1. トップ
  2. 恋愛
  3. 「最低かと尋ねられたら最低です。でも…」他人の失敗を「ざまあ」と思う人に鍼灸師が授ける"黒い自分"の脱出法

「最低かと尋ねられたら最低です。でも…」他人の失敗を「ざまあ」と思う人に鍼灸師が授ける"黒い自分"の脱出法

  • 2025.4.15

人からの何気ないアドバイスでクサクサ、モヤモヤしていた気持ちが晴れ、体調が改善されることもある。元中学校教員で鍼灸師として約30年間でプロアスリートなど約8万人の治療実績があるやまざきあつこさんは「ネガティブな感情を無理やり消すのではなく、いなすように努めるといい」という――。

※本稿は、やまざきあつこ『黒い感情と不安沼「消す」のではなく「いなす」方法』(小学館、取材・文 鳥居りんこ)を再編集したものです。

暗い部屋でパソコンを使用してる女性
※写真はイメージです
他人の成功や幸せが心に障る、ザラつくあなたへ

ときどき、「黒い自分を持て余す」と来院される方がいます。

「先生、私、心の中が真っ黒なんです。そんな自分が嫌いです」と。

紫ゆかりさん(45歳)が当院にいらした理由は胃痛、頭痛、腰痛、便秘に生理痛、むくみなどの症状からでした。

どの患者さんもそうですが、皆さん、はじめは体調不良を訴えます。体のどこかが痛いのですから当然です。でも、そのうちに、ポツリポツリと心の内側を話してくださるようになります。紫さんはこう言いました。

「最近、思うんです。私、心がザラついているって……」

紫さんの職場では、月末に社員の売上成績が発表される朝礼があるそうです。

紫さんには、自他共に認める営業センスがあり、努力の甲斐があって今では責任あるポストに就任しています。当然、後輩の面倒を見るべき立場ですが、最近はひとりの後輩の活躍が目覚ましいそうです。

「もちろん、お店としては喜ばしいことです。さらに彼女は私が手塩にかけてきた後輩です。もちろん、彼女が成績トップを表彰されるときは笑顔で拍手です。でも、何ですかね、私、悔しいとも違って……。うまく言えないんですが、心に障るんです、ザラッと。こんなこと、誰にも言えないですけど、黒い自分が疼くって感じですかね? そんなときですよね、消えてしまいたくなるのは……」

紫さんだけではなく、これは誰にでもある感情じゃないですかね。嫉妬や妬みという「相手の幸せを呪う」ほどの強い気持ちではなく、単純に「なんか、ザラつく」って感じ。

誰にでも、そんなときはあります。24時間365日、完全無欠のメンタルの人はいません。なぜなら、調子のバイオリズムは、瞬間瞬間で変わるから。

「人の成功を羨やんで何が悪い」

紫さんの「心に障る」というのは気が滞っている状態です。この「気」は元気、根気、勇気、やる気といったエネルギーの意味。目には見えませんが、私たちの周りで常に気は動いています。

人は気の巡りが悪くなると、思考がドンドンとネガティブに振れてしまうんですね。

特に女性はホルモンの影響をダイレクトに受け続けていますから、ちょっとした心の障りが、体調に大きな影響を及ぼしてしまう。

本当に、女性はデリケートな生き物だと思います。すごく落ち込むわけじゃない、でも、なんかモヤモヤしたり、ザラついたり。思えば、人生はその繰り返しかもしれませんね。

私が紫さんに、少しずつ提案していった方法があります。

まずは、黒い自分を許そうよ。例えば後輩がドンドン輝いて、反比例するかのごとく自分の輝きが削がれる気がしたら、その気持ちごと、マルッと、くるんじゃえばいいんです。

「ああ今、私、あの子にちょっとだけ嫉妬しちゃってる」ってね。

モニタの隙間からのぞく視線
※写真はイメージです

人間には感情があるから、マイナスな感情が出ても当然だよねって、私は天使にはなれませんって真っ先に降参ですよ。一番大切なことは、自分だけは自分を肯定してあげること。

皆さん、自己否定に走り過ぎです。自分が自分を否定するほど、ツラい話はないんです。それは人から否定されるより、何百倍もツラいことだから。自分のことは全部、全部、あなた自身が受け入れてあげてください。極論を言うならば、自分がすべてです。

さらに、私に言わせればこうです。「人の成功を羨やんで何が悪い⁉」

いいんです、嫉妬も含めて負の感情も自分の気持ちです。自分の気持ちを一旦、丸ごと受け入れることは、あなたが思うよりも大切なんです。自分を否定しちゃダメですよ。

そして、次はこれです。

そこに、いつまでもいるな!

