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本格派のお鮨がコースで25,000円!築地と神楽坂にある、適正価格が嬉しい2軒

  • 2025.4.14

新店ラッシュは勢いを増し、価格の高騰も止まらぬ“東京の鮨”。

しかし、その波をもろともせず、淡々と真っ当な仕事をする良店が存在するのも事実。確かな技術と味は言わずもがな、そのコースは3万円以下。

大人が本当に通いたい、築地と神楽坂にある2軒を紹介する。

1.【全20品¥25,000】弧を美しく描く握りを知らなければ東京の鮨は語れない 『鮨処 やまと』@築地

杉田孝明さんが安井さんのために2軒の屋号を直筆して送った暖簾。「昔は暖簾分けといったら親方の屋号が左端に入っていたんだ」と話してくれたとか
細部にまで施された技巧に、これぞ一流と舌を巻く


『日本橋蛎殻町 すぎた』から独立し、その店名が唯一暖簾に入る『鮨処 やまと』。

大将の安井大和さんに杉田孝明さんについて聞くと、「本当に粋な親方です」と、あるエピソードを教えてくれた。

「すし桶を入れる籠も親方がくださったもの。職人さんが1年かけて作るものです。僕が独立する時、『注文したいので連絡先を教えてもらっていいですか?』と尋ねると、『もう用意してある』と」

粋であり期待の表れ。2021年夏の開業から間もなく4年。

当初は杉田氏と同じやり方が多かったが、毎日の試行錯誤から自分の道を見つけ、いま全く同じ手法は「鰯」と「干瓢」のみ。

細やかな仕事が光る、研ぎ澄まされた2時間半
東京カレンダー


ねっとりしたカンパチとヒラメで白身魚の個性を感じたあと提供されるのは、牡蠣のごま油和え。

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タラの白子の白味噌仕立て。白子の奇麗な旨みと麹の甘さが重なる。

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序盤、白子の味噌仕立てや菊芋の茶碗蒸しを口にすれば、『銀座 小十』で4年修業した背景もしみじみ感じるだろう。

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鰯でアサツキとガリを巻いたつまみは修業先から受け継ぐひと品。

脂がのった鰯が手に入る時期にのみ提供。

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握りの始まりは明石のスミイカで、弾力と甘みにこのあとの期待が高まる。

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レア感を残して仕上げた「煮ホタテ」。一体感を出すため親指でホタテの繊維を潰している。

口に入れると双方が同化して、喉の奥に自然と消えていく。ツメの濃さや量も絶妙な塩梅で、ファンも多い。

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「全般的に魚を寝かせ過ぎず、香りも楽しんでいただきたい」と話す握りは、それぞれの身味の力で酢飯との一体感を確立する。

小肌の締め方は独立前にいた『日本橋蛎殻町 すぎた』流。締め過ぎずにソフトさを意識している。修業先と同じ米店からの米を使い、この日は富山のコシヒカリ。ぽってりと丸いフォルムで僅かに酢飯が多めのバランス


締め過ぎない「小肌」は酢がすっと引き、すべてを飲み込んだあと、香りと余韻が刹那的に漂う。

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後半、鰆にカラシを合わせているのが新たな江戸前。

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対馬の穴子は短時間の強火でふわりと仕上げている。

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たまご焼きは甘さ控えめの王道で、ほっと落ち着いて終宴となる。

和食と鮨の美しさ、日本の魚の豊かさを知る時間が2万5,000円とは、充実以外の何ものでもない。

【Check!】握り手を知る
東京カレンダー


香川県出身。鮨店を営む両親の元に生まれ育ち、子どもの頃から鮨職人を夢みる。

口数は多い方ではなく、「ゲストの会話に余計には入らない」ということを意識しているとか。

2.【全17品¥25,000】鮨店というべきか否か。和食と鮨の紛うことなき融合は味わっておいて損はない 『一宇』@神楽坂

コースが後半に入ったことを告げる「八寸」はタコや金柑のほか、ホッキと真珠貝を薄揚げなどと合わせた酢味噌和えも登場。ワサビも香る。牡蠣はナマコと低温で火を入れ、柔らかく。どれも手が込んでおりお酒が進む
神楽坂の裏路地に鎮座する杉皮の扉が、驚きの夜へといざなう


あしらいの南天や松葉も美しい八寸が見事。春先にふさわしい山海の食材がそろうが、タコは八角と丁字でスパイス煮、金柑はゴルゴンゾーラで白和えに。

こちらの感激を察知したのか、「つい、ひとひねり加えたくなる性分で」と照れながら答える。店主の濱野紘一さんは『銀座 小十』『赤坂菊乃井』といった名店で腕を磨いた日本料理の人。

『一宇』でも懐石の流れをくむ「おまかせ」を提供するが、修行時代、シンプルな仕込みで信じられないほど魚が旨くなる鮨に感動して一念発起。熊本『鮨 仙八』で7年も修行し、『一宇』を開いた。

「鮨を日本料理に落とし込む方法をずっと考えています」と濱野さん。

開店して丸3年になるが模索は続いており、それまでは一品料理と握りを切り分けて提供していたが、今年から料理のひとつと捉え、コースの中盤に組み込む構成に変えている。

店主が二刀流で仕込む日本料理と鮨の見事な共演
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着席してまもなく振る舞われるご挨拶代わりの「ご一献」。

月ごとに提供法は替わり、寒い時季はフグのひれ酒。使う酒は必ず、神楽坂という花街が愛し、全国区に押し上げた灘『白鷹』の純米酒。

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ご一献の後は、コッペガニのお浸し、フグ白子とふろふき蕪、鴨真丈のお椀。お造りはヒラメとブリ。

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5貫ある握りでまず登場する「アオリイカ」。刻んだ大葉と握ることで最初にふさわしい清涼感を醸す。

魚介は豊洲を中心に一部で熊本や京都、静岡など産地直送も扱う。

カンパチ、ネギトロ軍艦、コハダ、車エビの握りと続く


「両方の良さを知る職人として道を極めたい」と下ごしらえに時間がかかる炊き込みご飯まで用意する一方で専用の古米と赤酢でシャリも当然のごとく仕込む。

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スッポンとフカヒレの茶碗蒸し、あん肝おから、海老芋コロッケ、クエとコッペガニの炊き込みご飯。

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甘味はわらび餅とブランマンジェの2品で嬉しい。

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「わらび餅」。本わらびを用いて常に出来立てを提供する自家製で、おまかせの最後を彩る定番の甘味。

上品な香りと優しい食感に癒される。

杉皮の戸で目立つ位置に掲げられた意匠は屋根瓦の形から着想。店名は「ひとつ屋根の下」の意味で、そのイメージから縄のれんも山型にカット。照明に灯されて美しく映える


万事に手を抜かない実直な姿勢に頭が下がる。

そんな美味しさがこの価格で食べられるとは心底驚くほかない。

【Check!】握り手を知る
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格闘家を目指すも断念、料理人に。赤坂、銀座、熊本、『八雲 うえず』を経て独立。

和食店らしく静かに料理を振る舞うが、聞けば何でも応じてくれる。その語り口は明快だ。

▶このほか:食通たちの間で話題の、フーディー本田直之さんが握る「鮨本田」に潜入してみたら…

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