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【精神科医が解説】依存?それとも夢中?子どもの「生活の支障」を見極める4つのポイント

  • 2026.9.25

SNSやゲーム、AIへの没頭は依存なのか単なる熱中か。生活に支障が出る境目について、精神科医であり臨床心理士・公認心理師でもある出雲いいじまクリニック院長の飯島慶郎先生に伺いました。「スマホ中毒」や「デジタル依存」の視点から、生活の異常事態を見抜く4つの判断基準に迫ります。

ママ広場

うちの子がゲームやSNSへ依存しているのではないか?診察室で、毎週のようにいただくご相談です。心配するお気持ちとともに、「自分の育て方が悪かったのではないか」とご自身を責めておられる親御さんも少なくありません。
何時間やっているかでは、依存かどうかは決まりません。
何かに夢中になることと、医学的な意味での依存は別のものです。この記事は、お子さんを採点するためのチェックリストではありません。時間の長さではなく、日々の暮らしのどこに目を向ければよいのか。家庭で見守るための大切なポイントを、ご一緒に確かめていきたいと思います。

医学でいう「依存」とは、どういう状態なのか

2019年、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類の第11版(ICD-11)に、「ゲーム行動症」が正式な病名として入りました。ギャンブルと同じ「行動の依存」の仲間に入っています1)2)。
その定義に含まれているのは、三つの特徴です1)。一つめは、ゲームを始める時間ややめる時間、どのくらいやるかを自分で決められなくなっていること。二つめは、食事や睡眠、学校、友だちや家族と過ごす時間よりも、ゲームを優先してしまうこと。そして三つめは、困った問題が起きているのにやめられないどころか、かえってゲームが増えてしまうことです。
しかも、この三つがあるだけでは依存とは診断されません。学校や家庭、友人関係など、生活の大事な部分にはっきりした支障が出ており、その状態が通常は12か月以上続いていることが条件とされています1)。
これらを見ていくと、WHOの基準には「1日に何時間なら依存」という数字がどこにもないことがわかります1)。
医学が基準にしているのは、時間の長さではありません。自分で止められるかどうか、そして生活の大事な部分に支障が出ていないかどうかです。また、期間の目安が12か月とされているのも大切です。夏休みに入って急にゲームが増えた、新しいゲームが出て今は夢中になっている、というような一時的な熱中は、定義の上でも依存ではありません。

ゲームをしている子どもの9割以上は依存ではない

ゲームをしている子どもの大半は、実は依存ではありません。WHO(世界保健機関)も、ゲーム行動症が起こるのはゲームをする人のごく一部だと述べています1)。世界17か国・53の研究をまとめた分析ではおよそ3%3)、日本で2019年に10歳から29歳を対象に行われた全国調査でも2)、5.1%(男性7.6%、女性2.5%)でした4)。調べ方で多少の幅はありますが、多くの研究で「数%」というあたりに落ち着きます。

一方で、こども家庭庁の2024年度の調査では、中学生が平日にインターネットを使う時間は平均およそ5時間、高校生では6時間を超えています5)。この二つを並べるだけでも、「何時間以上なら依存」と時間の長さだけで一律に区切ることの無理が見えてきます。もし時間を基準にしてしまえば、ごく平均的な中学生までもが依存に当てはまってしまうからです。

ドイツの中学3年生3万6千人あまりを調べた分析でも、依存の症状は白黒できれいに分かれるのではなく、グラデーションのように連続していました6)。この研究では、どこからを依存とするかの境界を設けるなら、学校に行けなくなるといった、日々の生活に現れた具体的な支障を手がかりにすべきだと指摘されています6)。アメリカ精神医学会の基準(DSM-5)にも研究用の細かい項目がありますが7)、時間ではなく生活の支障を見るという考え方の根底は同じです。

