編集者として多岐にわたり活動中。ゲームと漫画は日々のライフワーク。ドラマ・アニメなどに関する執筆や、編集業務など、ジャンルを横断した形で“物語”に携わっている。(X:@Yuzuhara_Miri