1. トップ
  2. なぜ、歳を取ると『頑固』になる?→医師が明かす、“性格の変化”に隠された『脳のサイン』とは【医師の監修】

なぜ、歳を取ると『頑固』になる?→医師が明かす、“性格の変化”に隠された『脳のサイン』とは【医師の監修】

  • 2025.9.18
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

「最近、親や祖父母が昔より頑固になった気がする…」そんな経験はありませんか?年を取ると、どうしてか意見を曲げなかったり、自分の考えに固執する傾向が強くなることがあります。これを単なる「年齢のせい」や「性格の変化」と片付けてしまうのはもったいないかもしれません。実はこの“頑固さ”、脳からのサインが隠れている可能性があるんです。今回は、医師の視点からその背景にある脳の仕組みやサインについて解説します。

なぜ歳を取ると頑固になるの?

年齢を重ねると頑固になる、とよく言われますが、その理由はいくつかあります。まず心理的側面では、人生経験が増えることで自分の価値観や考えが固まりやすくなります。「これまでこうやってきた」「こうするのが正しい」という自信が強まるため、新しい意見や変化に抵抗感を感じやすくなるのです。

しかし、単なる意志の強さだけでなく、脳の生理的変化も大きな影響を与えています。加齢に伴い、実は脳の前頭葉(特に前頭前野という部分)が変化しやすく、これが柔軟な思考や感情のコントロール能力の低下につながると言われています。(※)微妙な感情の表現をしたり、感情と連動した行動をおこなう場所が知らず知らずのうちに衰えて感情の表現力が鈍くなり、頑固に見える行動が増えるのです。

また、軽度の認知症やストレス・不安が強くなることも関係しているとされます。自分の世界を守るために強硬な態度をとるのは、脳の防御的な反応とも考えられるのです。

※個人差があるため、前頭葉の変化だけでなく普段の生活や環境等でも性格への影響があるとされています。

医師が警告する性格の変化のサインとは?

undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

頑固さがただの性格の問題ではなく、脳の健康に関わる重要なサインである可能性が指摘されています。例えば、急に極端に意見を変えなくなったり、今まで許容できていたことに対して過剰に反応する場合は要注意です。

こうした変化は脳の認知症や軽度認知障害の初期症状として現れることもあります。特にアルツハイマー型認知症や前頭側頭型認知症では、性格の変化や社会的な柔軟性の低下が目立つことが多いのです。もちろんこれだけで何らかの病気であるとは断定できませんが、周囲が「こういう性格だから」という片付け方をせず、気になる変化があれば専門の機関等での相談が望まれます。

また、日常生活のストレスや孤立感、うつ症状なども頑固な態度として現れることがあるため、気持ちのケアも非常に大切。これらは複数の要因が絡み合っていることが多く、医師は単に性格の問題として終わらせず、身体的な検査や心理的サポートをすすめるケースが多いのです。

加えて、「頑固さ」以外にも、今まではできていた運転ミスの増加や金銭に関するミス、共感性の変化や幻覚なども何らかの体の変化の可能性が考えられます。

普段のコミュニケーションで「頑固になったな」と感じたら、本人を責めるのではなく、背景にある脳や心の変化に目を向けてみましょう。本人にとっては簡単には変えられない「脳のSOS」かもしれません。

脳のメッセージを見逃さないで

歳を取ると「頑固になる」というのは多くの人が共有する実感ですが、その理由は単なる性格の変化だけでなく、脳の生理的な変化や認知機能のサインが隠れていることがわかりました。特に急激な態度の変化や柔軟性の低下は、医療的なケアが必要な場合もあるため、家族や周囲の人は注意深く見守ることが重要です。

「頑固=悪いこと」と決めつけず、その背後にある脳のSOSに気づき、適切な対応をすることで本人の生活の質を守り、精神的な負担を軽減することができるでしょう。


監修者:鈴木枝里子
医療法人社団ユーアイエメリー会(埼玉県久喜市)理事長
精神科専門医、精神保健指定医