1. トップ
  2. 人と接することが苦手な夫が会社を辞めて専業主夫に。悩みつつも少しずつ変わっていく家族を描いた、心温まる物語【書評】

人と接することが苦手な夫が会社を辞めて専業主夫に。悩みつつも少しずつ変わっていく家族を描いた、心温まる物語【書評】

  • 2026.10.13

【漫画】本編を読む

ある日突然、家族の大黒柱の夫が会社へ行けなくなったら生活はどのように変わるのだろうか。『夫ですが会社辞めました』(とげとげ。/KADOKAWA)は、会社を辞めて専業主夫になった夫を中心に、自分たちらしい暮らしを模索していく家族の姿を描いた作品だ。

主人公の川田俊は人づきあいが苦手で、仕事も人と同じようにできないこと思い悩み、ある日突然会社に行けなくなる。そして3カ月間、その事実を妻の沙月に隠していた。限界状態の俊を見かねた沙月は、自然豊かな葉山への引っ越しを提案する。俊は家事と4歳の息子・カズの育児を担う専業主夫となり、都内のアパレル会社に勤めている沙月は片道2時間かけて通勤する生活が始まる。

しかし、新しい環境になっても悩みは尽きない。俊は慣れない家事や育児に戸惑い、沙月は大黒柱として家計を一手に担うことになり、それぞれの負担は想像していたより重かった。そして役割が入れ替わったことで夫婦のすれ違いも生まれてしまうのだった。また、カズが通う幼稚園で俊が出会う保護者たちもそれぞれに悩みを抱えている姿が描かれる。問題行動を起こす娘と孤立する母親、正論ばかりで周囲から浮いてしまう父親など、どの家庭にもモヤモヤが存在していた。

しかし、人間関係や家庭の問題といったテーマを扱いながらも、作品全体の空気は決して息苦しくはない。葉山の穏やかな風景や無邪気な子どもたちの様子、苦手ながらも少しずつ作り上げていく人とのつながりなどによって、俊をはじめとした登場人物たちの表情が次第に変わっていくのである。昨日よりも少しだけでも前へ進もうとする人々の等身大の姿に心が温かくなる。

仕事、育児、夫婦関係、人づきあいに正解はない。それぞれの家族が自分たちなりの暮らしを模索していく様子を見ていると、世間の目を気にして「こうあるべき」と思う気持ちを軽くしてくれるだろう。我が家らしい幸せの形というものを、あらためて考えさせてくれる作品だ。

文=坪谷佳保

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