1. トップ
  2. 『逃げ恥』が切り拓いた“TBS火曜10時枠”の新しいカタチ…!リアリティと非現実感が代名詞の秀作たち【火曜ドラマ】

『逃げ恥』が切り拓いた“TBS火曜10時枠”の新しいカタチ…!リアリティと非現実感が代名詞の秀作たち【火曜ドラマ】

  • 2025.8.11

TBS火曜ドラマ枠は、現代を生きる女性たちの心にそっと寄り添い、ときに胸を熱くし、ときに思わず笑みがこぼれる名作が生まれる場所だ。2014年に誕生して以来、毎週火曜22時に物語られるのは、恋や仕事、家族、そして自分自身と向き合う女性たちの姿。そのリアリティある描写と感情を揺さぶるストーリーは、多くの視聴者の共感を呼び、いまやTBS火曜ドラマは「女性たちの心の拠り所」となっている。

undefined
新垣結衣 (C)SANKEI

伝説的ヒット作『逃げ恥』が切り拓いた、新しい恋愛ドラマの形

この枠の特徴は、なんといっても女性主人公が物語の軸であること。主演には20代から40代の人気女優が多く起用され、視聴者と同じ目線で現代を生きる姿を映し出してきた。

また、当初は職業ものが主流だったが、2016年のヒット作『ダメな私に恋してください』を皮切りに、恋愛をテーマとした作品が急増。ラブストーリーを軸にしながらも、仕事や人間関係、社会問題を丁寧に織り交ぜた作風がこの枠の魅力だ。

代表作として語られるべきは、やはり2016年の『逃げるは恥だが役に立つ』だろう。新垣結衣演じる森山 みくりと、星野源演じる津崎平匡の「契約結婚」から始まるユニークなストーリーに、多くの視聴者が夢中になった。

家事労働の価値やジェンダー観、そして多様な生き方を肯定するメッセージは社会現象となり、エンディングの「恋ダンス」とともに一世を風靡。以降も『カルテット』(2017年)、『義母と娘のブルース』(2018年)など、ラブコメディに留まらず、家族や人生をテーマにした名作が続いた。

豊作年は2020年!『恋つづ』から『この恋あたためますか』まで

そして2020年、この枠はさらなる進化を遂げる。『私の家政夫ナギサさん』では、多部未華子演じるキャリアウーマンと、家事を完璧にこなす年上家政夫(大森南朋)の心温まる交流が描かれ、視聴者の癒しとなった。現代の家事分担や働く女性の孤独というリアルなテーマに寄り添いながら、癒しという新たなエッセンスを加えた秀作である。

また、2020年は『この恋あたためますか』、『おカネの切れ目が恋のはじまり』、『恋はつづくよどこまでも』と、いわば「恋愛ドラマ豊作の年」となり、この枠が大人の女性のための恋愛ドラマ枠として定着した年でもあった。

視聴者の共感を得るキャラクター設定、ハートフルで優しい物語展開、そしてちょうどよい非現実が火曜ドラマの代名詞になったといえる。

日韓合作で新境地へ『Eye Love You』『初恋DOGs』の挑戦

近年、注目すべきトピックとして日韓合作という新たな試みもある。『Eye Love You』(2024年)、『初恋DOGs』(2025年)はその象徴的作品だ。

『Eye Love You』は、心の声が聞こえるテレパスというファンタジー設定を持つ主人公・侑里(二階堂ふみ)が、韓国人留学生・テオ(チェ・ジョンヒョプ)と心を通わせるラブストーリー。韓国語で語られる心の声が、視聴者にだけ届くという演出が新鮮で、異文化間の恋愛にリアリティとときめきを添えた。

『初恋DOGs』は、清原果耶演じる弁護士・愛子と、成田凌演じる獣医・快、そして韓国の財閥御曹司・ソハ(ナ・イヌ)が織りなす、犬を介した恋愛模様。愛犬同士の一目惚れが飼い主たちの関係性を動かすという設定が斬新で、動物と人間の温かなつながりが丁寧に描かれている。ソハの兄・ソジン(チャ・ハギョン)や姉・ソヨン(ハン・ジウン)など、韓国からのゲストキャストも物語を一層華やかに彩った。

家事と生き方を問い直す『対岸の家事』の社会的インパクト

また、『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』では、多部未華子がふたたび火曜ドラマに登場。家事という身近なテーマにフォーカスし、専業主婦、働く母親、育休中の父親という立場の異なる人物たちが、互いの苦悩を知り、理解し合う過程を描いた。

家事や育児を、個人の問題ではなく社会全体で考えるべき問題として提起した姿勢に、多くの視聴者が共感。タイトルに込められた「私の生きる道」というメッセージは、視聴者の心の深いところにまで届いた。

このようにTBS火曜ドラマは、恋愛、仕事、家族、社会といった多様なテーマを女性の目線で描き続け、リアルとフィクションの狭間で、いまを生きる人々の心に共感と癒しを届けてきた。原作ものからオリジナルへと舵を切り、新たなチャレンジを続ける姿勢も魅力のひとつだ。

2025年以降、ますます多様化する価値観のなかで、どのような火曜の物語が紡がれていくのか。これからも、火曜22時は私たちの心を温めてくれる特別な時間であり続けるに違いない。


ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧・Twitter):@yuu_uu_



客「それからは行ってません」半年前、カツ丼屋の厨房で目撃した"信じられない光景"に絶句…
客「それからは行ってません」半年前、カツ丼屋の厨房で目撃した"信じられない光景"に絶句…