1. トップ
  2. エピソード
  3. 彼女の「おやすみ」を既読のまま朝まで返せなかった俺→改札で別れた夜、ベランダで書いたノートの数行

彼女の「おやすみ」を既読のまま朝まで返せなかった俺→改札で別れた夜、ベランダで書いたノートの数行

  • 2026.11.5
ハウコレ

「ちゃんと好きって言ってほしかっただけなの」。その言葉に返す文章を、スマホの画面の上では、どうしても作れませんでした。だから俺は、部屋の引き出しを開けたのです。
ベランダの手すりの前で、俺はノートを1冊広げました。付き合って2年になる彼女のメッセージを読んでから、まだ一言も返事を送れていません。手にしたボールペンは、インクが少しかすれていました。

言葉が苦手

昔から、気持ちを言葉にするのが苦手でした。特に「好き」という言葉は、口に出そうとすると照れくさくて、つい笑ってごまかしてしまう癖がありました。
帰り道に「最近、全然好きって言ってくれないよね」と言われたときも、そうでした。困ったように笑うことしかできないまま、改札で彼女と別れてしまいました。
改札で彼女に背を向けてからも、どうしてあそこで一言返せなかったのかと、駅のホームでずっと考えていました。

打っては消した返事

家に着いてしばらくすると、彼女からメッセージが届きました。
「今日はごめんね。言いすぎた。でも、ちゃんと好きって言ってほしかっただけなの。おやすみ」
すぐに開いて、返事を打ち始めました。けれど「俺も好きだよ」と打つと軽すぎる気がして、長く書こうとすると言い訳のようになりました。
画面の中で文章を作っては消すうちに、1時間がたっていました。適当な言葉を送るくらいなら、ちゃんと書きたい。俺は引き出しから、1冊のノートを取り出しました。
付き合い始めてから、口で言えなかったことを書きためてきたノートです。彼女の笑い方、待ち合わせで手を振る姿。2年分の、言いそびれた「好き」が並んでいました。

ベランダで書いた数行

部屋の中にいると、どうしても考えがまとまりませんでした。ノートを抱えてベランダに出ると、外の空気が少し頭を冷やしてくれました。
書いては線で消し、また書く。新しいページは消した跡だらけになり、残ったのはほんの数行です。
うまく言えないから書く
2年分の好きは、このノートにある
怒った顔も好きだと思った
明日も君におやすみを言いたい
書き終えて顔を上げると、空はすっかり明るくなっていました。俺はそのページを写真に撮り、そのまま彼女に送りました。

そして...

送ってから、彼女をひと晩待たせていたことの重さに、ようやく思い至りました。彼女がどんな気持ちで待っていたのか、そのときになってやっと想像したのです。
しばらくして、彼女から短いメッセージが届きました。
「ずるい。眠れなかったんだからね」
少しして、もう一通届きました。
「おやすみって、今言われても困るんだけど」
画面を見て、俺は笑ってしまいました。あの夜に返せなかった「おやすみ」は、ひと晩かけて、彼女に届けたノートの最後の一行になっていたのです。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