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「二人で来たら、一人は床に座れってこと?」椅子1脚の席に怒った女性客。帰り際、足を止めた理由

  • 2026.9.26

一人席の前で響いた大きな声

学生のころ、私はコーヒーの店でアルバイトをしていた。

本を読んだり書きものをしたりする一人客も多く、窓ぎわには小さな丸テーブルと椅子1脚だけの席がいくつも並んでいた。

平日の午後、レジの列がちょうど途切れ、私がトレーを拭いていたときのことだ。店に入ってきた年配のご夫婦が、窓ぎわの一人席の前で足を止めた。

すると奥さんが、店内に響く声で言った。

「なんで椅子が一つしかないの?」

思わず顔を上げると、近くで本を読んでいたお客さんたちもそちらを見ていた。

「二人で来たら、一人は床に座れってこと?」

さらに大きな声で言われ、私は一瞬、どう返せばいいのか分からなくなった。

言い返しても余計に話がこじれそうだったので、私は何も言わずカウンターを出た。そして、すぐ近くの使われていない一人席から椅子を1脚運び、丸テーブルの向かい側に置いた。

「どうぞ」

それだけ伝えて、一歩下がった。

店長が落ち着いて伝えたこと

そこへ奥から店長が出てきた。店長はいつもと変わらない声で奥さんに説明した。

「こちらは一人用の席なので、通常は椅子を1脚だけ置いているんです。お二人で使われる場合は、お声をかけていただければ椅子をお持ちします」

奥さんは納得できない様子で言った。

「でも、そんなの見ただけじゃ分からないでしょう」

店長は表情を変えず、もう一度ゆっくり答えた。

「分かりづらくて申し訳ありません。ただ、こちらは普段は一人用としてご用意している席なんです。今日はそのままお使いください」

奥さんは何か言いかけたものの、それ以上は続けなかった。隣にいたご主人が店長へ小さく会釈し、二人は椅子に腰を下ろした。

しばらくして二人はレジへ来て、温かい飲み物を二つ注文した。

そのあと皿を下げていると、先輩が近くに来て小声で聞いた。

「さっきの、大丈夫だった?」

「びっくりして、何て言えばいいか分からなくて。とりあえず椅子だけ持っていった」

先輩は少し驚いた顔をしてから、

「そうだったんだ。よく落ち着いて対応したね」

と声をかけてくれた。

帰り際に聞こえた小さな一言

一時間ほどたったころ、二人が帰り支度を始めた。

出口へ向かう途中、奥さんが私の前で足を止める。そして少し視線を落としたまま、小さな声で言った。

「さっきはごめんね」

大きな声で怒っていたときとはまるで違う声だった。

私が返事をしようとすると、ご主人が奥さんの背中を軽く押し、二人はそのまま自動ドアの向こうへ出ていった。

私は二人が使っていたテーブルを拭き、運んできた椅子を元の席へ戻した。

窓ぎわの小さな丸テーブルには、また椅子が1脚だけ残った。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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