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衝撃的な展開で話題を集めた『タコピーの原罪』…物語序盤からの“違和感”とサブタイトルに隠された“意味”

  • 2025.8.20
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(C)タイザン5/集英社・「タコピーの原罪」製作委員会

タイザン5による漫画を原作としたアニメ『タコピーの原罪』。いじめや毒親といったテーマを扱い、心をえぐるような衝撃的な内容が話題を呼んだ本作は、完結後もSNSで感想や考察が続々と投稿されている。本稿では、全話観終わった後に気づくことができるまりなにまつわる描写と、各話のサブタイトルに込められた“意味”を考察したい。

まりなの家庭環境から読み解く“長袖を着る理由”

“ハッピー星”からやってきたタコピーと、少女・しずかの出会いから始まる『タコピーの原罪』。第1話では、学校でしずかがクラスメイト・まりなからいじめられ、複雑な家庭環境で暮らしている様子が描かれる。一方まりなは、しずかのノートを隠したり、容赦なく暴力をふるったりする。こちらまで恐ろしさで震えてしまうようないじめっ子だ。

しかし、話が進むにつれて、まりなも複雑な家庭の事情を抱えていることが判明する。まりなのセリフや両親がケンカするシーンから、彼女の父としずかの母の不倫関係がうかがえるのだ。夫との劣悪な関係によって、まりなの母は精神が不安定な状態になっている。加えて、「まりちゃんだけはずーっと、ママの味方だよね?」とまりなに依存し、圧をかける母。そんな両親のもとで暮らすまりなの苦痛は、相当なものだろう。

ヒステリーを起こして手がつけられなくなった母から、まりなが暴力を受けるシーンも。振り返ると、まりなは初めて登場したときから長袖を着ている。外ではセミの声が鳴り響き、他のクラスメイトのほとんどが半袖を着ていることから、季節は夏だ。まりなを取り巻く家庭環境をふまえると、彼女が長袖を着ている理由は、“母から受けた虐待の痕を隠すため”ではないだろうか。

第1話のサブタイトル“2016年のきみへ”は、まりなに向けられた言葉?

『タコピーの原罪』の各話につけられたサブタイトルにも注目したい。第1話のサブタイトルは、“2016年のきみへ”。一方、最終回である第6話のサブタイトルは、“2016年のきみたちへ”となっている。第6話のサブタイトルは、タコピーからしずかとまりなに向けられた言葉だろう。では、第1話のサブタイトルは、タコピーから誰に向けられた言葉なのだろうか。

第1話では、タコピーから見たしずかの視点で話が描かれるため、最初はサブタイトルの“きみ”もしずかを指しているように思える。だが、最終回まで観進めると、タコピーは2022年に母を殺してしまったまりなをハッピーにするために、“大ハッピー時計”を使って2016年にやってきたと判明する。つまり、2022年のまりなに関する記憶を失ってしまったタコピーの本来の目的は、“2016年のしずかを殺し、最悪の結果を迎えるまりなを救うこと”だ。

2016年に戻ったタコピーの本当の目的をふまえると、第1話のサブタイトル“2016年のきみへ”“きみ”は、タコピーからまりなに向けられたものだと考えられないだろうか。最終回まで観ることで、いじめっ子であるまりなに対する見方や、サブタイトルの受け取り方が変わる『タコピーの原罪』。切り替わる視点のギミックが、本作の奥深さを形作っているのだ。


タコピーの原罪
ABEMAにて毎週土曜日午前0時から最新話を無料放送中
[番組URL]https://abema.tv/video/title/19-266
【(C)タイザン5/集英社・「タコピーの原罪」製作委員会】

ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari