満席の国際線で「せっかくの海外旅行なのに！」60代女性客の不満爆発→CAにもむずかしい座席調整のケースとは？

2025.6.10

「飛行機で友達と座席が離れてしまったけど、機内でCAさんに頼んで隣同士にしてもらえた」こんな経験をお持ちの方も、いらっしゃるのではないでしょうか？

しかし、フライトの状況などによっては、客室乗務員でもご希望通りに座席を調整できないことも…。

そこで今日は、元国際線CAの私が経験した座席にまつわるトラブルエピソードをご紹介します。

搭乗時から不機嫌なお客様とCAの不安

その日は、観光で利用されるお客様とお仕事で移動されるお客様が半々の、ほぼ満席の国際線フライトに乗務していました。

搭乗時刻になりお客様を機内でお迎えしていると、60代ほどの女性のお客様が明らかにご不満そうな表情で搭乗されてきたのです。

「何かあったのかな？」と様子をうかがっていると、すぐに原因が分かりました。この女性のお客様とお連れ様の座席は隣同士ではなく、3列ほど離れていたのです。

搭乗された時から不機嫌そうになさっていたのも、それが原因だったのでしょう。

長時間のフライトとなる国際線では、お連れ様と座席が離れてしまうと心細い上に、機内での時間も旅の楽しみが半減してしまうもの。

「このまま問題なく出発できるといいけど」と少しハラハラしながらも、お客様から座席移動のご要望もないまま無事に離陸し、ホッと胸を撫で下ろしていたのです。

CAにとっても座席調整が至難の業となるワケ

シートベルトサインが消え、これから始まるお飲み物のサービスに備えてエプロンに着替えて機体後方のギャレー（機内のキッチン）に向かっていた時です。

「すみません！」と、先ほどの女性のお客様から呼び止められました。そして「友達と席が離れちゃったから、どうにかならない？」と。

あいにくこの日のフライトは満席に近く、エコノミークラスにはすぐに移っていただける座席がありませんでした。

しかも、運が悪いことにお二人ともそれぞれ3列席の真ん中の席にお座りだったのです。

近くの方に座席移動をお願いするとなれば、通路側もしくは窓側にお座りのお客様に真ん中の席に移っていただく必要があります。

実は、こうした座席移動のアレンジは、客室乗務員にとっても一筋縄ではいきません。

案の定、両隣にお座りのビジネスマン風のお客様にお声がけすると「ちょっとそれは......」というお返事でした。

見知らぬお客様に挟まれる座席に移動したくないのは、当然のお気持ちです。

しかも、追加料金をお支払いなって座席を確保されている方もいらっしゃるので、無理に座席の移動をお願いすることはできません。

このように、空席のない満席のフライトや、真ん中への席への移動をお願いしなければならないケースでは、CAにとっても座席調整ができないことも多いのです。

「初めての海外旅行なのに！」納得いかないお客様......CAの心境とは

お二人の女性のお客様には、満席で移動していただく空席がないことを丁寧に説明しましたが「せっかくの海外旅行なのに！」とご不満な様子です。

それでも、満席で移動していただける座席がない以上、ご理解いただくしかありませんでした。

ご友人同士でのご旅行なのに、機内で座席が離れてしまったのは本当にお気の毒ですし、客室乗務員としてもそのお気持ちは痛いほど分かります。

このフライトが満席だったこと、かつ3列席の真ん中に移動をお願いしなければならなかったことが、座席調整をよりむずかしくさせたといえるでしょう。

実際、移動先の座席が通路側などであれば「いいよ」と快く座席交代を受け入れていただけることが多いのも事実です。

客室乗務員もできる限りお客様のご希望に添いたいと考えていますが、今回のようにどうにもできないケースも少なくなく、心苦しさを感じます。

お連れ様と空の旅を楽しむためのポイント

現在、多くの航空会社では、チケット予約の際に座席指定が可能です（追加料金が必要な場合もあり）。

また、航空会社によっては、ご搭乗日の前日などにオンラインチェックインで座席を選ぶことができます。

もし、ツアー会社などでチケットを購入して、航空会社のホームページから座席指定などのアクセスができない場合などには、なるべく早く空港に到着してチェックインカウンターで座席の希望をお伝えいただくといいでしょう。

満席のフライトとなると、座席の移動はむずかしいのが現状です。空の旅をお連れ様とお楽しみいただくためにも、チケット予約時やオンラインチェックインでの座席指定をぜひおすすめします。

楽しみにしていたご旅行が、座席トラブルで台無しになってしまわないよう、事前の準備を怠らないことが大切ですね。

それでは、素敵な空の旅を！

ライター：かくまるめぐみ
大学卒業後、日系航空会社に客室乗務員として入社。国際線をメインに乗務し、世界中を飛び回る。結婚を機に退職し、イタリアへ移住。現在も家族とともにイタリアに在住し、Webライターとして活動。客室乗務員の経験から培った「細やかな心配り」を大切に、コラム記事からSEO記事まで幅広く執筆中。