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夏山は遭難が増加!救助の現場に密着すると「登山者」の自分に大事な備えが見えてきた

  • 2025.8.31

北海道生まれ北海道育ち。生粋の道産子であるHBCアナウンサー・堀内美里(ほりうち・みさと)が、趣味である「登山」と「山ごはん」を紹介する連載「堀内美里の言いたいことは山々ですが」。

今回は番外編として実は遭難が増える夏山登山で救助の現場を体験しました。
助けに行く立場からみた「登山者」としての安全への備えの大切さに改めて気づくことができた一日。
みなさんも「じぶんごと」で考えてみてください。

※北海道の山に登るときは、クマについても知っておきましょう。「クマに出会ったら」「出会わないためには」の基本の知恵は、HBCのサイト「クマここ」で、専門家監修のもとまとめています。

一日山岳遭難救助隊長に任命されました!

Sitakke

8月11日は「山の日」!

山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝するために設定された国民の祝日です。
2024年のこの日は、楽しく羊蹄山に登っていた私。

今年は、登山者の命を守る『救助の現場』に密着しました!

夏山シーズン、山岳遭難が相次いでいます

Sitakke
5月の羊蹄山。半袖で入山した登山者2人はガクガク震えていました(道警提供)

今年5月、北海道後志の羊蹄山で救助された、男女2人のイギリス人登山者。
防寒具を持たず軽装で山に入り、気温8℃の寒さで身動きがとれなくなりました。

今年も北海道では山岳遭難が相次いでいます。

7月末の時点で遭難した人の数は153人にのぼり、過去5年間で最多となっています。

そんな中、十勝岳連峰の富良野岳で山の日に行われたのが、北海道警察による山岳遭難防止の啓発活動。

私は、一日限定の「山岳遭難救助隊長」に任命され、任務を体験させていただきました。

Sitakke

山岳救助隊の皆さんが普段行っている訓練に密着したり、クマスプレーの正しい装着方法を学んだりして、安全に登山を楽しむためのポイントを教えていただきましたよ!

朝から大人気の富良野岳

Sitakke

山の日で祝日ということもあり、朝からたくさんの登山客で賑わう富良野岳の登山口。

午前7時から緊急時に大きな音を出して自分の居場所を知らせることができる「エマージェンシーコール」を登山者に配って、安全な登山を呼びかけました。

ひとつひとつ渡して話を聞いてみると、この山に登るために道外から来た、海外から来た、という方が数多くいらっしゃいました。

さすが世界に誇る大雪山系国立公園!
私も富良野岳が大好きです。
あの絶景と、一日で4つの山を縦走できる「コスパの良さ」は唯一無二ですよ…!

救助活動へ!しかし…歩けない!?

午前8時。いよいよ山岳遭難救助の体験をさせていただきます。

今回のミッションは、熱中症で動けない遭難者が発生したという想定です。

さっそく装備が入ったリュックを背負いますが…

Sitakke
もはやまっすぐに歩くこともできない…

ああ~重い!プルプルする!!

登山に慣れているはずですが、バランスを取って歩くことすらできません。

20キロ後半はあるというこの大きなリュック。

タンカをはじめ、ロープやハーネス、救急用の医療道具、雨具、ライトなど、必要な備品が詰め込まれています。

Sitakke

食料や水、ライトなどは自分と救助者の分で2倍の量に!
このとき持っていたのは日帰り用の荷物でしたが、それでも水だけで5リットル。

十分な水と食料はもちろん、北海道では夏の登山といえど、夜になると10℃以下になることもあるため、防寒具も必要。
さらにクマスプレーなどクマ対策のグッズも必需品です。

救助隊員のみなさんはこんなに多くの装備を持って行かなきゃいけないんだとその苦労を身をもって体感…。
今回は、歩くこともままならなくなってしまうため、私は少なめの装備に変えていただきました。

いざ出発!

スマホでも確認できる位置情報はやっぱり大切!

