体温1℃のクライシス。冷房冷えから身を守るには【ヴォーグなお悩み外来】

2025.6.21

冷えはやはり万病の元だった

Woman with fever symptoms sitting on sofa and holding thermometer

Q. 日本人の平均体温が低くなっているというのは本当？

本当です。36度前後が平熱だと考える方が多いのですが、本来、平熱の定義は36.5～37.2度。1957年に東京大学の田坂定孝先生が約3000人の男女を調査した結果でも、約7割の人の平熱は36.9℃でした。しかし、現代では36℃台前半の方が増えているというデータがあります。実際に、現在のクリニック来院患者さんの平熱は35℃台後半～36℃台前半の方が多く、約70年の間に1℃近く低下しているという実感があります。現代人は体温が低下していることに、まず気づいてほしいですね。なお、平熱は一般的に朝は低く、午後2時、3時がいちばん高くなります。その間を取って、朝10時くらいに脇の下で測ってみてください。

Q. なぜ、現代の日本人はこんなに冷えているの？

入浴習慣のない方が増えていること、睡眠不足の方が圧倒的に多いことが主な要因です。睡眠不足は自律神経のバランスを乱し血行不良を引き起こすため、冷えにつながります。運動不足や食生活も問題です。海外セレブを真似て、朝から体を冷やす南国のフルーツやグリーンスムージーを食べる女性、結構いませんか？欧米人は私たちより平均体温が約1度高いので、海外セレブの食生活をそのまま真似するのは危険な場合もあります。

Q. そもそも、なぜ冷えは体に悪い？

体温は、血液が全身を循環することで維持されています。つまり、冷えているというのは、体の血流が悪くなるということとほぼ同じです。そして血流は、動脈を通じて酸素や水分、栄養素を体の各部位に届け、静脈を通じて不要なものを回収する役割を担っています。この血流が滞ると、肩こり、頭痛、生理痛、むくみ、背中や腰の痛みなど、さまざまな不調が生じる可能性が！冷えは、あらゆる病気につながり得る、注意すべき状態だということがご理解いただけるかと思います。

女性の不調の9割は冷えから来るという事実

Shot of a young woman with the flu sitting on the couch at home

Q. 頭痛に悩む女性は多いですが、やはり冷えも原因のひとつなのですね！

その通りです。私の女性の患者さんでも、体を温めることを意識することで、頭痛や便秘が改善したという方が多くいらっしゃいます。私の経験上、女性の不調の9割は冷えからくるのではないかと感じるくらいです。現代人は、冷えた不健康な状態が当たり前になってしまっているように感じます。その意識を変えていただきたいですね。私自身も、大学生時代には生理痛、便秘、花粉症、肩こり、頭痛など、様々な不調を抱えていて、生理が止まってしまったこともありました。でも、温活を実践したことで、これらの不調が全てなくなり、健康を取り戻すことができました。20代の頃よりも、40代の今の方が元気で、毎日をいきいきと過ごせています！

Q. 夏の冷房による「冷え」、どのように対策すればいい？

暑い外と冷房の効いた室内、その温度差にうまく対応することが大切です。外では薄着でも、冷房のある場所では下に肌着を重ねたり腹巻を活用したりするとグッド。また、首・手首・足首など「首」のつく部位を温めることで、効率よく冷えを防ぐことができます。

夏は「薄着・冷房・冷たい飲食物」の影響で、知らず知らずのうちに体が冷えてしまいます。特に内臓の冷えは、食欲不振や胃もたれ、便秘、下痢、生理痛・生理不順、むくみ、不眠など、さまざまな不調を引き起こす原因になるので要注意。

温活はデトックスへの近道

Tired, but Happy: Fit Blonde Woman Wiping her Face with a Towel after a Home Workout

Q. 冷えを改善すると、デトックス効果もある？

あります。冷えていると汗をかきにくくなり、老廃物が体外に排出されにくくなります。また、冷えによって浮腫（むくみ）が生じると尿が出にくくなり、腸の働きが鈍ると便通も悪くなります。逆に、冷えを改善し血行が促進されると、これらの機能が改善されやすくなります。

Q. ヨガやサウナはデトックスに効果的？

YES。副交感神経が優位になると内臓の働きが活発になり、胃腸の消化機能や尿を出す機能が向上します。そのため、ヨガはリラックス効果とともにデトックスにもつながります。また、サウナは発汗を促し、体内の老廃物排出を助けます。実際、アトピーの患者さんが断食とサウナを組み合わせることで、皮膚が次第にきれいになるケースもあります。

Q. デトックスのため、先生が心がけていることを教えて！

クリニックの仕事が終わったら必ず30〜40分ほど走ります。そしてお風呂に入って温まります。どんなに忙しい日でも、最低15分は走り、心身をリセットするようにしています。

話を聞いたのは……

石原新菜

イシハラクリニック副院長。帝京大学医学部卒業後、同大学病院での研修を経て現職に。漢方医学や自然療法の考えに基づき、食事の指導も含め、さまざまな病気の治療にあたっている。分かりやすい医学解説に定評があり、テレビやラジオ、雑誌などで活躍。温活に関する著書も多数。www.ishiharaclinic.com

Text:Kyoko Takahashi Editor:Kyoko Muramatsu, Yuna Shibata

元記事で読む