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首相も「好きなタレント」に挙げた【連ドラの女王】17年前、“1万キロ”の遠距離恋愛を実らせた美人女優

  • 2026.10.25
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2009年10月、第1回きものコーディネイト大賞の表彰式に出席した常盤貴子(C)SANKEI

17年前の2009年10月20日、大安吉日の午前中に、都内の区役所へ1枚の婚姻届が提出された。

女優の常盤貴子と、劇作家・演出家・俳優として活躍していた長塚圭史の結婚だった。夕方、所属事務所からマスコミ各社へファクスが送られた。挙式・披露宴は未定とされた。

ファクスには2人の連名で、実に晴れ晴れしく、頼もしい気持ちでいっぱいだとつづられていた。そのうえで、これからは2人で魂をしっかりと結び、「ゆっくりじっくりと歩んで参ります」と結ばれている。人生の新たな門出にふさわしい、穏やかで地に足のついた言葉だ。

だが、当時の常盤の足跡を振り返ってみると、この「ゆっくり」というフレーズは、彼女の置かれていた状況とはおよそ正反対の場所にあったように思える。

大河と大作映画が重なった怒涛の2009年

『愛していると言ってくれ』や『ビューティフルライフ』などで「連ドラの女王」の異名をとり、当時の鳩山由紀夫首相が公式プロフィルで「好きなタレント」に挙げるほど、多くのファンを持っていた常盤。

そんな彼女のNHK大河ドラマ『天地人』への出演が発表されたのは、結婚前年となる2008年6月のことだった。演じるのは、妻夫木聡扮する主人公・直江兼続の妻でヒロインのお船(おせん)。出演者発表の会見では、年下の夫を支える役どころについて、普通に「妻夫木くん、頑張って」と思う気持ちで臨んで大丈夫かな、と大人の色気たっぷりに報告していた。

その年の秋から始まった長期撮影は、1年がかりのものだった。年が明けて2009年に放送が始まると、『天地人』は初回から高い視聴率を記録した。さらにこの年は、ユキジ役を務めた映画『20世紀少年』3部作の「第2章」が1月に、「最終章」が8月に相次いで公開された。

極めつけは、結婚発表のわずか10日前、10月10日に初日を迎えた主演映画『引き出しの中のラブレター』だ。常盤が演じたのは、父親と仲たがいしたまま死別してしまったラジオパーソナリティ。東京・丸の内ピカデリーで行われた舞台挨拶で、彼女は地球防衛軍も出てこない、すごく地味な映画だと前置きしつつ、同じ松竹配給の映画『おくりびと』が世界で認められたことで勇気を持てたと、思い入れたっぷりに語っていた。

この舞台挨拶では、共演の林遣都、フットボールアワーの岩尾望、そして三城真一監督が、映画にちなんだサプライズのラブレターを用意していた。共演者と監督からの手紙を贈られ、常盤は目にうっすらと涙を浮かべた。手紙を書いた時間や手間、思いが伝わってきて本当に泣きそうだと言い、「私もこれから手紙を大切に書いていきたい」と感激していた。

東京とロンドン1万キロの遠距離恋愛を越えて

仕事に追われる日々の中で、2人の関係もまた大きな局面を迎えていた。

出会いは2003年の映画『ゲロッパ!』での初共演にさかのぼる。もともと舞台好きだった常盤が、演劇集団「阿佐ヶ谷スパイダース」を主宰する長塚と意気投合し、交際へと発展した。

だが、2008年の秋、2人に大きな転機が訪れる。常盤が『天地人』の長期撮影に入ったのと時を同じくして、長塚が文化庁の派遣制度でイギリスへ演劇留学に旅立ったのだ。東京とロンドン、およそ1万キロもの距離を隔てた遠距離恋愛だった。

それでも常盤は、大河のヒロインの撮影を抱えながら、多忙なスケジュールを縫って何度かロンドンへ足を運び、長塚を支えたという。会えない時間の長かったその1年を知ると、あの結婚コメントにあった「ゆっくりじっくり」という言葉の手触りが、ぐっと色濃く、切実なものとして響いてくる。

長塚が留学を終えて帰国したのは、発表の前月となる9月末だった。父で俳優の長塚京三をはじめ、双方の親族への挨拶を済ませ、2人はすでに新婚生活をスタートさせていた。もっとも、長塚には12月から凱旋公演『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』の稽古が控えていた。

それぞれの道からやがて同じ舞台へ

結婚後も、2人はそれぞれの表現の場で挑戦を続けていく。

2010年3月、テレビ朝日系のスペシャルドラマ『お母さんの最後の一日』で、常盤が結婚後初のドラマ主演を務めることが明らかになった。脚本を手がけたのは、『愛していると言ってくれ』『ビューティフルライフ』の北川悦吏子。10年ぶりとなる名手との再タッグに、常盤は喜びをあらわにし、北川の脚本で育てていただいたところもあるので「自分の中にそのリズムが染み付いているんです」とコメントした。

一方の長塚も、帰国後初の翻訳劇として、ロンドン留学中に出会ったイギリスの戯曲『ハーパー・リーガン』を同じ年の9月にパルコ劇場で演出した。

結婚から10年以上の歳月が流れた2021年には、2人が舞台『王将』三部作で同じ板の上に立った。KAAT神奈川芸術劇場での上演で、長塚が構成台本・演出・出演を務め、常盤が主人公・坂田三吉の女房、小春を演じた。長塚はこの年に同劇場の芸術監督に就任し、2026年度には2期目を迎えている。

11年越しで育む京都の暮らしと丁寧な時間

話は少しさかのぼる。結婚から5年あまりが過ぎた2015年1月、常盤の女優人生にとってかけがえのない作品が幕を開けた。NHKのドラマ&ドキュメンタリー『京都人の密かな愉しみ』だ。

彼女が演じたのは、老舗和菓子屋の「京都人の中の京都人」、沢藤三八子。京都人の価値観や美意識を描いてきたこのシリーズは、形を変えながら続き、2026年1月には第3シリーズ『京都人の密かな愉しみ Rouge 継承』として再び帰ってきた。

出演に際し、常盤はこのシリーズを「私にとって特別なドラマです」とコメントしている。京都人の他者を慮る考え方や丁寧な暮らしぶり、四季を感じる心が大変勉強になったとも書いている。2025年春からは、NHK Eテレの『おとな時間研究所』で司会も務める。油の使い方や銭湯、宿坊への旅といった日々の営みに光を当て、大人の豊かな時間の過ごし方を、2026年10月の今も届けている。

かつて映画『引き出しの中のラブレター』の初日、共演者と監督がしたためた手紙を前に、常盤は涙を浮かべた。誰かのために時間をかけ、手間を惜しまず、思いを込めることの温かさと尊さに触れたときの涙だった。

京都の街に息づく丁寧な暮らしを演じ、日々の豊かな過ごし方を穏やかに届ける今の彼女を見ていると、あの日の涙と、17年前に2人が交わした「ゆっくりじっくり」という誓いが、確かな一本の線で結ばれているように思う。


※記事は執筆時点の情報です

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