Sitakke

要救助者の居場所は、通報時に知らされた緯度・経度で把握しており、分岐点の度に現在地を確認しながら進んでいきます。

山岳救助隊では、スマートフォンと無線機を使って位置を確認していました。

私たちが持っているスマートフォンでも、マップやコンパスなどのアプリを開けば緯度と経度が確認できます。

いざという時のために普段から見方を確認しておくこと、そして登山のときには充電できるグッズも持っていくことをおすすめしていました。

要救助者発見!体力も判断力も…

そして30分ほど歩くと…
倒れて、身動きが取れない登山者を発見しました。

迅速に駆け寄り、声をかけたり体に触れたりして容態を確認します。

頭痛とめまいがあるということなので、熱中症の疑い。
体を冷やすグッズや、耳に装着できる体温計などを使い、応急処置を進めます。

Sitakke

熱中症の場合は、経口補水液を2リットルほど飲んでもらうそう(それもあの重い荷物に入っているのです)。

日陰を作ったり、うちわ(雨具にストックを通してその場で製作したもの!)で仰いだりしながら、水分を摂取させていました。

Sitakke
要救助者を介助している間に作られたうちわ!素早い連携がとられていました

その間に別の隊員がタンカを組み立てます。
準備ができ次第、救助者をタンカに載せて、ヘリコプターで搬送するためのポイントまで運びます。

Sitakke

頭側・足側・左右に一人ずつの計4人で運ぶのですが、ガレ場や茂みをかき分けながらバランスをとって歩くのがなかなか難しい…。

自分の足元が確認しづらいのもかなり怖かったです。

たった30分程度なのに腕がつりそうになり、次の日は筋肉痛にもなりました。

隊員の方に聞いたところ、ヘリコプターでの搬送が難しい場合などにはこの徒歩での搬送が10時間を超えることもあるそうです!
その間も「痛いところありませんか?」「もうすぐですよ」と、声をかけ続けるんですって…!

体力・チームワーク・優しさ・鍛錬…色んなものが備わっていないと、この仕事はできないなと感じました。

無事救助…!

Sitakke

そして30分後、ヘリコプターが到着!

音が聞こえてからずっと空を見上げていましたが、雲の切れ間を縫うように登場したときのかっこよさ…。訓練とわかっていても、ほっと安心できました。

Sitakke

下にいる私たちは、要救助者をヘリコプターに乗せる作業の間、要救助者が風圧で回らないよう、ロープで支えます。
立っているだけでやっとの風です。

そして、無事にヘリに救助ミッション完了です。

自分がいま何をすべきかを瞬時に判断して動く機敏さ、短い声がけで伝わるチームワークの良さ、体力…すべてに圧倒されました。

本当に大変な仕事だと感じました。
普段の訓練の賜物ですね。

登山者である自分の身に置き換えて実感したこと

Sitakke

そして、いち登山者である自分。

普段から熱中症やケガには気を付けているつもりでしたが、もしも何か起こってしまったらここまで多くの人を巻き込んでしまうんだということを実感しました。

安全に山を楽しめるように装備や食料などの準備、体力をつける大切さ。
改めて見直そうと思います。

このあとは、クマスプレーの使い方も体験させていただきました。
また、遭難時に迅速な救助をするため、道警が民間企業と連携して始めた取り組みについても取材しました。
続きはまた連載の中でお伝えします。

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連載「堀内美里の言いたいことは山々ですが」

※北海道の山に登るときは、クマについても知っておきましょう。「クマに出会ったら」「出会わないためには」の基本の知恵は、HBCのサイト「クマここ」で、専門家監修のもとまとめています。

文:HBCアナウンサー・堀内美里(ほりうち・みさと)
北海道生まれ・北海道育ち。2021年入社。HBCテレビでは「グッチーな!」「ジンギス談」「吉田類 北海道ぶらり街めぐり」「大江裕の北海道湯るり旅」などを担当。登山歴4年。おいしくごはんを食べるために山に登っています。登山の魅力はインスタグラムでも発信中

編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は取材時(2025年8月)の情報に基づきます。

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