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ファッションと音楽の表現者、ステファノ・ガリーチのルーツを探る【FAB FIVE】

  • 2025.5.23
今春開催された伊勢丹 新宿店でのポップアップイベントでは、ロックバンド・Gliiicoのメンバー3名を招きトークショーも開催。左から二人目がステファノ・ガリーチ。Photo_ HAYATO TAKAHASHI
今春開催された伊勢丹 新宿店でのポップアップイベントでは、ロックバンド・Gliiicoのメンバー3名を招きトークショーも開催。左から二人目がステファノ・ガリーチ。Photo: HAYATO TAKAHASHI

2年前、ステファノ・ガリーチは26歳でアン ドゥムルメステールのクリエイティブ・ディレクターに就任した。「私にとって最初の挑戦は、ブランドらしガリーチさと自分のヴィジョンをどのようなバランスで両立させるかでしたが、デビューコレクションに関しては、『自分はブランドのコードをちゃんと引き継げる人間です』という事実を証明することでした」そしてシーズンを重ねた今は、ボヘミアンかつダークなロマン主義的要素を含むアン ドゥムルメステールのDNAをしっかり受け継ぎながらも、そこにステファノ・ガリーチらしさを刻むことに成功している。

Photo_ Courtesy of Ann Demeulemeester
Photo: Courtesy of Ann Demeulemeester

「アン ドゥムルメステールはNY的な東海岸のカルチャーにインスパイアされていたのに対し、私はLA的な西海岸のロックシーンやユースカルチャーからインスピレーションを得ています。お互いに細かい個性の違いはありますが、音楽という大きな括りでつながっている。その二つの要素を融合することで、ブランドのDNAを受け継ぎながらも新しいアン ドゥムルメステールらしさを生み出せると思うんです」

自身のヴィジョンがはっきりと見えているのは、人生をかけて自身のテイストを突き詰めてきた賜物だ。「今後は単にファッションブランドとしてではなく、アン ドゥムルメステールを中心に、ブランドに関わる多様な人たちやアーティストが集うコミュニティを形成できたらなと思っています。私がコラボレーションに積極的なのは、いろいろな考えを持つアーティスティックな人たちとつながることができるからです。ファッションの枠を超えた、ワクワクを醸成するハブになれたらいいなと思っています」

1 ノージア・ツインズ(Nausea Twins)としてアーティスト活動もされていますが、どのような音楽やアーティストに影響を受けてきましたか?

幼い頃から、自分を表現する手段が音楽と絵をスケッチすることでした。父親の膨大なレコードコ レクションを漁り、気になるジャケットのレコードを選んで聴くのが大好きでした。お気に入りは 50〜70年代にかけてのUSロックですが、なかでもリンジー・バッキンガムが参加したフリートウ ッド・マックのアルバム『RUMOURS』は、ジャケ写も音楽も大好きで、今でも聴いています。

2 ファッションの道へ進んだきっかけは?

パティ・スミスの名盤『ホーセス』のジャケットは、ガリーチのクリエイティブに多大な影響を与えたインスピレーションのひとつだという。Photo_ Patti Smith / Horses / BMG
パティ・スミスの名盤『ホーセス』のジャケットは、ガリーチのクリエイティブに多大な影響を与えたインスピレーションのひとつだという。Photo: Patti Smith / Horses / BMG

特定のデザイナーではなく、ミュージシャンたちのスタイルや、小説や映画に登場するキャラクターたちへの憧れから始まっています。特にロバート・メイプルソープが撮影したパティ・スミスの『ホーセス(HORSES)』のジャケ写は秀逸で、あのスタイルが私のファッションステートメントになりました。

3 アメリカ文学がお好きだそうですが、お気に入りの一冊は?

私の人生を変えたと言っても過言ではないのが、14歳のときに手にしたジャック・ケルアック『路上』です。アメリカ人青年たちが大陸を横断する青春放浪記で、その瞬間を存分に生きる登場人物たちの姿に大きな影響を受けました。

4 どのような映画に刺激を受けますか?

ガリーチが大好きな映画のひとつにあげる『イージー・ライダー』。Photo_ ©2025 Everett Collection All Rights Reserved
ガリーチが大好きな映画のひとつにあげる『イージー・ライダー』。Photo: ©2025 Everett Collection All Rights Reserved

デニス・ホッパー自身が主演&監督を務めた『イージー・ライダー』(1969年)は大好きな作品で すし、ホッパーが出演しているフランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』(1979年)も 好きです。ジム・ジャームッシュ監督のような、自身の世界観がある作品にも惹かれます。

5 コレクター気質だそうですが、収集の魅力は?

有形無形問わず、あらゆるモノに価値があると感じるんです。誰かの手を経てきたモノの歴史を感 じたり、それを通して今度は自分がどんな世界を広げていけるかを想像するのが好きなんです。気 に入ったモノはつい収集してしまうので、部屋は大変なことになっています(笑)。

Text: Rieko Shibazaki Editor: Yaka Matsumoto

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