「ニュースなどでもっと高い数字を見たことがある」と思われるかもしれませんが、先ほどの数%はあくまでゲームに絞った調査のものです。SNSも含めたインターネット全体を調べるともう少し高い割合が出てきます(この男女差やSNSの数字については、後半で詳しくお話しします)。
そして、「大半は依存ではない」ということは、「見なくてよい」という意味ではありません。この記事を開いてくださったということは、何か気になることがおありなのだと思います。心配なお気持ちを無理に打ち消す必要はありません。ただ、目を向けるところを「時間の長さ」から「日々の生活に支障が出ていないか」へと、少し移してみてほしいのです。

「夢中になっている子」と「依存に近い子」は、何が違うのか

では、夢中になっている子と、依存に近い子は、何が違うのでしょうか。
実は研究の世界でも、「熱中」と「依存」は別のものとして測り分けられてきました。大人のゲーマーを調べた2007年の研究でも8)、フランス語圏の268人を調べた研究でも9)、熱中と依存にはつながりが見られるものの、統計の上では別のものとして分かれています。子ども向けの調査ではありませんが、この二つが別々に測れることを示した研究です。

もっと大きなデータもあります。29か国およそ15万5千人の思春期の子どもを対象にした、2017年から2018年のアンケート調査です10)。SNSを「たくさん使っている子」と「依存の症状がある子」を分けて調べました。結果は対照的でした。たくさん使っている子は、どの国でも「頼れる友だちがいる」と感じていて、生活の満足度もむしろ高いくらいでした。ところが依存の症状がある子は、どの国でも、心の状態、学校、家族、友人関係のどれをとっても、幸福度が低くなっていました10)。
これはSNSの研究ですが、ゲームでも見分けるポイントは同じだと私は考えています。「長く使っている」と「依存している」は別のものです。時間の長さそのものが害になるわけでもありません。35万人分のデータをまとめた研究では、使う時間が長いほど幸福度はわずかに下がるものの、その差は多くても0.4%と、ごく小さなものでした11)。ただし、「影響が小さいこと」と「何時間使っても大丈夫ということ」は違います。長い時間の裏で睡眠がおろそかになっているなら、それはもう時間の長短ではなく、日々の暮らしそのものが崩れているという別の問題です。

そうした生活の支障は、ある日突然やってくるものではありません。中国の12歳から18歳およそ6千人のアンケートでは、答え方から四つのグループに分かれました12)。健康なゲーマーが57%、「コントロールが効かない」だけの子が26%、生活の優先順位まで崩れた子が10%、依存と見なされる答え方の子が7%です。一時点の分類で、この順に進むと確かめたものではありませんが、「やめられない」だけの子では、まだ生活の優先順位までは崩れていないことがわかります。ここが見分けるときの手がかりです。そして優先順位が崩れる前にこそ、家庭でできることがあります(具体的な手立ては、後半で詳しくお話しします)。

家庭での様子に置き換えると、こうなります。
夢中になっている子は、ゲームの外にも楽しみがあり、決めた約束はだいたい守れ、ゲームの話を親にします。依存に近づいている子は、ゲームの外の楽しみが消え、約束が守れなくなり、ゲームのことを隠すようになります。ただし、親にゲームの話をしなくなるだけなら、思春期には珍しくありません。三つが同じ時期にそろって変わってきたかを見てください。頭の中がゲームのことでいっぱいになる、嫌なことがあるとそこへ逃げ込む、家族と衝突する、約束してもまた元に戻ってしまう——2005年に整理された、依存に共通する特徴にも、こうした振る舞いの変化が挙げられています13)。

時間ではなく、生活のどこに支障が出ているかを見る

では、具体的に日々の生活のどこを見ればよいのでしょうか。
10歳から29歳を対象にした日本の全国調査(5千人あまり・大人も含む)には、続きがあります2)。「意図していたより、しばしばゲーム時間が延びた」と答えた人は、1日1時間未満の層でも49.7%2)。つまり「ついつい延びる」は、時間が短い人にも同じように起こります。一方、減らしたい・やめたいといつも思っている、と答えた人の割合は、使用時間が長くなっても増えませんでした2)。時間が長い人ほど困っている、というわけではないのです。
では、時間とともに増えていったものは何か。それは、成績が下がること、朝起きられない日が年に30日以上あること、昼夜が逆転する日が年に30日以上あること、という「生活に出た結果」でした。1日6時間使う層では、それぞれ3割弱、4割弱、5割にのぼります2)。

