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「上手い」「可愛すぎ」夏の風物詩“唯一の完全新作” モデル出身“急成長女優”が見せた最恐の透明感

  • 2025.8.20

フジテレビ系『ほんとにあった怖い話 夏の特別編2025』は、今や日本の夏の風物詩となったホラーオムニバスだ。今年は番組史上初となる「最恐選挙」で選ばれた歴代名作に加え、完全新作『或る訳ありの部屋』が放送され、大きな話題を呼んだ。その主演を務めたのが、モデル出身で近年女優として急成長を遂げる出口夏希である。SNS上でも「可愛すぎた」「めちゃ演技上手い」と話題を呼んでいる。

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出口夏希 (C)SANKEI

透明感と存在感の同居

出口が演じたのは、得体の知れない部屋で怪異に襲われる若い女性・真衣。派手な演出に頼らず、表情のわずかな揺れや身体の硬直感で恐怖を伝える姿は、彼女が持つ透明感と存在感を強烈に浮かび上がらせた。

出口夏希の魅力は、矛盾するかのように響く“透明感”と“圧倒的な存在感”の同居にある。スクリーンや画面に現れた瞬間、彼女が持つ清らかな雰囲気が観客の目を引き寄せる。しかしその透明感は、ホラー作品においてはむしろ異質さを強調し、現実世界との境界線を揺るがす効果を生む。

とくに金縛りに襲われる場面での演技は秀逸だった。全身を硬直させ、薄く開いた目に映る狂気の女を見て、恐怖と絶望を同時に表情に刻む。大げさに叫ばずとも、観る者の心臓を鷲掴みにする説得力があった。透明感ゆえの“純粋さ”が、怪異に対する無力さをリアルに描き出していたのだ。

表現力と集中力が生む“最恐演技”

出口はモデルとしてキャリアをスタートさせたが、近年は俳優として存在感を強めている。

ドラマ『アオハライド』やNetflix映画『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』など、青春や恋愛を軸とした作品では、瑞々しい感情表現で視聴者を惹きつけた。その一方で、ホラーという異なるジャンルに挑み、『ほん怖』で主演を務めることで、彼女の女優としての可能性は大きく広がったといえる。

また、ドラマ『ブルーモーメント』で山下智久演じる主人公の助手役に挑戦し、中国語の台詞に挑むなど、語学や専門分野にも真摯に向き合う姿勢を見せている。単なる“透明感のあるモデル出身女優”にとどまらず、役柄に応じて成長し続ける柔軟さと探究心が、出口の強みである。

中国語を話すことを知った時は、発音大丈夫かな?という心配が凄くありました。もともと話してはいたのですが、家族の中でしか話してこなかったので、(今まで話していた)福建の方言が心配でした。なので北京語を聞いて、何回も唱えています。見ている方になるべく違和感を感じさせないようにたくさん唱えています。(ドラマ『ブルーモーメント』公式サイト

ホラー作品は限られた時間で観客を恐怖に引き込み、余韻を残す必要がある。出口の演技は、その短い尺のなかで観客を物語に没入させる集中力と表現力に支えられていた。

小さな仕草や呼吸の変化で恐怖を伝え、観る者の想像力をかき立てる。役に真摯に向き合う姿勢が生み出した繊細な演技が、『或る訳ありの部屋』を単なる“恐怖映像”ではなく、“出口夏希という女優の可能性を示す場”へと変えていた。

今回の『ほん怖』は、出口夏希が持つ透明感と存在感がホラーにおいていかに効果的に作用するかを証明した。観客を震え上がらせる一方で、「彼女は次にどのジャンルでどんな輝きを放つのか」という期待を抱かせる作品でもあった。ホラー、青春、恋愛、社会派ドラマと幅広いジャンルを行き来する出口は、今後間違いなく日本の映像界を支える若手女優の一人となるだろう。

『或る訳ありの部屋』で見せた“最恐の透明感”は、彼女の女優人生において確かなマイルストーンとなったに違いない。


ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧・Twitter):@yuu_uu_