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【大阪・関西万博】思わず泣いた!河瀨直美監督パビリオン「DialogueTheater-いのちのあかし-」レポ

  • 2025.7.23

こんにちは、奈良在住の編集者・ふなつあさこです。「EXPO 2025 大阪・関西万博」の石黒浩シグネチャーパビリオン「いのちの未来」と薬師寺のお坊さんたちが出演した伝統舞台「令和今昔四季物語絵巻」をご紹介した前回に続きまして、今回は奈良が世界に誇る映画作家・河瀨直美さんが手がけるシグネチャーパビリオン「Dialogue Theater - いのちのあかし -」をレポします。

さらに、6月12日(木)に開催され、河瀨監督もご登壇しはったトークイベント「NARAtive @EXPOホール」も追加取材! 映画制作を通して奈良の市町村の活性化、さらに後進の育成にもあたる河瀨監督の活動の一端に触れることができました。
 
なお、シンボル的建築のひとつでもあるEXPOホール「シャインハット」では、見応え・聞き応えのあるイベントが日替わりで開催されています。これから万博を訪れる方は、訪問日のイベントをぜひチェックしてみてください!

世界の至る所にある「分断」を結ぶ、一期一会の「対話」

それぞれの国や地域が趣向を凝らしたパビリオンが立ち並ぶ万博会場。世界中のデザインがユニークさを競うようにギュッと一箇所でひしめいているなか、木陰にひっそり古い学校のような建物があるなぁ、とかえって目を引いたのが河瀨監督のパビリオンでした。

聞けば、廃校になった奈良県十津川村立折立中学校と京都府福知山市立細見小学校中出分校という2つの校舎を3棟の建築として生まれ変わらせたものなのだそう。
 
福知山の推定樹齢100年のイチョウの木や、十津川の校舎の壁に張っていたツタも建物とともに移植されたとのこと。

パビリオンの入り口でふきだしをかたどった小さなカードを受け取り、2階のホワイエヘ。カードに書かれていたのは「どうしたら、もっとやさしくなれますか? How can a person become kinder?」。
 
このカードに書かれている問いかけは、万博184日間の会期中、毎日異なると説明を受けました。それはつまり、“毎日が人類史上はじめての対話”となるということ。

印のあるカードが配られた来場者のなかから、今日の対話者が選ばれます。私たちは誰も当たらなかったので、その間、パビリオンの中を見学して回りました。3階の窓からは、海側の大屋根リングが見渡せます。

こちらの部屋の壁には、樹齢約400年の杉板で作られたスピーカーがしつらえられていました。そっと耳を押し当ててみると奈良・吉野で採録されたせせらぎや鳥の声が聞こえました。その木が生きてきた頃にも、こんな音を聞いていたのかもしれませんね。……しかし自撮りが下手やな、私(めっちゃ真顔)。
 
集合時間にホワイエに戻り、渡り廊下の向こうの対話シアターへ。今日選ばれた対話者の方が進んでいくと、スクリーンの向こうにはもう一人の対話者が。
 
事前募集に応募した対話者は、あらかじめワークショップを受けているそうですが、それでも本番は今日が初めて。シアター内は撮影NGのため説明しづらいのですが、気づけば涙をこぼしてしまっていました。「会話」と「対話」の明らかな違いを目の当たりにした気がします。

スタッフの方のユニフォームが可愛かったので、撮影させていただきました。吹き出しマークがビビッドなイエローのなかに飛び交うコンセプチュアルなデザインを手がけたのは、minä perhonenの皆川 明さん。ポーズもキュート。

河瀨監督も登壇! トークイベント「NARAtive @EXPOホール」

6月12日(木)に東ゲートゾーンEXPOホール「シャインハット」にて開催されたトークイベント「NARAtive @EXPOホール」にも取材に伺いました。そしたら、エントランスにミャクミャクとせんとくんが! せんとくんと目が合った〜♪

ところで、そもそもNARAtiveとはなんぞや、という話なのですが、“今と未来、奈良と世界を繋ぐ映画制作プロジェクト”とのことです。
 
奈良市出身の河瀨監督は、1997年に劇場映画デビュー作『萌の朱雀』でカンヌ映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞して以来、生まれ育った奈良を拠点に映画を創り続けています。2007年にカンヌ映画祭グランプリ(審査員特別大賞)を受賞した『殯(もがり)の森』もやはり奈良が舞台です。
 
2009年には推薦で選ばれた2名の監督によるNARAtive第一弾を制作、2010年には第一回「なら国際映画祭」を開催。現在ではなら国際映画祭の受賞監督のなかから選ばれた監督を招いて奈良を舞台に映画を制作し、受賞から2年後に開催される次回のなら国際映画祭でプレミア上映されています。