日本のある地域の中学生853人を2014年に調べた別の研究でも、ネット全体の使い方に依存の傾向が強い子は、平日も休日も寝る時間が遅く、平日の睡眠時間が短くなっていました(休日は起きる時間も遅くなります)14)。一時点の調査なので、どちらが原因かまでは分かりません。
これらを踏まえて、家庭で見守っていただきたいポイントを四つに整理します。ドイツの研究が指摘する「生活に現れた具体的な支障」を、日々の暮らしの言葉に置き換えたものです6)。

一つめは、睡眠です。
寝る時間が遅くなっていないか、朝起きられているか、昼夜が逆転していないか。
二つめは、学校です。
遅刻や欠席が増えていないか、成績が下がっていないか。
三つめは、家族です。
決めた約束が守れているか、会話が続いているか、隠し事や暴言が増えていないか。
四つめは、ゲーム以外の楽しみです。
以前好きだったことへの興味が失われていないか。

ただし思春期には、依存とは関係なく好きなものが入れ替わります。習い事をやめた、部活を引退したというだけなら、心配いりません。気になるのは、空いた時間に何も入ってこず、すべてがスマホやゲームで埋め尽くされているときです。
ただ、ここで一つ心に留めておいていただきたいことがあります。この四つは、「四つとも当てはまらなければ安心、一つでもあれば依存」と白黒で採点するためのものではありません。もし崩れているところがあれば、そこから生活を立て直す手がかりにしてほしいのです。生活の支障はある日突然ではなく、少しずつ進んでいくものです。前の月と比べてどちらに向かっているか。その変化の向きこそが、見分けるためのいちばんの手がかりになります。

お仕事の時間帯によっては、お子さんが何時に寝ているか直接は見られないご家庭もあると思います。夜を見張る必要はありません。朝起きられているか。学校から連絡が来ていないか。休みの日に少し話ができるか、その会話にゲーム以外の話が出てくるか。私の経験では、これで四つとも見えます。見られない時間があることを、負い目に思われる必要はありません。
参考までに、依存が進んで受診に至った人たちの実態もご紹介しておきます。
ネット依存の専門外来を受診し、ゲーム行動症の診断の基準を満たした189人(大人も含む)の調査では、受診前の半年のうち半分以上の日に朝起きられなかった人が80.4%、昼夜が逆転していた人が62.4%、学校や仕事を休んでいた人が50.8%。成績や仕事のパフォーマンスの低下は56.6%、家族への暴力や暴言、物を壊す行動は54.5%でした15)。受診した人たちのデータで、いま記事を読んでくださっているご家庭のお子さんの話ではありませんが、依存が進むと生活のどこに支障が出てくるのかが、はっきりと示されています15)。
「ただ夢中になっているだけでも、生活に支障が出てきたら注意すべきか」というご質問をよくいただきます。私の答えは、「見るべきなのはゲームではなく、崩れ始めている日々の生活のほうです」というものです。ゲームを叱ってやめさせようとする前に、まずは崩れ始めている日々の暮らしを立て直す。そこが一番大切なところです。

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スマホやゲームを取り上げる前に、家庭でできる4つの関わり

なぜ、崩れ始めている生活のほうを見るべきなのか。それには、依存の成り立ちが深く関係しています。
依存は、意志が弱いから起こるのではありません。依存の成り立ちを説明する考え方(もともとは大人も含めた依存全般のものです)では、その行動を繰り返すうちに「やりたい」気持ちが強くなる一方で、「止める」力が追いつかなくなっていく、と説明されます。「やりたい」が「止める」を上回り続けるうちに、その行動は抜け出せない習慣として定着してしまうのです16)。

