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女性の低血圧は放っておいて大丈夫?【ヴォーグなお悩み外来】

  • 2025.7.26

低血圧=“省エネ”体質?

WHOでは世界共通の基準として、収縮期血圧100(mmHg)以下、拡張期血圧60(mmHg)以下を低血圧としている。病院などで血圧を測った際に「血圧が低めですね」などと言われ、気になったという人もいるのではないだろうか。

白金高輪駅前内科・糖尿病クリニック院長の安成英輔先生は、「特に自覚症状がなく、たまたま測った時に血圧が低かったという程度でしたら、特別に気にする必要はないと思います」という。

確かに高血圧に比べると低血圧は問題視されることが少なく、血圧が低い人は心臓への負担が少ないという説さえある。しかし、それは本当なのだろうか?

「血圧を過剰にかけずに、効率よく臓器に酸素を届けて働かせているという点では、確かに“省エネ”で生きていると言えます。少しざっくりした言い方になりますが、寿命に関わる生活習慣病として重視すべきなのは、やはり高血圧。自覚症状もなく、日常生活に支障がない程度であれば、低血圧だからといって血圧を上げる必要ありません。命に関わるような緊急性はないと考えてよいでしょう」

でも、放っておくと危険なことも

もちろん、低血圧でも症状がある場合は無視できない。たとえば、めまい、立ちくらみ、倦怠感などが代表的な症状としてよく知られている。

「当院の患者でも、多いのは倦怠感。すぐにばてるとか、疲れた後にリカバリーが遅いといった症状です。血圧が低いということは、脳を含めた全身への血流が不足しているということ。血液を体に巡らせる力が弱まっている、そんなイメージです」

では、低血圧が重度になると、どのような影響があるのだろう?

「極端に血圧が低下すると、立ち上がった瞬間に目の前が真っ暗になるような立ちくらみが起きたり、臓器への血流が不足して低酸素状態に陥り、臓器障害を引き起こすこともあります」

高血圧の治療薬はよく耳にするが、低血圧にも薬はあるのだろうか。

「昇圧薬といって、血管を収縮させたり、心臓のポンプ機能を高めたりして血圧を上げる薬があります。ただし、そもそも貧血が原因で血圧が低くなっているケースもあるため、血圧を直接上げるというよりは、鉄剤や鉄分のサプリメントで血液の量や濃さを補う治療が選ばれることもあります」

薬に頼る前に整えておきたい生活習慣

A woman standing in her kitchen drinks from a mug.
Woman drinking from mug in zero waste kitchen.A woman standing in her kitchen drinks from a mug.

日常生活に支障をきたすほど症状が重い場合には、薬による治療が必要になることもあるが、そこまでではない場合は、まずは生活習慣の見直しを。

健康の基本である食事・運動・睡眠をバランスよく整えることが大切です」と、安成先生は話す。「たとえば、きちんと朝食をとり、水分補給をするだけでも、ある程度血圧は安定します。また、ふくらはぎを軽くマッサージするのも効果的。血液を心臓に戻すポンプのような働きを助けてくれます。そして、もう一つ注目したいのが自律神経のバランスです」

自律神経と血圧の関係とは、どのようなものなのだろうか。

「血圧の上げ下げや、血管を広げたり縮めたりといった調整は、すべて交感神経と副交感神経という自律神経の切り替えによって行われています。このスイッチングがうまくいかないと、血圧の調節が乱れてしまうんです。実際、朝の通勤電車で気分が悪くなり、駅員さんから当院に連絡が入るケースでは、普段から低血圧気味で、自律神経のバランスが崩れている人が多い印象です」

ストレスケアの鍵は、動いて休むこと

では、自律神経のバランスを整えるには、どのような対策が有効なのだろう?

ストレスを避けよう、なくそうと強く思いすぎると、かえって心に負担がかかることも。だからこそ、ヨガやピラティス、軽いスポーツなど、身体を心地よく動かしながら自分にとっての“リラックスタイム”を持つことが、いちばんの対策になります。自律神経そのものは自分自身でコントロールすることはできませんが、体の動きを通して間接的に整えることができるんです」。さらに、心身をオフにする時間を持つことも大切だと続ける。

「シャワーで済ませるのではなく、湯船に浸かってしっかり入浴すること。そして、夜はきちんと眠ること。そうしたリラックスの積み重ねで副交感神経が働きやすくなり、翌朝には自然と交感神経が“オン”になる体のリズムがつくられていきます。交感神経は血圧を上げる働きを担っているので、低血圧の予防にもつながるのです」

日本女性の痩せすぎの先にあるリスク

痩せている人に低血圧が多いという印象を持つ人も多いのでは? 低体重との関係も気になるところだが、実際にはどうなのだろう。「基本的に、体が大きくなると循環血液量も増え、全身に酸素や栄養を送るための血圧もある程度高くなります。確かに、痩せている人ほど血圧が低くなりやすい傾向にあると言えます」

日本人は世界的に見ても痩せている人の割合が異常に高く、特に若年層の女性では“やせ願望”が根強いことが指摘されている。これからも低体重の女性が増えていけば、治療が必要なレベルの低血圧の人が増える可能性も。

骨粗しょう症や無月経といった、痩せにまつわる健康問題が注目されている、日本女性の身体。その延長線上で、低血圧もまた“静かなリスク”として、今後見過ごせなくなるかもしれない。

話を聞いたのは……

安成英輔先生

白金高輪駅前内科・糖尿病クリニック院長。岩手医科大学医学部、順天堂大学大学院医学研究科(博士課程)卒業。大学病院での診療や動脈硬化の基礎研究に従事した後、白金高輪駅前内科・糖尿病クリニックを開院。糖尿病や高血圧など生活習慣病の治療を提供する地域密着型の診療を行っている。www.shirokanetakanawa-naika.com/

Text: Kyoko Takahashi Editor: Kyoko Muramatsu, Yuna Shibata

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