さて、トークイベントは山下真 奈良県知事の挨拶からスタート。河瀨監督とはご近所さんで、お子さんが同じ学校に通われていたそう。

左から、ハイヒール・リンゴさん、河瀨監督、俳優の加藤雅也さん(なら国際映画祭 特別顧問)、別所哲也さん、三船美佳さん(ともになら国際映画祭 アンバサダー)のほか、NARAtive(ナラティブ)の映画でメガホンを取った監督たちが登壇。
 
加藤雅也さんは、奈良市のご出身。「こんな濃い顔の奈良県民おる〜?」と河瀨監督がいじり、会場からは笑い声が。ちなみに登壇した俳優さんのなかで唯一、河瀨監督作品に出演してはらへんらしく、それもネタにして笑いを取ってはりました。意外とお茶目な方でした!
 

河瀨監督作品やNARAtiveに協力してきた市町村の首長さんたちも登壇。
 
河瀨監督自身が「こんなん、奈良でできよんかな?」という想いを乗り越え「皆さんの生きている地域は素晴らしい」という熱意を伝えていった結果、協力の輪が広がっていったのだと言います。首長さんたちにとっても、河瀨監督との映画作りは自分たちの市町村を俯瞰で見るきっかけになったようです。
 

会場には、映画制作に協力したり、手伝っているうちに出演することになった市町村の皆さんも駆けつけていました。『殯の森』撮影スタッフとして、撮影期間中ロケチームの食事を作った安達泉さんのもとに河瀨監督が走っていってインタビュー。
 
会場は、さながら河瀨監督作品関係者の同窓会のようなあたたかなムードに包まれていました。

途中から、河瀨監督とバトンタッチして客席に走るリンゴさん。合間には資料に足りない情報を求めてサッと舞台裏に聞きにいってはって、大御所やのにフットワークが軽くて、気遣いも細やか。勝手に感動しておりました。素敵。

メインのトークショー終了後には、学生向けの「ユースシネマインターン」の参加者たちと世界的写真家、レスリー・キーさんが登壇(レスリーさんが持ってるミャクミャククッション、やっぱり買おうかな……)。
 
ゆるやか〜に始まり、終始ほんわりしていたのですが、芯の部分はものすごいガッチリしている、なんとも奈良らしいトークイベントでした。なら国際映画祭は昨年開催されたので、次の開催は来年の予定。今から楽しみです!

私の万博豆情報を教えちゃいます!

ちなみに(口癖かも)、ミャクミャクの後ろ姿はこんな感じ。注目はおしりです。尻尾なんかな。

最後に個人的にお伝えしたい万博の注意事項を!

・携帯充電器は必携!
→連絡取り合ったり写真撮って電池消耗しがち。スマホで色々なものを管理すると思うので、電池が切れたら大変です。私は忘れて、置くだけで充電できるベンチなど会場内の充電スポットを点々としましたが、暑かったからかなかなか充電されませんでした。
・大きめのマイボトルを!
→無料の給水スポットはかなり並んでいました。コンビニもタイミングによっては並びます。自動販売機はある程度設置されていましたが、街中よりは少ないです。
・雨天と熱中症対策は万全に!
→取材初日は大雨で、ゴアテックスを着ていた上半身以外ずぶ濡れになりました。お天気のいい日には退避できる場所が少ないので、サングラス+帽子+傘+日焼け止めのフル装備を。ほぼ屋外フェスだと思っておいてください。
・足もとはスニーカー推奨!
→ものすごく歩きます。大屋根リングを1周すると約2kmだそうなので、東京でたとえるなら、渋谷駅→原宿駅→表参道駅と歩いたぐらいの距離ということになります。その範囲をぐるぐる歩き回るので、私の場合、1日万博会場をうろうろして2万歩ぐらいでした。

でも「行ってよかったな!」と思える楽しさだったので、検討中の方はぜひ前向きにご計画ください〜!

電車を待っていたら、向かいのホームにいつもと違うカラーの電車が。

近鉄(近畿日本鉄道)と河瀨監督パビリオンのコラボによる「Dialogue Train」です。近鉄奈良線において、2025年10月13日(月・祝)までの間、近鉄奈良~神戸三宮間などで運行されるそう。

乗車したこともあるのですが、車内も“対話(Dialogue)”を投げかけるパビリオンのビジュアルでラッピングされています。

万博を訪れたら、ぜひ奈良にも足を伸ばしてください!

この記事を書いた人

編集者
ふなつあさこ

ふなつあさこ

生まれも育ちも東京ながら、幼少の頃より関西(とくに奈良)に憧れ、奈良女子大学に進学。卒業後、宝島社にて編集職に就き『LOVE! 京都』はじめ関西ブランドのムックなどを手がける。2022年、結婚を機に奈良へ“Nターン”。現在はフリーランスの編集者として奈良と東京を行き来しながら働きつつ、ほんのり梵妻業もこなす日々。

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