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「筋トレを始めたいけれど、何から始めたらいいかわからない」──あるエディターの1カ月にわたるワークアウト体験記

  • 2025.8.31
Fit girl with Barbell

遅れて到着した私は慌てていた。ダンベルはどこにあるのか、いくつ必要なのか。3.6キロのダンベルを使えるほど、体力に自信があるだろうか。それとも周りから密かに笑いものにされる覚悟で、ここは大人しく1.8キロのものを手にすべきなのだろうか。「そこ、私の場所」と、小柄で見事な筋肉をした女性が噛み付くように言う。初めてのBody Sculptクラス(有酸素運動や筋力トレーニングなどを組み合わせたフィットネスプログラム)だった私は、右も左もわからなかった。30歳を過ぎ、そろそろ何か新しいハードな運動に挑戦したかったのだが、幸先の悪さに、頭の中は不安でいっぱい。体を動かしたいのに、心がどうも追いつかない状態だった。

「女性はもっと、体を鍛え、強くなければならない」というメッセージを、私はいたるところで目にするようになっていた。今年5月には作家のケイシー・ジョンストンが『A Physical Education』という回顧録を発表し、絶え間なく続けていたダイエットを止め、代わりにウェイトリフティングを始めたことで、いかにして新しい自分を発見できたかを綴った。不倫や筋トレを通して、性や新たな自分に目覚めるミランダ・ジュライの長編小説 『All Fours』の主人公のまさにリアル版だ。夏には、ウェイトトレーニングとの出合いがきっかけで、人生のどん底から這い上がることができたアン・マリー・チェイカーの実体験を記録した『Lift: How Women Can Reclaim Their Physical Power and Transform Their Lives』が出版された。長年『Wall Street Journal』の記者を務め、プロのボディビルダーに転身したチェイカー⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠は、本書で「スポーツ行動を研究する心理学者によれば、激しいウェイトトレーニングは脳の神経回路を再編する」と述べている。どうやら筋トレは体だけでなく、心にもメリットをもたらすようだ。また、ある研究ではダンベルといった重りを使ったトレーニングは神経系の改善につながり、別の研究では認知機能の低下を遅らせるとされている。

朝のワイドショーから脳科学系のポッドキャストまで、筋トレのメリットはいたるところで取り上げられている。ジムなどでの出来事を面白く切り取ったコンテンツは山ほどあり、私が見たのは、ダンベルを手にシャドーボクシングを始めた女性をつい数秒前までせせら笑っていた男性が、困惑の表情を浮かべて見つめる動画だ。そして(アメリカの)成人の約4分の3が、筋肉を増やすためにタンパク質の摂取量を増やそうとしているという。クロエ・カーダシアンも何カ月か前にプロテインをまぶしたポップコーンを発売したばかりだ。

しかし、ほかのミレニアル世代の多くの女性と同じように、好きな運動といえばピラティスとウォーキングの私は、スタジオの片隅に置かれているハンドウェイトやダンベル、バーベル、〇〇ベルといった器具に、つい最近まで興味はなかった。私が目指しているのは、筋肉質でたくましい体ではなく、しなやかに引き締まった柔軟な体。だから、ウェイトを使った筋力トレーニングに用はない。ずっとそう思っていたし、長年ランニングをしていた私は、筋トレをどこか見下してもいた。だが、少し前に、体のところどころにガタが来ていることに気づき、走るのを止めた。これは、やはり筋トレを始めるしかないのか。普段はニューヨークを拠点としているが、一時的にロンドンに住んでいた私は、何かにせき立てられるかのように、早速体を鍛え始めた。

限界まで追い込まなくてもいい。あらゆるプログラムを試してたどり着いた、自分にちょうどいいトレーニング法

Fitness woman in GYM

加齢とともに筋肉量が減り、体が衰えることは以前から知られている。女性は特にそうだ。更年期を迎えると、女性は骨粗鬆症のリスクが高まり、筋トレは骨粗鬆症を予防する最も効果的な方法のひとつとされている。そして、筋トレと健康の関係に、世間はますます注目している。「中年期と更年期は、今とてもホットな話題です」と、フィットネスの専門家であり、トライデント大学インターナショナルで健康科学の教授を務めるマリア・ルケは言う。「今まで触れられてきませんでしたが、急に各所で取り上げられるようになりました」

最近の研究では、女性は男性とは違い、少ない運動量でも高い健康効果が得られるということが示唆されている。それに加え、女性はより早いうちから筋力トレーニングを始めるべきだということもわかってきた。シーダーズ・サイナイ病院心臓血管研究所の心臓専門医であり、2024年に40万人を対象とした研究を主導したマーサ・グラティ医師は、女性にはもっと、若いうちから健康のことについて教育すべきだという。「サッカーをやる女の子は多いですが、誰も彼女たちに、レジスタンストレーニング(筋肉に負荷をかける動作を繰り返し行う運動)を行えば、足が速くなるかもしれないということを教えてあげないのです」と語る。そして「私たちは年を取るにつれて、新しいことを始めることが億劫になる」と付け加えた彼女は、子どもを抱く、お年寄りが立ち上がるのを手伝う、荷物を運ぶといった、日常生活で行う何気ない動きの筋トレとしての効果を測定したいと言う。「筋力トレーニングは、心と体の健康、そのすべての面に影響を及ぼします」

