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30年以上の時を経て“令和に蘇った”名作アニメ…“大胆な原作改変”で魅せるワケとは?

  • 2025.8.14

30年以上前に連載された漫画作品をどのようにアニメ化するか――。TVアニメ『真・侍伝 YAIBA』は、そんな難題の“最適解”を導き出してくれた。本稿では、『真・侍伝 YAIBA』の原作とアニメの違いを取り上げつつ、アニメによってさらに増した満足度の秘密に迫りたい。

原作ファンも新規も楽しめる!大胆アレンジが光る『真・侍伝 YAIBA』

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(C)青山剛昌/小学館/真・侍伝YAIBA製作委員会

『真・侍伝 YAIBA』の原作である『YAIBA』は、1988年より“週刊少年サンデー”(小学館)にて連載された青山剛昌による漫画だ。青山は『YAIBA』の連載後、国民的作品である『名探偵コナン』を手がけており、両作にはキャラクターの特徴的なビジュアルなど共通点が見られる。青山や『名探偵コナン』にとって、『YAIBA』は原点といえるだろう。

『YAIBA』は1993年より『剣勇伝説YAIBA』というタイトルでアニメ化され、2025年となった今、リメイクされた。令和によみがえった『真・侍伝 YAIBA』には、数々の“改変”が加えられている。

たとえば、原作の後半である第17巻に登場する宮本武蔵と佐々木小次郎の過去編を、アニメでは第7話と第8話で描いている。大胆な構成の変更だが、エピソードの中に自然に組み込まれているため、違和感なく観られるのだ。「リメイク版はこれまでの『YAIBA』とは明らかに違う」と感じさせるような、原作ファンにとって意表を突く展開となった。

また、原作の第17巻にて1話だけ登場するキャラクター・大和撫子(やまとなでしこ)が、アニメでは全国を旅して“龍神の玉”を探す刃一行の仲間入りを果たしている。こちらも原作とは大きく異なる改変であり、美人の撫子にデレデレする小次郎や、鉄刃(くろがね やいば)をめぐって火花を散らす峰さやかとの絡みが新鮮だ。男性がほとんどである刃の仲間に新しく撫子が加わったことで、キャラクターのバランスもよくなったように思う。

改変は“諸刃の剣”――それでも『真・侍伝 YAIBA』が信頼される理由

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(C)青山剛昌/小学館/真・侍伝YAIBA製作委員会

構成や登場するキャラクターを原作から大胆に改変した『真・侍伝 YAIBA』だが、これだけではない。令和版としてなじむように、東京スカイツリーや高層ビル群といった現代の街並みが描かれている。原作は30年以上前につくられた作品のため、忠実にアニメ化するとどうしても古臭さが出ていただろう。風景を現代に合わせることで、リメイク版から観始めた子どもたちも受け入れやすいアニメになっているのだ。

さやかがスマホを使うシーンも印象的だ。現代人にとって欠かせないスマホを描写することで、“今っぽさ”を演出している。加えて、さやかはInstagramが元であろう“インステ”を使っており、第1クールのエンディングでは“インステ”に投稿した刃たちとの写真が映し出された。まだ少年少女である刃とさやかの青春を感じさせるとともに、令和の雰囲気を醸し出すことに成功しているのだ。

原作では描かれていないものを追加するなど、数多くの改変が加えられている『真・侍伝 YAIBA』。ただ、改変は“諸刃の剣”と言っても過言ではない。原作を愛する人々にとって解釈が違っていたり、「原作のほうがよかった」と思わせてしまうと、改変は“余計なもの”に変わってしまうからだ。

しかし、『真・侍伝 YAIBA』は原作のよさを残しつつ、さらに作品の魅力が増すように手を加えられている。それはかんたんなことではなく、アニメスタッフの原作愛があってこそ。作品をよくも悪くもさせる可能性を持った改変は、時にピリピリしてしまいそうになる。だが、アニメスタッフの原作へのリスペクトを感じる『真・侍伝 YAIBA』においては、安心して観られるのだ。次はどんな改変で私たちを驚かせてくれるのか、期待したい。


真・侍伝 YAIBA
ABEMAにて毎週土曜22:30より最新話を無料放送
[番組URL]https://abema.tv/video/title/2-29
【(C)青山剛昌/小学館/真・侍伝YAIBA製作委員会】

ライター:まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムやレビュー、映画の作品評を手がける。X(旧Twitter):@kaku_magari