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「期待しかない」ライダーに大河… 高キャリアな若手俳優、陽キャも陰影も自在に魅せる“静かなカメレオン”

  • 2025.7.27

磯村勇斗主演のカンテレ・フジテレビ系 月10ドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』(毎週月曜よる10時)は、いじめ、不登校、共学化に伴う混乱……そんなリアルな問題を抱える「濱ソラリス高校」を舞台に、スクールロイヤーという視点から生徒たちと向き合う異色のヒューマンドラマだ。脚本は『青天を衝け』の大森美香。確かな筆致で描かれる群像劇には、フレッシュな若手俳優たちが多数出演しており、画面の奥行きと熱を支えている。なかでも注目したいのが、3年桜組の生徒として登場する日向亘とのせりん。ふたりの存在感は、それぞれまったく異なる質感を持ちながらも、物語に新しい“星”を灯している。

日向亘:陽キャも陰影も自在に魅せる、静かなカメレオン

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月10ドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』第2話より(C)カンテレ・フジテレビ

サッカー部副キャプテンであり、女子生徒に一目惚れして恋人になる。そんな“明らかに陽キャ”な藤村省吾というキャラクターは、一見すると学園ドラマにおける典型的なポジションに見える。しかし、この役に軽薄さではなく奥行きを与えているのが、演じる日向亘の技量である。

2020年に『太陽は動かない』でデビュー後、『仮面ライダーリバイス』で大きな注目を集め、大河ドラマ『どうする家康』では真田信繁という歴史的役柄にも挑んだ。そのキャリアを見れば、すでに“若手”という枠には収まりきらないかもしれない。

しかし、学園ものという舞台に戻ってきた日向の演技は、まさに「いま、この時期にしか出せない輝き」に満ちている。SNS上でも「今期も学生役で嬉しい」「期待しかない」と登場を待ち侘びていたファンの声がある。

特筆すべきは、彼の“瞬発力のある芝居”だ。2024年4月28日作成された、CanCam.jp にて、「自分は役に入り込むタイプではない」と語る日向は、撮影現場ではあくまで集中を短時間に凝縮し、ピンポイントで感情を爆発させる。それは、台詞のひとつ、表情のワンカットに命を吹き込むような、研ぎ澄まされた演技である。

「色んな作品で演じさせていただいてわかったのは、自分は役に入り込むタイプではないということ。役に入り込める方々は集中力が長く続くと思うのですが、僕には持続性がないと思っていて。だから「今!」というときに、短期でピシッと決める。」
出典:CanCam.jp 2024年4月28日作成

『君となら恋をしてみても』で見せたしっとりとした山菅龍司役とのギャップも含め、今作での藤村役は“陽”でありながらも、どこか人懐っこい優しさと、周囲とのバランス感覚を併せ持つ難役。そのひとつひとつの動きに、確かな経験と集中力が宿っている。

のせりん:出番が少なくても視線を奪う、“透明な存在感”

一方、のせりんが演じる高瀬佑介は、元男子校・濱浦工業高校出身の天文部員という設定。1話時点での出番はわずかだが、その登場シーンは確かに視聴者の記憶に残る。SNS上でも「かわいいなあと思って見てたら……」と彼の独特の存在感に惹かれた声も見られる。

モデル活動を経て芸能界入りし、恋愛リアリティ番組『オオカミちゃんとオオカミくんには騙されない』で注目を集めたのせりん。ドラマデビュー後は、『ケーキの切れない非行少年たち』『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』といった社会派作品に次々と出演。

とくに『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』での不破大成役では、セリフ数や登場シーンが少ない役柄でありながらも表情で演じきり、彼の“静の芝居”に注目が集まった。

彼の強みは、画面に映った瞬間の「絵になる」存在感と、作品への真摯な姿勢だ。「お芝居は頑張っていきたい」と語るのせりんは、オーディションでの緊張を隠さず語る一方で、現場でのチームプレイや、役柄の意味を丁寧に咀嚼して向き合う姿勢が印象的だ。まだ演技経験は少ないが、そのぶん“吸収力”の高さがあり、1シーンのなかでも確実に成長の跡が見える。

「何か一つに対してというよりも、いろんなことに興味を持つタイプなのですが、そのなかでもお芝居は頑張っていきたいなと思うことの一つ。オーディションはいつも緊張してしまうけど、共演者やスタッフの方々と一緒にドラマや映画を作っていく感覚が楽しいです。」(引用元:non-no web

これから高瀬佑介というキャラクターが物語にどう関わってくるのか、のせりんの芝居とともに注目したい。

群像劇において“輝く脇”になるということ

学園ドラマは、若手俳優にとって登竜門であり、また俳優としての初期衝動がもっとも鮮明に記録される場所でもある。主演ではなくとも、群像劇のなかで目を惹く演技を見せること。それは、次の主演へとつながる確かな力になる。

日向亘はすでに“主役を張る俳優”としての歩みを始めているが、今作ではあえて一歩引いたところでキャラクターを成立させる余裕を見せる。一方ののせりんは、まだ線の細さも残るが、だからこその透明感がこの作品の空気に新しい風を吹き込んでいる。

ふたりが同じ教室にいる。それ自体が、このドラマの大きな価値だ。

『僕達はまだその星の校則を知らない』というタイトルは、どこか詩的で、未完成な響きを持っている。まさにいま、俳優としての“星”を育てている日向亘とのせりん。その瞬間を画面のなかで見られるというのは、視聴者にとって幸運なことだ。

これから、彼らがどんな軌跡を描くのか。それを追いかける楽しみが、このドラマには詰まっている。教師と生徒だけでなく、俳優と視聴者もまた、物語を通じて出会っているのだ。


カンテレ制作・フジテレビ系列 月10ドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』 毎週月曜よる10時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X (旧Twitter):@yuu_uu_