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【原田泰造さんインタビュー】「誰でも何歳からでも、よしっ今からやろう!と思えばアップデートできる」

  • 2025.6.27

『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』で主役を務める原田泰造さん。
原作は「LINEマンガでイチオシのオリジナル作品は?みんなで決めるベスト11」で1位を獲得、それを元にした連続ドラマは「日本民放放送連盟賞」テレビドラマ部門優秀賞受賞。劇場版ではドラマのその後が描かれ、昭和の価値観で凝り固まった‟おっさん”・沖田誠を演じます。LGBTQ+、推し活、二次元LOVEとイマドキな常識と生真面目に向き合い、自身をアップデートしようと七転八倒する姿をコミカルに演じる原田さんに作品のこと、50代のいまについても聞きました。

映画化までのスピードに驚きました

主人公・沖田誠は、ボーイズグループの推し活に夢中な妻、BLマンガで同人誌活動をする大学生の娘、メイク好きな高校生の息子と4人で暮らす会社員。友だちになったゲイの大学生・大地のサポートもあり、古臭い昭和の価値観からの脱皮を図る――。 TVer初回再生回数が1週間で89万回を達成した連続ドラマのその後を、オリジナル・ストーリーで描く『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』が完成しました。沖田誠を演じる原田さんは、映画化の話に驚いたそう。
 
「速い! と思ったんです。ドラマが放送され、その余韻のなかで映画化のお話をいただいたので、まずそのスピードに驚きました(笑)。撮影初日もみんなと‟久しぶりな感じがしないね”と話したくらいで」
 
マンガ→連ドラ→劇場版へ展開される「おっパン」。なぜこれほどまでにこの物語は多くの人の支持を得るのでしょう?
 
「原作が面白いし、脚本家の先生も気合が入っていて。普通のおっさんがアップデートする姿がいいし、まわりの人が好きなものにまっすぐ突き進む姿を、それでいいんだ! という姿勢で描くのもいいですよね。そもそも、ものごとに不正解なんてないんだから……いやわからない。なんでだろう?(笑)。友だちになる大地くんの存在も大きいかも。メイク好きな息子は大地君みたいに男の子が好きなの? と思うとそうじゃない。かわいいものが好きだけど、大人でもあって、そういう多面的なところも面白いよね」

ネプチューンのふたりに会えたのもありがたい

連ドラ1話からの誠を振り返り、「すごいスピードで変わったよね、最初はあんなにいばってたのに!」と原田さん。「誰でも何歳からでもアップデートは可能です。よしっ今からやろう!と思えばいい」と続けます。
 
「僕もアップデートしているつもりだけど、まだまだなところがいっぱいあるかも。たとえば細かいことだけど、家で食器を洗ったときも‟乾いたら食器棚に入れて、と言ったじゃん”と奥さんに怒られます(笑)。何回も言われるってことは、出来てないんだね……(苦笑)」
 
主人公の誠は、「いちど決めたらとことんやる人」と原田さん。
 
「大地くんの言うことに耳を傾け、奥さんや娘、息子の話を聞いてちゃんと向き合う。そこが格好いい。しかもアップデートするうち、奥さんや子どもの好きなものを応援するようになります。わからないからダメ、なんてダメだなと。僕がそう思えるようになったのは最近ですけど」
 
誠の場合、中島颯太さん演じる大地がそのアップデートを後押しします。ふたりは年の離れた友だちで、互いにリスペクトし合う関係。現実にそうした友だちを得るのはなかなか難しそうですが……。
 
「僕の場合、息子がもういい年齢で。ちょっと話して、吸収しよう!と思ったりします。教えてもらうのは、‟新しいサウナ、あそこはいいよ”なんてことだけど(笑)」
 
芸人の後輩へのリスペクトも確かにあるそう。
 
「みんなすげえんだもん。テレビに出れば同じ板の上に立つわけで、学ぶことばっかり。芸人なら『M‐1』を観ては、このネタどうやって作ってんの!? と思うし、バラエティ番組に出るアイドルの方を観てもそう。ネプチューンなんて今でも、緊張してるな……と思うことがあるのに、新人の子がどーんと落ち着いていて、マジかよ!と思ったりね」
 
と意外な答えが。クイズ番組でもバラエティ番組でも、いつでもその場を楽しんでいるように見える原田さんですが、実は代名詞ともいえる定番ネタ「は~らだたいぞーです!」をやっていても「次どうしよう!? と慌ててる(笑)」と言います。俳優としても緊張したりするのでしょうか?
 
