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教習官「赤信号でしたよ!」70代男性が苦笑いで放った“ひと言”に「講習でときどき見られる光景」

  • 2026.10.28
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

70歳以上の方は、免許更新の前に高齢者講習を受けます。受講者の多くは、長年ハンドルを握ってきたベテランドライバーの方々です。それでもコースを走っていると、思わずハッとさせられる定番の場所や場面がいくつかあります。その一つが、信号機や標識の見落としです。

今回は、講習の現場で実際にあったエピソードをご紹介しましょう。

交差点の手前で赤信号に気づかず

ある日の講習で担当したのは、70代のAさんです。発進や右左折もスムーズで、落ち着いた運転ぶりでした。

ところが、コース内の交差点に差し掛かったとき、前方の信号は赤。Aさんの車は減速する気配がありません。私はとっさに、助手席の補助ブレーキ(指導員用のブレーキ)を踏んだのです。

「どこにありましたか?」という驚きの返事

停止線の手前で車を止め、「赤信号でしたよ!」と伝えました。Aさんは「えっ、どこにありましたか?」と驚いた様子です。信号機を指し示すと、苦笑いを浮かべながらひと言。

「信号なんてありました…?まったく見えていませんでした…」

走行後に話をうかがうと、Aさんはこう振り返ります。

「いつも走る道とは景色や配置が全然違ううえに、次に曲がるところに意識が集中してしまって。信号に注意できませんでした」

信号や「止まれ」の標識を見落とすのは、Aさんに限らず、講習でときどき見られる光景です。

教習所のコースは景色も配置も独特

教習所のコースは、一般道とは環境が大きく異なります。周りに商店や住宅はなく、限られた敷地に多数の交差点が所狭しと並んでいます。クランクやS字などの狭路コースと、主要道路にあたる幹線コースが入り組み、交差点同士の間隔も短め。そんな見慣れない景色の中に信号機や標識が立つ、独特のつくりです。

私たちは普段、「この辺りに信号があるはず」と経験から予測しながら運転しています。ところが慣れない場所では、その予測が働きにくくなるのです。信号や標識が景色に溶け込み、「注意すべきもの」として認識されにくくなります。

緊張が視野を狭めるトンネル視野

もう一つ影響するのが、講習という場での緊張です。人は緊張したり焦ったりすると、視線が前方の一点に集中しやすくなるといわれています。

トンネルの中から外をのぞいたように、見える範囲が狭くなる状態が「トンネル視野」です。

トンネル視野に陥ると、視界の端にある情報が頭に入りにくくなります。目には映っていても、信号や標識、左右から来る車や歩行者を認識できないことも。Aさんが目の前の信号に気づかなかったのも、これにあたると考えられます。

もし公道で起きていたら…

今回は講習のコースだったので、補助ブレーキで止まることができました。もし同じことが公道で起きていたら、どうなっていたでしょうか?

工事で車線が変わっている区間や、初めて走るバイパス、旅行先の観光地。こうした「いつもと違う道」では、誰でも緊張や焦りを感じやすいものです。走り慣れた道路でも、スピードが上がると視野は狭くなり、トンネル視野に陥りやすくなります。

そうなると、横断中の歩行者や飛び出してきた自転車に気づくのが遅れ、重大な事故につながるおそれもあるでしょう。年齢に関係なく、どのドライバーにも起こり得ます。

見落としを防ぐために意識したい3つのこと

見落としを防ぐために以下の3つのことを特に意識してみてください。

「いつもと違う道」ほど目線を広げる

初めての道路や工事区間、夜間の運転では、前の車や手前の路面ばかりを見てしまいがちです。緊張を感じたときこそ、目線が下がっていないか注意が必要です。顔を上げて目線を水平に保つつもりで、遠くや左右へと視野を広げてみてください。

交差点の手前ではセットで確認する

交差点に近づいたら、「信号・標識・左右の歩行者」をセットで確認すると決めておきましょう。視点を動かすきっかけになり、交差点全体を点ではなく「面」で捉えやすくなります。

「見えているつもり」に頼らず首を動かす

疲れや焦りを感じているときは、視界の端の情報が入りにくくなります。目だけで確認したつもりにならず、首を振って交差点全体を見渡しましょう。このひと手間が、見落としを防ぐ確かな方法の一つです。

慣れない道こそ丁寧な確認を

講習の最後に、Aさんはこう話してくださいました。

「今度から知らない道を走るときはもちろん、いつもの道路ももっと周りを見るようにします」

長年の運転経験があっても、環境が変われば見落としは起こり得ます。大切なのは、「自分も見落とすかもしれない」と知っておくこと。いつもと違う道を走るときこそ、ひと呼吸おいて周りを広く見渡す運転を心がけたいものです。


ライター:ちだてつし
自動車教習所の指導員・技能検定員として、23年間にわたり現場で安全運転の指導・検定を担当。現在はその専門知識と現場での実務経験を活かし、安全運転やドライブテクニックに関するWebライターとして活動中。また、ペーパードライバーや外免切り替えの事業を展開し、運転に自信のないライダーを対象に、実践的なツーリングを通して運転技術を身につける「日本ツーリングサポート協会」を設立・運営。「安全で楽しいカー&バイクライフ」を伝える発信を行っている。日本二輪車普及安全協会の二輪安全運転指導員として活躍中。


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