ヨーロッパ12地域の11歳から15歳およそ4万4千人を2021〜22年に調べた研究で、依存の症状として最も多かったのは、嫌なことから逃げるために使うこと(逃避)と、頭がそのことでいっぱいになること(とらわれ)でした17)。見るべきは時間の長さではなく、まず「逃げるために使っているか」だ——私はそう考えています。
そして、逃げたい気持ちの背景には、落ち込みや不安があることが少なくありません。子どもと若者を追跡した31の研究のまとめでも、気持ちの問題とネットの使い方のこじれは、多くの場合、互いに強め合っていました18)。

ここまで来ると、「取り上げる」ことの難しさが見えてきます。子どもにとってゲームがつらい現実からの逃げ場になっている場合、ゲームを取り上げるだけでは、心の逃げ場そのものを奪ってしまうことになるからです。
誤解のないようにお伝えします。制限をしてはいけない、という話ではありません。寝る時間になったら終わりにする、食事のあいだは手放す——生活を守るためのルールや枠組みは、設けてかまいません。避けたいのは二つだけです。罰として取り上げてしまうこと、そして代わりの居場所を用意しないまま、いきなりすべてを奪ってしまうことです。守るべき枠組みを整えることと、逃げ場ごと取り上げることとは、まったく別の話なのです。
では、家庭では具体的にどう関わっていけばよいのでしょうか。すべてを一度にやろうとする必要はありません。どれか一つ、できそうなことから始めてみてください。

一つめは、ゲームの背景にある「子どものつらさ」にまず目を向けることです。
学校、友だち、勉強、体調、家の中のこと。犯人探しではなく、手を貸せるところを探すためです。本人に「何がつらいの」と尋ねても、答えは返ってこないでしょう。見るのは、変わった時期のほうです。ゲームが増えたのはいつからか、その前後に何があったか。クラス替え、部活、テスト、体調を崩した時期。思い当たる出来事があれば、それが見当をつける手がかりになります。

二つめは、叱る前に、ゲームの中で何が楽しいのかを聞くことです。
話してくれるうちは、まだ見えている部分が多いということです。話しかけても返事がない、聞こうとすると怒られる、というご家庭も多いと思います。無理に聞き出さなくてかまいません。「何をしているの」ではなく「それ、面白そうだね」と、横で一度見せてもらうところから始め直してください。会話が減ったというだけでは、依存の証拠にはなりません。

三つめは、ルールを一緒に決めることです。
決めるのは「何時間まで」ではなく「何を守るか」。寝る時間、食事、宿題との順番です。すでにルールがあって守られなくなっているなら、罰を足すのではなく、ルールのほうを作り直してください。話し合いができなくても構いません。守れなかったものを親御さんのほうで見直し、守れる範囲まで小さくする。いくつも決めて全部が破られるより、寝る時間ひとつが守られるほうを選んでください。

四つめは、ゲーム以外の楽しみを、できる範囲で残しておくことです。
ここでいう楽しみは、勉強や運動といった「理想的な過ごし方」でなくても構いません。たとえばマンガを許容するなど、ゲームに比べて依存性の低い楽しみに、少しずつ目を向けさせていくのも現実的な工夫です。小学生なら親御さんが一緒に楽しめればいちばんですし、中高生なら親が一方的に押しつけるのではなく、本人が決めて親は相談相手に回るのが理想的です。ゲームの外にも居場所がある、とお子さんが感じられれば十分です。

