1. トップ
  2. 暮らし
  3. 「待てませんでした…」紅葉の山奥でパンクした20代男性→無理やり帰って告げられた“思わぬ事実”

「待てませんでした…」紅葉の山奥でパンクした20代男性→無理やり帰って告げられた“思わぬ事実”

  • 2026.10.18
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

「パンクから広がった損傷なので、車両保険でなんとかなりますよね」

タイヤのパンクは、車のトラブルの中でも身近なもののひとつです。もしパンクがきっかけで車の別の部分まで損害が広がってしまったら、車両保険の対象になるのでしょうか。

これは、損害保険会社の担当者として勤務していた私が受けた、山奥でパンクした契約者の相談に関するお話です。

山奥の道で起きたパンク

Aさん(20代・男性)から電話があったのは、紅葉が色づき始めたころのことでした。

私は以前に、別の事故でAさんの担当となり案件を解決していました。その経緯もあり、Aさんは「相談したいことがある」として、私に連絡をくれたのです。

「今回は事故ではないんです」

そう前置きをして、Aさんは紅葉の時期に合わせて、山へドライブに出かけていたことを話し始めました。Aさんは紅葉を楽しんで気持ちよく山奥の道を走っていたところ、突然乾いた音がしたそうです。

何事かと思い、車を止めて確認してみるとタイヤがパンクしてしまっていました。

山奥ではありましたが、幸いにも電話は使用できたため、Aさんはその場ですぐにロードサービスに連絡。ロードサービスの受付からは「車を動かさずに待つように」と、注意点も含めて案内されたそうです。

無理やり走らせた翌朝、愛車に起きた異変

山の中は、日が傾くと急速に暗くなります。人家の明かりもない山奥であればなおさらです。

Aさんは、暗くなってくることに焦りと不安が募り始めたと言います。ついにはロードサービスをキャンセルし、パンクしたままの車を無理やり走らせ、家まで帰ってしまったのです。

Aさんは道中に、車が不自然に揺れるのを感じましたが、構わず車を走らせ続け、帰宅したそうです。

翌朝、Aさんが駐車場に止めた自分の車を見ると、車体が傾いていました。Aさんは、最初はパンクのせいで傾いていると思っていたそうです。

修理工場で確認してもらうと、パンクしたまま走ったことで、タイヤだけでなく車の足回りの部品にまで損傷が広がっていることがわかりました。

「修理費の概算は20万円以上になる」

修理工場からは、そう言われたそうです。Aさんが私に電話をかけてきたのは、修理費の概算を聞いたあとのことでした。相談は、足回りの修理に車両保険を使いたいというものです。

Aさんにとっては、パンクも足回りの損傷も、山道で起きた一連の出来事です。どこまでが補償の対象になるのか、私は経緯を順に確認していきました。

「一続きの出来事なのに…」保険会社が支払えない理由

車両保険が補償するのは、衝突や接触などの偶然な事故によって車に生じた損害です。一方、自動車保険の約款では、契約者などの故意によって生じた損害は補償の対象外とされています。

ここでいう故意には、損害が生じることを意図した場合だけでなく、損害が生じる可能性を認識しながら、その結果を受け入れて行動する「未必の故意」も含まれます。

Aさんは一度ロードサービスに連絡しており、その際、走行できない状態の車を動かす危険性について案内を受けていました。それでもロードサービスをキャンセルし、車に不自然な揺れを感じながら走行を続けています。

その結果、パンクしたタイヤの損傷に加え、足回りにも損傷が生じました。こうした経緯から、不安に駆られての行動であったとはいえ、プロの警告を振り切って走行を続けた結果の損傷は、約款上の故意(未必の故意)にあたると判断されたのです。

そのため私はAさんに、足回りの修理費20万円は、車両保険から支払えないことを説明しました。説明を終えると、電話の向こうでAさんはこう話しました。

「こんなことになるなら、待っていればよかった…。暗くなるのが不安で、待てませんでした」

パンクしたまま走ると何が起きるのか

空気が抜けたタイヤで走り続けると、タイヤがホイールから外れたり、ホイールが路面に接触して変形したりするおそれがあります。場合によっては、空気の抜けたタイヤは走るうちに熱を持ち、破裂(バースト)につながります。

影響は車の損傷だけに留まりません。パンクしたままの走行は、ハンドルを取られるなどの不安定さから、別の重大な事故につながりかねない危険が生じます。ロードサービスの受付が「動かさないで」と伝え、動かした場合のリスクについてAさんに詳細に説明したのは、車と運転する人の両方を守るためでした。

ロードサービスでは、スペアタイヤ交換などの現場修理や、走れない車のレッカー移動などのサービスを受けられます。しかし、自己判断で車を動かしてしまうと、それらのサービスが対象外となってしまうケースもあります。

走行できなくなったときは、無理に車を動かさず、安全な場所でロードサービスの到着を待つことを基本として覚えておきたいところです。

不安なときほど、落ち着いた判断を

パンクしたあと、まずロードサービスへ連絡したAさんの判断は、間違っていませんでした。しかし、山奥という普段とは違うシチュエーションもあり、Aさんは不安から車を動かし、少なくない損害を自己負担することになってしまいました。

山の中で車が動かなくなれば、Aさんでなくても多くの人は不安になるのが自然です。ただ、焦って動かした車は、修理費を大きくするだけでなく、ときにはさらなる事故の原因にもなりかねません。

まずは、山のレジャーに出かける前には、ロードサービスの連絡先や、自分の自動車保険に付いているロードサービスの内容を確認しておくとよいでしょう。

また、パンクによる立ち往生自体を防ぎたい場合には、パンクしても一定距離を通常どおり走行できる「ランフラットタイヤ」を検討するのも手です。通常のタイヤよりも高価ではありますが、山奥などロードサービスの到着が遅れそうな場所に出かけるときには、選択肢のひとつになります。

不安を感じる場面だからこそ、まずは落ち着いて対応することが、自分と車を守るために重要となるのです。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


【エピソード募集】運転中、駐車場で…「えっ!」と思った体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