「バラエティ番組に出るのと、セリフを覚えてしゃべるのとはまた違います。垣根はないけど、テンションが違う。部活なら文芸クラブとスポーツと、頭のなかではそんな違いがありますね。でもどっちも部活みたいに、楽しいからやっていて、好きだから続いています。僕はバイトも部活も続かなかったのに。ネプチューンのふたりに会えたのも、‟ボキャブラ”ブームが来たのも本当にありがたい。とても恵まれていたと思います」

俳優の面白さはサウナと同じ⁉

「セリフを覚え、カメラ前で出す。俳優の仕事に飽きることはまったくないです」と原田さん。
 
「前に、NHKの『コントレール~罪と恋~』(2016年)というドラマでセリフが出てこなくて真っ白になったことがあったんです。大事なシーンで、すっごく頑張って覚えたのに。その日から、セリフはひとことも漏らさないようにしようと練習量を増やしました。それはもうず~っとやる。ず~っと、何百回も。もともとセリフ覚えがいいほうではないけど、頭に入れるのではなく、体全体に入れなきゃって。そのドラマには野際(陽子)さんが出演されていて、『そういうことってありますか?』と聞くと、『あるよ~』と。僕が落ち込んでいたからそう言ってくださったのでしょう。その言葉に救われました」
 
いまも、そのときの恐怖が忘れられない。だからセリフを書いて覚えたり、覚え方もいろいろと試すのだそう。そうした試行錯誤が日常なら、飽きるどころではないのかもしれません。55歳の原田さんに、「どうにもやる気が出ない……」なんてことはなさそうです。
 
「でも、お芝居も若い頃は楽しくやれなかったし、自然にできず、自分を大きく見せようとしていました。プライドが高く、頭がよく見られたい! そんな欲がたくさんあって。でも『ネプリーグ』とかやっていたら、そんなものはどんどんはがれちゃって。バレるのだから止めよう!と思ったんです」
 
俳優の仕事のなにが、そこまで原田さんの心を捉えるのでしょうか?
 
「こういう感じかな? と考えながら練習するでしょう。それでリハーサルをして、監督が‟それでいきましょう”となって本番を撮る。その過程が面白い。いちばん楽しいのは、出来上がった作品を観ることかも。そこは、サウナと同じ。サウナに入って、あっちいな、地獄だな!と思いながら耐えて、水風呂に入ってまた地獄だな……を繰り返す。そして最後、外気浴をした瞬間に“うわ~報われた!” と思うの。それがいい。自分が出た作品は、何回でも巻き戻して観ます。自分が好きなの(笑)」
 
監督が頭で描いたものをやりたい。我をなくし、なるべくそのイメージに近づけたい――。どこまでも生真面目に熱心に、演じることに取り組む原田さん。お笑いの仕事とのバランスも「今のままがいい」と迷いがない。表現者として、それはもう最強のように見えます。
 
「映画でもドラマでも毎回、キャスティングに自分の名前が挙がったらいいな~って思うんだよね。透明人間になって、俺に1票! って入れたいくらい(笑)」

PROFILE
原田泰造(はらだ・たいぞう)
1970年3月24日生まれ。東京都出身。1993年にトリオ「ネプチューン」結成。『しゃべくり007』(日本テレビ系)、『ネプリーグ』(フジテレビ系)、『ジョブチューン アノ職業のヒミツぶっちゃけます!』(TBS系)、『ナニコレ珍百景』(テレビ朝日系)、『名将たちの勝負メシ』(NHK)などにレギュラー出演中。また、俳優としても活躍。最近の主な出演作に『サ道』リーズ、『生理のおじさんとその娘』、NHK大河ドラマ『べらぼう』などのドラマ、『夏への扉~キミのいる未来へ~』『大きな玉ねぎの下で』などの映画がある。


『映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』

世間の古い常識や偏見で凝り固まった昭和の“おっさん”がLGBTQ+、推し活、二次元LOVE、メンズブラ……といった新しい“常識”に出会い、少しずつアップデートしていくロールプレイング・ドラマとして話題を呼んだドラマの映画化。主人公・誠を演じる原田泰造をはじめ、「おっパン」ファミリーに新たに立ちはだかる“アップデートタスク”とは……! 妻・美香を演じる富田靖子、高校生の息子・翔に城桧吏、大学生の娘・萌に大原梓ほか、トータス松本、曽田陵介、山崎紘菜など、映画のオリジナル・キャストが集結。6月28日(土)には、映画公開記念 スペシャルドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!~スぺシャルドラマ~』(東海テレビ・フジテレビ系全国ネット/23:40~)が放送予定。

●原作:「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」練馬ジム(「LINE マンガ」連載)
●監督:二宮 崇
●脚本:藤井清美
●出演:原田泰造 中島颯太[FANTASTICS] 城桧吏 大原梓 東啓介 渡辺哲 曽田陵介 トータス松本/松下由樹/富田靖子
●配給:ギャガ
●7月4日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

©練馬ジム | LINE マンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会


撮影/本多晃子 スタイリング/上井大輔 ヘア&メイク/東 まり子 取材・文/浅見祥子

この記事を書いた人

大人のおしゃれ手帖編集部

大人のおしゃれ手帖編集部

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