気は常に動いていますし、あなたの感情も1秒ごとに更新されます。たとえ、良からぬ感情に支配されたとしても、それはほんの一瞬のこと。

いつまでも、その感情を引きずらない練習をしましょう。

モヤモヤを追い出すイメージで、頭を軽く左右に振ってみてください。次に、ゆっくりとゆっくりと首を回す。首はあなたの心と同じく、とてもデリケートですから、丁寧に扱ってあげてくださいね。

大丈夫な予感がしてきたら、小さな声で言いましょう。

「ヨシッ! 次、行くよ! 次!」

そして、いつもより、少しだけ軽快に歩き出してみてください。それだけでも、あなたの周りを流れている気が変わってきますよ。

紫さんは鍼治療で調子が上向きになるにつれ、「うん、これは後輩の努力だよな。私も心機一転する気持ちで頑張ろう!」という風に考えられる日も増えたと笑っています。

それだけで、もう、十分過ぎるほど、立派だと思います。

誹謗中傷書き込みに「ざまーみろ」と思ってしまうあなたへ

あるとき、芽衣さん(44歳)から相談を受けました。

「先生、どうしたら他人のことが気にならなくなるんですかね? もう、私、会う人見る人、全員に嫉妬してるんじゃないかって思うくらいです」

詳しく説明してもらったところ、芽衣さんの心には「妬み・嫉み・僻み」が渦巻いているそうです。

「この人、お金持ちなんだなと思うと激しく嫉妬しちゃうし、事業で成功してますなんて人を見ると『失敗すればいいのに』とか思っちゃう。人の不幸を願うなんて最低ですよね……」

最低かどうかと尋ねられたら、最低です。なぜかって言えば、それはその人自身を幸せにしない行為だから。でも、どんな気持ちにも理由があります。人の不幸を願う気持ちの裏には、「満足できない自分」の現状あるんですね。

芽衣さんは嘱託社員ですが、彼女の話によると、仕事内容は正社員とほとんど変わらないのに、給与や福利厚生の面で大幅な差があるのだそうです。

「私の人生、ずっとこのままなんだなぁって思うと虚しいっていうか……。なんか人生、全然うまくいかないです」

ストレス発散の方法を聞くと、芽衣さんはこう言いました。

「先生だから正直に言いますが、有名人の不祥事とかがあるじゃないですか? その誹謗中傷の書き込みを見ながら『ざまーみろ』って思う自分がいるんです。もちろん、わざわざ書き込んだりはしてないですよ。でも、それ見て『ホラ、皆、そう思っているじゃん!』って溜飲を下げるっていうんですか? あ〜あ、言っててまた虚しくなってきました……」

ストレス発散の方法は人それぞれで自由ですが、後で虚しくなるのであれば、効果的な気晴らし方法ではないかもしれませんね。

芽衣さんが言うように自分のことが最低に思えて、だから何もかもがうまくいかないという考えに縛られると、やはり幸せは遠ざかっていくように思います。では、どうするか? ということになりますが、まずは妬む自分、僻む自分を認めるってことです。幸運なことに芽衣さんは「ああ、私、今、人を妬んでる」ってわかっているのですから、第1段階はクリアです。

次に起こす行動は「許す」です。

“沼底暮らし”に疑問を持つ日の後に好機到来

人間に生まれて、妬み・嫉み・僻みの気持ちを持たない人はいないでしょう。自分に持ち合わせがないものを持っている人を見て、それに羨ましさを感じたら、誰だって「いいなぁ」って思うものです。自然な感情ですから、そこは自分を責めなくてもいいと思うんです。自分自身の素直な感覚までを否定する必要はないんですね。

なぜなら、自分と戦うのが一番疲れるから。自分の感情を否定したら一番ダメージを受けるのは自分自身なんです。いつだって、どこにいたって自分は自分の一番の応援団でいなくてはいけないんですよ。こんなときは「うん、しょうもない自分だけど許そう」と思ってください。

そして、これをいつまで繰り返すんだろうと思ったときが、成長のチャンス。人間、沈んだら、浮いてくるしかないんですよ。それまでは、僻んだり、妬んだりと、ドップリと沼にハマるのもいいと思います。

やがて、今の芽衣さんのように、その“沼底暮らし”に疑問を持つ日が来ます。そのときには「これは好機到来!」と捉えることが大事です。批判や妬みの気持ちを「わかってるよ」と落ち着かせたならば、「さぁ、自分のことを見直してみますか!」と考えるようにして欲しいんですね。

他人の成功は、その人の才能と努力の時間の結晶。でも、他人は他人でしかないのですから、とりあえず、他人様のことは脇に置いておきましょう。

ここまで来たら、次は第3段階です。

私は芽衣さんに伝えました。

「自分を見つめる訓練をせよ」と。「自分の足りないところ、そして良いところを真剣に考えよ」と。足りないところを考えるのは自分を蔑むためではなく、むしろ、その逆。未来を力強く生きるためのステップです。

やまざきあつこ『黒い感情と不安沼「消す」のではなく「いなす」方法』(小学館、取材・文 鳥居りんこ)
やまざきあつこ『黒い感情と不安沼「消す」のではなく「いなす」方法』(小学館、取材・文 鳥居りんこ)

さらに「いいなぁ、こうなりたいなぁ」と思っている人に、どうやったら近づけるのかを考えてみるのもいいですね。何をどうすればその人に1ミリでも近づけるのかを考えてみるってことです。本当は、自分はどうしたいのか。どうなりたいのか。目指したい方向は何なのか? 憧れの人のようになりたいなら目指せばいいし、目標にすればいいんです。たかが1ミリ、されど1ミリです。その人と比べて、ただ妬むだけだったり、「私にはどうせ無理」と決め付けて生きるのは、あまりに人生もったいないよってことです。

羨ましく思う他人の存在は、実は自分自身の成長へのキッカケです。あの人のようになりたい、あの人のレベルに近付きたいと願うための他人との比較ならば、むしろ大歓迎。

さあ、自分を励ましながら、進化していきますよ!

元記事で読む
の記事をもっとみる