名だたる老舗アウトドアメーカーが集う新潟県燕・三条エリア。
金属洋食器の町として発展し、その技術がアウトドアギアに活かされているといわれる。
その歴史と技術力が一目でわかる「燕市産業史料館」を訪れてみた。
燕市産業史料館
新潟県燕市大曲4330-1
0256-63-7666
入館料:大人400円、小・中学生と高校生100円
休館日:月曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始
江戸時代から現代まで続く燕の産業に焦点を当てた史料館。
貴重な資料やコレクションはもちろん、世界に誇る金属加工の町をアピールする”鏡面仕上げのクルマ”や”ギネス認定・世界最大のスプーン&フォーク”は必見だ。
ものづくり体験もリーズナブルでいい経験になる。
鏡面仕上げのスバルR1なども展示されている。
燕市周辺は「ものづくりのまち」
燕市周辺は古くから金属洋食器など「ものづくりのまち」と知られている。
日本最長の河川、信濃川沿いに広がるこのエリアは豊かな水が人の暮らしを支えてきたが、半面、洪水による被害も多かった。そのため、江戸時代になると農民の副業として和釘製造が奨励されたという。
「燕市産業史料館」では地域のものづくりの歴史が詳しく紹介されていて、古の技術が新しい製品開発の礎となっていると気づかされる。
アウトドア分野でも食器や調理器具、ペグ、そして、焚き火台といった金属製品はこの地域の技術があってこそ輝く。
「金属洋食器の町」となったのは
和釘作りから鍛造技術が発展。さらに鎚起銅器やキセルが一大産業になり、カトラリー作りへと。
近年のノーベル賞晩餐会のカトラリー開発、世界初のチタン製真空二重タンブラーも燕から。
彫金や鎚起銅器の作業場を復元
「燕市産業史料館」では燕エリアの発展に大いに役立った彫金や鎚起銅器、そして鍛金と彫金の技術が一体となって発展したキセル作りの作業場が復元されている。
使われてきた道具の機能美にも注目したい。
1枚の銅板がヤカンに
近くの間瀬銅山より良質な銅が取れるようになり発展した鎚起銅器。
1.2mmの銅板を木槌や金槌でたたき、のばしたり絞ったりして注ぎ口まで作り上げていたというからあっぱれ!
金槌を使って叩き、成形する手法は後の金属洋食器作りに役だった。
ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクール受賞作の展示も
1977年度スタートの由緒あるコンクール受賞作がずらり。
中には新越ワークスと法政大学による「まいカップ」やartisan933の「Orii Colurmagic Brass Cup 320」もある。
昭和初期のカトラリー
ノーベル賞受賞者晩餐会で使われるスプーンも展示されている。
写真は1936年に東京・銀座松坂屋に納入されたカトラリーセットで、この頃から海外でも評価が高まったそう。
スプーンの色付けをプチ体験
①陽極にチタンをつなぐ
チタン製スプーンを陽極につなぐ。
手持ちのチタン製品を色づけしたいという問い合わせは多いそうだが、製品の表面処理が異なるのでうまくできないそう。残念!
②酸溶液に漬けて電流を流す
スプーンを酸性の溶液に漬ける。電気を流した溶液に漬かっている時間によって色が決まる。
目当ての色になるよう練習するが、グラデーションは一定の速度を保つのが難しい。
③徐々に色が変わっていく
金属っぽい色から水色、黄色へ…と1秒ごとに色が変わっていく。
一定速度なら滑らかなグラデーションになるが、遅すぎると線のようになってしまう。その加減が難しい。
④皮膜が厚くなると見える色が異なる
皮膜は透明だが、光が当たると特定の色が強調される。
シャボン玉の虹色と同じ原理で、時間とともに皮膜が厚くなると見える色が異なるのだ。
出典/ガルビィ2024年10月号