最後に、親御さんご自身のことです。親のうつなどの気分の病気と子どものデジタル依存の関係を調べた19の研究のまとめでは、小さいながらも確かなつながりが見られます19)。どちらが先かまでは分かりません。これは「親のせい」という意味ではありません。疲れているときには、疲れるだけの事情があります。ただ、家の中に少しでも余裕があるほうが、子どもはゲームやネット以外の世界にも居場所を見つけやすい——私は診療のなかでそう感じています。だとすれば、親御さんご自身が休むことも、遠回りのようでいて、対策のうちです。
とはいえ、休んでくださいと言われて休める方は多くありません。ゲームに熱中している姿であれ、スマホを手放せずSNSのやりとりに気をとられている様子であれ、お子さんのことを考えない時間が、一日のどこかに少しでもあれば、それで十分です。ゲームの世界もSNSのつながりも、見守る親御さんにとっては同じように大きな心配事になります。眠れない、気分が晴れない日が続いているなら、お子さんより先に、親御さんご自身が相談に行っていただいてかまいません。

依存症の治療は、大人より思春期の子どものほうが効果が出やすい

睡眠、学校、家族、ゲーム以外の楽しみ。この四つのどこかが崩れたまま数か月が過ぎている。あるいは、日々の乱れが前より大きくなっている。そう感じられるなら、家庭だけで抱えないでください。当てはまる数ではなく、続いている長さを見てください。これは診断の基準ではなく、相談を考える目安です。診断には12か月という目安がありますが1)、相談はそれを待つ必要はありません。

まずお伝えしたいのは、適切な治療によって確かな改善が期待できるということです。ゲーム行動症の治療を調べた21の対照試験(のべ1,360人)を束ねた分析では、依存の症状もゲームの時間も減り、落ち込みや不安も改善しました。依存の症状とゲームの時間については、3か月後にも効果が続いていました20)。研究ごとのばらつきは大きく、長期の検討はまだ少ないものの、手を打てば変わる——その点ははっきりしています。さらに注目すべきなのは、治療の効果が大人よりも思春期の子どものほうが大きかったという事実です20)。

親が関わることにも根拠があります。中高生向けの教育プログラムを調べた6件の分析では、親が参加するプログラムでも、依存の傾向を減らす効果が見られました21)。
「本人が行きたがらないのですが」——私の外来では、これがいちばん多いご相談です。ご本人が行く気にならないうちは、まず親御さんだけで相談に行っていただいてかまいません。学校でも、精神保健福祉センターでも構いません22)。親が先に行っても、順番としておかしくありません。
治療には、考え方や行動の癖を整える認知行動療法や、家族で取り組む家族療法などがあり、効果は同じくらいと報告されています20)。薬については、依存そのものへの効果はまだ研究の途上です20)。

私の診療では、落ち込みや不安が重なっているときに、そちらへの治療として使うことがあります。
相談先は、近いところからで大丈夫です。私がまずお勧めするのは学校です。担任の先生、スクールカウンセラー、養護教諭は、お子さんの学校での様子をいちばんよくご存じです。朝起きられない、眠れないといった体の不調があるなら、かかりつけの小児科や内科でもかまいません。そのうえで、公の窓口として、各都道府県と政令指定都市の精神保健福祉センターに依存の相談窓口があります22)。ゲーム行動症を診療している医療機関でも、相談に応じているところがあります22)。

男子はゲーム、女子はSNSと向かう先が違う

「男女で依存の現れ方に違いはあるのか」という点についても、触れておきたいと思います。
ゲーム行動症に限れば、男の子に多いことは確かです。世界の研究を合わせると男性が女性のおよそ2.5倍3)、日本で10歳から29歳を対象に行われた全国調査でも、男性7.6%に対して女性2.5%でした4)。

ところが、ゲームに限らずインターネット全体の依存を見ると、様子が変わります。厚生労働省の研究班が2017年度に全国の中高生6万4千人を調べた調査では、依存が疑われる割合は、中学生で男子10.6%に対して女子14.3%、高校生で男子13.2%に対して女子18.9%と、女子のほうが高くなっていました23)。少し前の調査ですが、男女でどちらに多いかを見る手がかりにはなります。
何が違うのか。向かう先です。ブラジルの小児科外来の中高生180人の研究では、依存の重さに男女差は見られず、男子はゲーム、女子は友だちとのやりとりに多く使われていました24)。日本のある地域の中学生529人の調査でも、男子はゲーム機、女子はSNSでした25)。男の子はゲーム、女の子はSNS——ただしこれは傾向の話で、逆の子もふつうにいます。「うちは女の子だから」も「男の子だから」も、安心してよい理由にはなりません。

