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サッカーの街として有名な「ニューカッスル」の知られざる歴史&文化を紐解く【たかまるゆうかの英国スケッチー海外生活で気づいたことー】

  • 2025.7.21

2025年6月にイギリスに渡り、新天地での生活がスタートしたイラストレーター・たかまるゆうかさん。イギリス滞在中に体感した文化や歴史、気になるグルメやスポット、現地マダムのファッション事情などを月に1回のペースでお届けします!

滞在先はイギリス・ニューカッスル

皆さまこんにちは。イラストレーターのたかまるゆうかです。
突然ですが、ニューカッスルという街をご存じでしょうか? サッカー好きの方なら、イングランドプレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドFCを思い浮かべるかもしれません(以前は元日本代表の武藤嘉紀選手が所属していたことでも知られています)。また、学園都市の側面もあるため、留学で訪れたことがある方もいらっしゃるとは思いますが、多くの日本人にとってなかなかなじみのない地域であります。
ニューカッスルはイングランド北東部に位置し、タイン川という川に沿った街。正式名称は「ニューカッスル・アポン・タイン」(タイン川のほとりのニューカッスルという街の意味)です。ニューカッスルという名の通り街には「ニューカッスル(New Castle)」という城も存在します。

この度、たまたま縁があってこちらに滞在することになりましたが、現地に来て早々、ニューカッスルの魅力を感じています。連載1回目は、時代を追ってニューカッスルの歴史をご紹介!

都市の成り立ち ー古代・中世ー

ニューカッスルの起源は、西暦122年にさかのぼります。当時のローマ人によって「ハドリアヌスの橋」が建設され、その後300年ほどかけて集落が形成、1080年にはロベール2世(ノルマンディー公)がローマ帝国時代の砦の跡地にモット・アンド・ベイリー城を建設。この城が街の名称の由来となっています。
中世を通し、ニューカッスルは北部の要塞として機能。現在残る石造りのニューカッスル城は、ヘンリー1世が1172年から1177年にかけて、スコットランドの脅威から街を守るために建設したものであるといわれています。日本の平安時代と同じ頃に築かれたこの城が、現代まで街に溶け込むように残っているなんて……なんとも驚きです。

1200年ごろからは輸出港の役割も果たしており、羊毛、木材、石炭などを主に輸出しました。特に石炭は後の時代まで街を支える重要な産業資源となっています。

ニューカッスルの黄金時代 ー近世・現代ー

1642年には、国王チャールズ1世と議会が対立し内戦が勃発。ニューカッスル軍は国王派として戦いましたが、1644年には議会派が街を包囲し降伏を余儀なくされ、その2年後にチャールズ1世はニューカッスルで拘束されます。ロンドンに送還されるまでの半年間、王は市街の邸宅で公開囚人となり、ゴルフや教会の礼拝、パブでビールを楽しんでいたという逸話も残っているのだとか。

産業革命が起きた18世紀後半になると、石炭を用いた製鉄技術が開発され、より一層石炭の需要が高まりました。交通の妨げとなっていた城壁と門が一部取り壊されると、1801年に2万8,000人だった人口は1831年には5万3,000人に。ニューカッスルでは今まで盛んだった炭鉱業、造船業に加え鉄鋼業が加わり重工業の黄金時代を迎えます。
そんななか、1825〜1840年代にかけて建築家のジョン・ドブリン、建築業者のリチャード・グレンジャー、ニューカッスル市書記官のジョン・クレイトンを筆頭に、ニューカッスルの中心部が再建されます。街のランドマークであるグレイ・モニュメントやグレンジャーマーケット、セント・メリーズ大聖堂など、現在も残る街の名所を建設。1849年にはニューカッスルとロンドンを結ぶ鉄道橋のハイ・レベル橋が建設され、翌年にはニューカッスル中央駅が開業しました。
20世紀に入ると街にかかる橋の数も増え、1928年には街のシンボルであるタイン橋が開通。現在に通じる街の景観がほぼ形作られた時期です。

20世紀中期には重工業の衰退が進み、街は転換期を迎えます。その後、教育機関の設立やキーサイド地区の再開発によって、教育分野や芸術など文化的な面が際立つように。歴史を感じる街の風情はそのままに、観光都市として変遷を遂げています。

今月のひとことメモ

と、ここまで、さも街の有識人かのように書き綴ってまいりましたが、移住して1か月未満の完全なる新参者です(笑)。ただ、せっかくの長期滞在なので、この期間にニューカッスルやイギリスについてとことん吸収していこうと考えている次第です。今後も、文化や食生活、トレンド情報などイギリスでの生活をさまざまな観点からお届けしてまいります。ぜひお付き合いくださいませ!

連載第1回目は、街歩きをしながら気になった「あるもの」を紹介して締めくくりたいと思います。

北海にほど近いニューカッスル。橋のたもとから街を見渡すと、多くのカモメが飛び交っているではありませんか!
私は学生時代からイギリスに何度か滞在経験があり、そのほとんどを海沿いの地域で過ごしました。そのため、カモメは何度も見ており、滞在時は鳩より身近に感じていたほど。にもかかわらず、なぜかカモメが気になるのです。それに、鳩もどことなく違和感が……。

何度か街に出てようやく気づいた違和感の正体は、そのサイズ感。よくよく見たら鳩も大きい⁉ 今まで見てきた鳥たちとは違うように感じます。
そんなとき、ふと思い出したのが「ベルクマンの法則」。寒冷な地域の動物が気候に適応するために体が大きくなるというものです。気になって調べてみると、やはり南部にいるものとは違う種類のようで、カモメは「オオカモメ」、鳩は「モリバト」という種類でした。今回のカモメや鳩が法則に完全に当てはまるのかは分からないですが、自然の神秘を感じました。

それでは、また次回の英国スケッチで!

この記事を書いた人

イラストレーター たかまるゆうか

たかまるゆうか

東京都出身。2020年よりイラストレーターとして活動を開始。日本画の素材や鉛筆の質感などをミックスした画風で、アイボリーの背景に「海外を思わせる空気」をまとったイラストレーションを描く。雑誌、書籍、文房具など様々な媒体で活動中。

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