コースで提供する鮨店や、最近出てきたカジュアルな鮨店とはまた違う、特有の雰囲気を持つ“町場の鮨店”。
まだ町鮨に行き慣れていない20代が体験する様子とともに、その魅力を見つめ直してみた。
東京各地、全6店舗!1週間の町鮨生活にトライ
東カレ編集部の最年少。幼い頃から、誕生日の食べたいものリストに必ず入るほど鮨が好き。カウンターでのひとり鮨に憧れていた。
1.東京3年目の24歳。緊張しながら町鮨デビュー! 『㐂寿司』
まだ早いかと思っていた町鮨も行ってみれば都だった!
「町鮨に若者を行かせたら新しい発見があって面白そう」と編集部で声が上がり若手編集者・髙橋が町鮨へ行くことに。
そこで選んだのは、江戸前の仕事を残す町鮨の代表である人形町『㐂寿司』。
老舗が多い人形町の中でも創業1923年、今や希少となった伝統的な日本家屋の建物には名店の風格が漂っている。
ビルばかりの東京には珍しい造り!とスマホでパシャリ。
入母屋造りといって、同店が柳橋から人形町に移って来た際、芸者の置き屋だった家屋を改装した由緒ある建物なんだそう。
「外観だけで、美味しいものがあるんだろうなぁと感じます。でも引き戸って、自動ドアの店にはない緊張感がありますね」と髙橋。
拙いなりに名店の匂いをかぎ取ったようだ。
客層は人形町の旦那を始め、遠くから足を運ぶ常連客まで多彩。来日するたびに食べに来るという海外からの客も多いそう。
長く通い続ける常連客の中で、浮いていないかドキドキ。
「好きなものを食べたいだけ頼む、昔ながらの“おこのみ”が町鮨の醍醐味。頼む順番にも決まりはなく、食べたい順で構わないですよ」と親方。
こんな会話が生まれるのも、町鮨の良さ。
ショーケースに興味津々。
「好きなネタを言ってくださいね」に対し、予習した「エビが食べたい……です」と言うと、「じゃ、握りにしましょうか」と親方。食べ方の相談もできて楽しい。
下町風情ある人形町らしく、『㐂寿司』の客層はざっくばらん。
常連と親方との掛け合いや、隣の席の気さくな会話が聞こえてきて、緊張感がほぐれてきた!お酒も入っていい気分に。
ひとりで飲んでいても自分から話しかけられない……と思っていたら、横のお客さんが声をかけてくれた!
町鮨ならではの温かい空気感で、人生の先輩たちとも打ち解けて飲めちゃいます。
お目当ての江戸前鮨もしっかり堪能。お店にいる人との話も楽しくて、鮨も美味しい。最高です……。その日の気分や懐具合で食べるものを調整できるのも魅力的。すっかり町鮨の虜に!
ここは初代が江戸前鮨の開祖『与兵衛鮨』で修業をしたとあって、古い江戸前の仕事が今も残る。
中でも「唐子づけ」という細工寿司がその代表だ。江戸前では車エビにおぼろを噛ませるが「唐子づけ」は、おぼろをかませた才巻エビ(小ぶりな車エビ)を飾り切りして握る。
「おぼろは芝エビのすり身なんですね。初めてだけど甘くて美味しい」と髙橋は目を丸くする。
現在の店主は、四代目を継いだ油井一浩さん。一見も快く迎えてくれる気安さで、緊張する髙橋にも朗らかに話しかけてくれた。
お酒、おつまみ、握り3貫で¥7,700
「コースと違って一貫ずつ頼むのは初めて。経験値が上がった気がします」と髙橋はすっかり町鮨が気に入った様子。
「またひとりで来ます!」と自信をつけたのであった。
■店舗概要
店名:㐂寿司
住所:中央区日本橋人形町2-7-13
TEL:03-3666-1682
営業時間:【月~金】ランチ 11:45~14:30
ディナー 17:00~21:30
【土】ランチ 11:45~14:30
ディナー 17:00~21:00
定休日:日曜、祝日、木曜不定休
席数:カウンター12席、テーブル4席、座敷26席
◆粋な流儀を学んだあとは短期集中で修業を!若き“ツウ”になるべく1週間町鮨生活を決行!