SNSについても、見分ける基準はゲームと変わりません。自分でコントロールできているか、睡眠や日々の生活より優先されていないか、という点です10)。思春期の子どもたちを調べた大規模な調査でも、使い方がコントロールできなくなって生活に影響が出ている子は4.5%に見られます26)。
女の子の場合、私が診察室で気をつけて聞くのは、友人関係への不安です。SNSでは、「見ていないと仲間外れにされるのではないか」という不安から、スマホを手放せなくなってしまう例をよく見ます。

お子さんがSNSに向かっている場合も、見方は同じです。「ゲームの中で何が楽しいか」は「誰とやりとりしているか」に、「ゲーム以外の楽しみ」は「日常の中で直接会える友だちがいるか」に置き換えてください。一つだけ違うのは、SNSの向こうには相手がいることです。取り上げれば、友だち関係ごと切れてしまうことがあります。時間を制限する前に、いま何が起きているのかを聞いてみてください。友だち関係のもつれが続いているなら、まず学校に声をかけるのが早道です。

最後に、2025年ごろから診察室で増えてきたご相談について触れておきたいと思います。
それは、会話ができるAIに、悩みを相談し続けているお子さんのことです。研究はまだこれからで、確かなことは言えません。ただ、見分け方はゲームやSNSと同じだと私は考えています。AIに悩みを話すこと自体は、悪いことではありません。人に言えないことを言葉にできている、とも言えます。見るべきなのは、相談できる相手がAIだけになっていないか、日々の暮らしに支障が出ていないかです。AIとのやり取りは外から見えにくいため、画面をのぞき込んで確かめたくなるかもしれません。しかし、中身を詮索するよりも、人に話をしなくなっていないか、睡眠が乱れていないかといった日々の様子を見てあげてください。そのほうが変化に気づきやすく、親子の信頼関係も壊さずにすむかもしれません。

おわりに

依存かどうかは、何時間やっているかでは決まりません。自分で止められるかどうか、日々の暮らしのほかの部分に支障が出ていないかで決まります。
何かに夢中になれるということは、その子の力です。睡眠、学校、家族、ゲーム以外の楽しみ。この四つは、点数をつけて合否を出す項目ではなく、時間の長短にとらわれる代わりに、目を向けていただきたい大切なポイントです。生活が大きく崩れていないなら、いまは慌てなくて大丈夫です。ただ、依存は「ある」「ない」にきれいに分かれるものではなく、グラデーションのように連続しています6)。嫌なことがあるたびにゲームやスマホへ逃げ込む様子が続くなら、少し注意深く見守ってあげてください。
そして、その状態が数か月続いているなら、それは家庭だけで抱える範囲を超えています。一人で判断しようとせず、学校やお住まいの地域の窓口など、どこかひとつ外に声をかけてみてください。子どものうちに相談できることには、意味があります。

参考文献
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※本記事の執筆にあたり、論文検索および構成の整理に生成AIを活用していますが、医療情報としての正確性は専門医が確認・監修しています。

執筆者

プロフィールイメージ
飯島慶郎
飯島慶郎

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック院長
精神科医・総合診療医・漢方医・臨床心理士

島根医科大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院第三内科、三重大学医学部付属病院総合診療科などを経て、2018年、不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニックを開院。
多くの不登校児童生徒を医療の面から支えている。島根大学医学部精神科教室にも所属。
著書:『不登校は病気? ~医師の診断が子供と家族を救う~』(みらいパブリッシング、2025年)他

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック

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