また、筋トレは基礎代謝の向上にもつながるとされている。もちろん、私たちの代謝率は遺伝や健康状態など、さまざまな要因によって決まるということを忘れてはいけない。だが、筋肉が増えれば、安静時の消費カロリーが増え、長い目で見ると体重が減りやすくなると考えられる。「鍛えていないときでも効果は持続するので、 いつまでもその恩恵にあずかることができます」とルケは筋トレについて言う。

私も、その恩恵にあずかりたい。そう思ったからこそ、例のBody Sculptクラスを途中でこっそり抜け出すことはなかった。だが、場所取りで揉めて、逆にやる気が出た私は、最初から飛ばすという初歩的なミスを犯した。ヒップブリッジ、プランク、ダウンワードドッグといった序盤の動きを勢いよくこなしたのはいい。しかし、そのせいで、筋肉を徹底的に追い込むことを目的とした、レップ数の多い、ウェイトを使ったエクササイズを始めるころには、最後までやり遂げられるか不安になった。「キツいのは、私だけではないだろう」と思い辺りを見回したが、ついていけていないのは、どうやら私だけ。ホットピンク色のレギンスを穿いた60代の女性は、私が使っているのよりも2倍重いウェイトを使っていた。「女性が一番タフ」と、クラス後にインストラクターのナタリー・ホープは言った。

ふたを開けてみれば、筋トレに本気で取り組むからといって、昔から好きでやっている低負荷エクササイズを止める必要はないとわかった。「ピラティスと筋力トレーニングは相性がいいのです」と、元シンガーソングライターで、現在はウエストロンドン随一の人気ピラティスインストラクターのソフィー=ローズ・ハーパーは言う。彼女の落ち着いたスタジオで、私はリフォーマーを使った体幹エクササイズを行い、その後キャデラック(ベッドのような台の上に、スプリングやバー、ストラップなどが取り付けられた多機能なマシン)で背面の筋肉群、ハムストリングス、ふくらはぎを集中して鍛えた。

ソーシャルメディアがきっかけで、今は「Strong is the new hot(鍛えた身体は美しい)」という考えが勢いよく広まっており、それに従い、自宅でトレーニングを行う人が増えている。私もその影響を受け、ピラティスやフィットネスクラスがない日は、家でトレーニングをするようになった。グッズを揃えると、俄然やる気が出る。私はアコーディオンのように折りたためるスタックド(STAKT)のマットと、ジェニファー・アニストンお気に入りのフィットネスプログラム、Pvolveのウェイトをお供に、Pvolveの配信クラスをやることにした。インストラクターはハキハキとしているが、ついていけないほどのテンションではない。「背中の真ん中をギュッと引き締めて。年を取ってもいい姿勢でいられるよう、頑張りましょう!」。一時停止を押そうとしていた私は、猫背になってしまうかもという不安を新たに植え付けられ、再びダンベルを持ち上げた。「腕がもうこれ以上動かないというところまで追い込むのが、私の目的です」と彼女は不吉にも続けた。

体を限界まで追い込むのが、筋トレのゴールなのだろうか? 数日後、腕がまだプルプルしていた私は疑問に思った。自分はもっと定期的に、もう少し強度が低いトレーニングをする方が合っているのかもしれない。そこで私は、くすみカラーのおしゃれなワークアウトグッズで筋トレのイメージを塗り替えているブランド、バラ(BALA)のリストウェイトをいくつか購入。リング型のウェイトツールやスティック状のダンベルを使い、短時間だが十分効き目のあるバラのオンラインレッスンに参加した。公園でウォーキングをするときは、バラの900グラムのリストウェイトをつけて負荷をアップ。週が進むにつれ、持久力が増していくのを感じ、食料をいっぱいに詰めたレジ袋や荷物やスーツケースを、前よりも楽に運べるようになった。

1カ月が過ぎたあたりで、私はフィットネスの第一人者であるトレイシー・アンダーソンのスタジオでクラスを受けた。それは彼女のMyModeプログラムの一環のクラスで、従来のアンダーソン式ワークアウトにより重い負荷のエクササイズを取り入れたものだった。スタジオのフロアには、関節にかかる負担を抑えるスプリングマットが敷き詰められている。その上で飛び跳ねていた私に、スタジオのマネージャーであるリー・モスはこう言った。「(MyModeは)これまでにない形で、体を動かすメソッドです」。その言葉通り、高強度のシークエンスと腹斜筋に働きかけるエクササイズが多いクラスだったが、私はそのほとんどについていくことができ、自分でも驚いた。今までで一番強い自分。筋トレを始めたおかげで、そんな新たな自分を見つけられた気がしている。

Text: Alexis Okeowo Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.COM

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