2.【月】奥渋に潜む名店で江戸前の流儀を学ぶ 『鮨泉』
裏渋谷通りに1979年からある『鮨泉』。
鮨を注文する前に、お通しと、親方オススメのつまみが2~4品ほど出てくるスタイル。
この日は「サワラのみぞれポン酢」(¥1,500~)などでもてなされました。
親方の越後谷勝義さんに「鮨が2貫で出てくる理由」や「赤酢の歴史」といった鮨に関する豆知識を教えてもらいながら、「づけ」(¥800~)をはじめ握りを堪能!
軽く1~2杯とつまみ、握りを食べてひとり1万円前後。仕事を頑張った日のご褒美に行きたいです。
3.【火】外国人ゲストも多い浅草でサービス精神に感涙! 『すし屋の野八』
副編集長のオススメで伺った『すし屋の野八』では、名物の「一粒鮨」(会計¥5,000以上の際にサービス)に驚く。
親方いわく「小さいぞ!馬鹿野郎」と客から突っ込まれることが会話のフックになるそう。
茶目っ気たっぷりな親方の池野弘礼さん。その日のネタ紹介とともに更新される「浅草 江戸前寿司 すし屋の野八2代目のブログ」も必見。
「客が板前を、板前が客を育てるのが町鮨の魅力」という親方の言葉に、町鮨の真髄を見ました!
4.【水】港区の中心で人情だらけの町鮨に出合った 『笄鮨』
開店から一番乗りしてひとりで緊張していた私に「うちは敷居の低い店なんで(笑)」と話しかけてくれた『笄鮨』の大将の轡田一男さん。
笑顔がとってもチャーミングで、お客さんの「大将のファンが多い」という言葉も頷けます。
おまかせで握ってもらった「アジの握り」(¥600~)は、生姜がいいアクセントに。
四方の距離が近い店内は、離れた席でも会話が飛び交う楽しい空間でした。
5.【木】学大の住宅街で地元民に愛される名店にほっこり 『すし屋の芳勘』
「親子三代で通ってくれる常連さまも多いです」と、2代目の服部博充さん。
仕事帰りの会社員から家族連れまで客層は幅広いそう。
この日は、個室客の要望があって、バースデープレートが登場。
町の鮨店でここまでしてくれるの!と驚きつつ、長年学大で人気な理由を垣間見た気がします。
■店舗概要
店名:すし屋の芳勘
住所:目黒区鷹番3-16-19 サザンパレス服部 1F
TEL:03-3793-6261
営業時間:【火・木・金】17:00~22:30
【土・日・月】ランチ 12:00~14:00
ディナー 17:00~22:30
定休日:水曜、隔週火曜
席数:カウンター14席、テーブル8席、個室1(6席)
6.【金】“ザギンでシースー”にビビりつつ大人の階段を上る 『すし屋の勘六』
45歳になる親方の古里崇志さんと着物がよく似合う女将のコンビ(18年目!)のあうんの呼吸が見ものです。
「サクッと鮨を食べて帰る人を見ると粋に思います」と『すし屋の勘六』の親方。
この日は「焼きたけのこ」(¥400)や「カマスの塩焼き」(¥600)、女将が「世界一」と言う「トロたく」(¥2,000~)などを堪能。
「八海山」(1合¥1,000~)と合わせてほっこり。
深夜2時まで営業していて、滞在中、界隈の飲み屋から「ちらし寿司」の注文が多数あって、銀座って凄い……感激です。
町鮨生活を続けた結果……“ひとり町鮨”の虜に!
修業を通して、町鮨は若者がひとりで行っても温かく迎え入れてくれる、居心地の良い空間ということを確認!
職人さんたちの手仕事を見ていると、自身も仕事を頑張らなきゃと背筋を正したり、たまたま隣に座ったお客さんと会話するなんて偶然の出会いがあったりと刺激だらけ。
ちょっと鮨をつまみたいとき、一杯飲みたい気分の時のお店の候補に町鮨が挙がるようになりました!
【「町鮨」ってこういう場所】
☑基本「おこのみ」、ちょっと一杯もアリで自由
コースの鮨が続々と増えているけれど、町鮨は好きなものを好きなだけ注文できるスタイル。握り数貫をアテに一杯が許される。
☑お決まりは¥2,000前後~。お財布に優しい
握り6~8貫や、握り数貫と軍艦などの“お決まり”なら、板前が握った鮨をリーズナブルに楽しむことができる。
☑地元密着、大人の日常に寄り添う憩いの場
親子何代かで継いでいる店も多く、地域に根強く残る町の鮨店。昔からのなじみの客も多く、スタッフや客同士の距離感が近い。
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