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「保険なんて騙されてる」と言う彼が、洗濯機の水漏れで「保険は使わない。俺が払う」

  • 2026.11.5
ハウコレ

テーブルに広げた書類に、私は1枚ずつ名前を書き込んでいました。毎年更新している、この部屋の保険の書類です。向かいでそれを眺めていた彼が、ため息まじりに口を開きました。

書類を見た彼の口ぐせ

「保険なんて騙されてる」
彼は書類から目をそらして、そう言いました。
私が1人で借りていたこの部屋に、彼が越してきて1年になります。
保険の話になると、彼はいつもこの言葉で片付けてしまうのです。
「何かあったときのためだよ」と言っても、「何もないから払うだけ損」と取り合いません。
書類の束を、彼は指先で少し向こうへ押しやりました。
自分のお金で払っているものを、そんなふうに言われるのは気分のいいものではありませんでした。
それ以上は言い返さず、私は書類を封筒に入れてポストに出しました。

仕事中の電話

更新から1か月ほどたった日、仕事中に彼から電話がかかってきました。
「ごめん、洗濯機の水が下の部屋まで漏れた」
在宅勤務の彼が回した洗濯機の、給水ホースが外れていたそうです。
急いで帰ると、洗面所の床は彼が拭いたあとでも、まだ濡れて光っていました。
少しして、下の階の住人の方がインターホンを鳴らします。
「天井にしみができてしまって」
彼は何度も頭を下げて、修理費は必ず払いますと約束しました。
その横顔は、これまで見たことがないほど硬いものでした。
住人の方が帰ったあと、彼は寝室へ行き、引き出しを開けたのです。

引き出しから出したもの

「部屋の保険、入ってるから」
私が声をかけると、彼は振り向かずに首を横に振りました。
「保険は使わない。俺が払う」
戻ってきた彼の手にあったのは、見たことのない通帳でした。
彼はテーブルの上で通帳を開き、私のほうへ向けます。
「これで足りるはずだから」
並んでいた数字は、私が思っていたよりずっと大きなものでした。
彼が自分の貯金の話をしたことは、これまで一度もありません。
外食のたびに安いほうの店を選ぶ人だと、私は思っていたのです。

そして...

彼は通帳を閉じて、自分の鞄の内ポケットに入れました。
「明日、下ろしてくる」
私は保険の書類の控えを出して、テーブルの上に置きました。
彼はそれを一度も見ないまま、洗面所の床をもう一度拭きに行きます。
次の日、出かけようとする彼の前に、私は控えを持って立ちました。
「1回だけ、電話させて」
保険会社の担当者によると、下の階の修理費も補償の対象になるそうです。電話を切って「だから言ったでしょ」と言うと、彼は私に頭を下げました。
どうしてそこまで、私の保険を使いたくなかったのか。
あの通帳のお金は、本当は何のためのものだったのでしょうか。

(30代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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