1. トップ
  2. エンタメ
  3. 東京の大学に“全落ち”→粗大ゴミで家を作った大学生から【国民的俳優】へ…『深夜番組』でつかんだ道

東京の大学に“全落ち”→粗大ゴミで家を作った大学生から【国民的俳優】へ…『深夜番組』でつかんだ道

  • 2026.11.5
undefined
大泉洋-2005年1月撮影(C)SANKEI

30年前の1996年11月、北海道テレビ(HTB)の深夜番組『水曜どうでしょう』で、ある奇妙な企画が放送された。

タイトルは「粗大ゴミで家を作ろう」だ。札幌市内に出された粗大ゴミを拾い集めて、自分たちの手で家を作ってしまおうという、今では考えられないほど無謀で泥臭い企画である。

画面に映るのは、地元のタレント・鈴井貴之と、札幌の大学に通う学生、大泉洋のふたりだけ。撮影もディレクターが自ら家庭用のビデオカメラで担うという、手作り感あふれる超ローカル番組だった。

今や全国の連続ドラマや映画で主演を重ねる大泉洋。だが、そんな彼にも、札幌の街で粗大ゴミを拾って回る、しがない大学生の時代があった。そしてこの大学生は、テレビに出ながら、学校の先生になる道も考えていた。

東京の大学に全部落ちて

そもそも大泉が札幌の大学に通っていたのは、決して望んだ結果ではなかった。東京の大学を目指して2年間浪人したものの、受験した東京の大学はすべて不合格だった。受かったのは、地元・北海道の大学だけだった。

2年間机に向かった末の全滅。すっかり気力を失った大泉は自室にこもり、ただただ涙に暮れる日々を送った。のちにテレビ番組でこのころを振り返った大泉は、当時の自分に呆れていた。

だが、入学した北海学園大学の演劇研究会で、思わぬ出会いが待っていた。そこで出会ったのが、安田顕や戸次重幸ら、のちにTEAM NACSを結成するかけがえのない仲間たちだった。

その舞台を見た鈴井の劇団の団員に推され、大泉は1995年、大学在学中にHTBの深夜番組『モザイクな夜V3』のレポーターに抜擢される。そして翌年、『水曜どうでしょう』がスタートする。

もし、東京の大学にひとつでも受かっていたら、札幌の路上で粗大ゴミを拾い集める大学生・大泉洋はいなかったはずだ。本人も2021年のトーク番組で、あの不合格がなければテレビにもNACSにもたどり着いていないと語り、大事だったのはそこで投げやりにならなかったことだと振り返っている。

1分の自己アピールが前置きで終わった日

テレビの仕事は面白かった。ただ、大学4年のころは銀行さえ破綻する時代で、会社勤めには魅力を感じられなかった。教員の免許を持っていた大泉は、勉強して先生になるのもいいと考え、実際に教員採用試験も受けている。

自信はあった。喋りにかけては誰にも負けないという自負もある。待っていたのは、集団面接での1分間の自己アピールだった。

大泉が入念に練り上げた筋書きはこうだ。2浪して行きたくなかった大学に入ったが、そこで演劇に出会い、テレビや舞台の楽しさを知った。回り道にも意味があったことを、子どもたちに伝えたい。

教育者として、これ以上ない説得力を持つエピソードのはずだった。ところが、本番で事件は起きる。

大泉の自己アピールは、受験に落ちてふさぎ込んだという前置きのところで、無情にも1分を使い切ってしまったのだ。一番伝えたかったはずのその先の話にたどり着かないまま、試験官たちからは苦労をねぎらわれただけで、面接は終わった。

のちにテレビ番組でこの話を披露した大泉は、自分の話には5分くらい要ったと笑っていた。お堅い採用試験の場は、彼の長すぎる前置きを待ってはくれなかった。

けれど、そのころ大泉がすでに出ていた深夜番組は、旅先のドタバタと、とりとめのない緩い会話で人気を集めていく。1分間には収まらない彼のおしゃべりは、テレビの上ではむしろ武器になったと思う。

23年後にもう一度建てた家

2019年から翌年にかけて放送された「北海道で家、建てます」では、番組が北海道赤平市の森の中に「レイクサイドリゾート 水曜どうでしょうハウス」を建てた。番組で家を建てるのは、1996年の粗大ゴミの家以来、実に23年ぶりのことだった。3年あまりに及ぶ撮影の途中には、積雪で一度崩れるアクシデントにも見舞われたが、家は完成にこぎつけた。

そして番組開始から30年の節目となった2026年9月、札幌ドームで開かれた「水曜どうでしょう祭UNITE2026」には、全国から3日間で延べ約4万人ものファンが集まった。

大泉はHTBの役員らが担ぐ御輿に乗って登場し、最終日には鈴井とともに山車に乗ってアリーナを回った。札幌の街で粗大ゴミを拾っていた無名の大学生が、30年後、テレビ局の役員たちに御輿で担がれている。

会場では、2026年春にロケを終えた最新作が先行上映された。大泉自身が「最高傑作になるかもしれないね」と口にした新作は、2027年春ごろにHTBで地上波初放送され、その直後にはNetflixで世界に配信される予定だ。

教員採用試験の1分間では、大泉洋の話は前置きの挫折だけで時間切れになった。北海道の深夜で始まったその長い前置きと終わらない無駄話を、彼は30年たった今も、気心の知れた同じ顔ぶれとしゃべり続けている。


※記事は執筆時点の情報です

の記事をもっとみる

注目コンテンツ