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漫画『陰陽師』作者・岡野玲子に聞く“雅楽”の魅力「椅子から立ち上がるほどびっくり」衝撃の出会いも

  • 2026.11.4
岡野玲子 width=
岡野玲子

10月から「Sound as Culture ‐その音は、ブンカだ」をテーマとする新シーズンが始まった「MoN Takanawa:The Museum of Narratives」が、11月27日~28日に「漫画『陰陽師』を聴く -天地をむすぶ雅楽の宇宙-」を開催する。夢枕獏の同名の小説を原作とし、安倍晴明ブームの火付け役ともなった岡野玲子の漫画『陰陽師』に描かれた平安時代の美意識や宇宙観を、原画を使った美しい映像と雅楽やエレクトリックピアノの生演奏で体感する新感覚のコンサートだ。会場は、ステージ背面いっぱいの特大LEDヴィジョンを備えた最新鋭のシアター空間、Box1000。監修を務め、トークと演奏で出演もする岡野に、公演への思いを聞いた。

【写真】雅楽との衝撃の出会いを教えてくれた岡野玲子、撮りおろしショット

■「椅子から立ち上がるほどびっくり」衝撃の音との出会い

――LED大画面に映し出される漫画『陰陽師』のさまざまなシーンと雅楽の生演奏を、最新鋭のシアター空間で味わえる本公演。実際にBox1000でテスト画像をご覧になった感想からお聞かせください。

岡野:はい、とても美しいテスト画像でしたね。原画の上に、さらに別のシーンの絵や自然の画像、光が重ねられて。公演本番では、そこに動きが加わり、雅楽や歌が生演奏されるので、きっとよりリアルに安倍晴明や源博雅の視線を通した平安時代や漫画の世界が体感できて、ファンの皆さんも、作品を知らない皆さんも、たまらないだろうなと思いました。

――原画を1枚1枚スキャンする作業が大変だったと伺いました。

岡野:ええ。私は最初、電子書籍用の画像データを映せばいいのかなと思っていたんです。でも、それでは全く解像度が足りないということで、原画を1枚1枚取り出して、印刷用よりもさらに高解像度・高画質なデータにスキャンし直し、LED大画面ではっきりと綺麗に見えるように、色や濃度を調整してお渡ししました。とても大変な作業でしたけれども、LEDヴィジョンに原画の紙の質感まで映し出されているのを見て、作業した甲斐があったなと思いましたね。過去に描いたものと向き合うことで、当時の記憶も甦ってきました。

――どんな場面を選ばれたのですか?

岡野:ブルースさん(演出のBruce Ikeda)には、全13巻あるうちの後半部分や13巻目をリクエストされたんですが、「きっと、この場面が映し出されたら、ファンの方は涙を流してしまうかもしれない」と思ったので、今回上演するCD『music for 陰陽師』を作った頃や、その直前に描いた第8巻を中心に、紅葉や水といった自然を描いたものをメインに選びました。私としては、雅楽の美しい音楽や、装束をまとった演奏姿はもちろん、舞楽では、漫画では瞬間を切り取って描くことしかできない舞人(まいびと)の動きに注目して欲しいと思っています。曲それぞれの音楽や舞に集中していただけるような画像を出していただけるようにブルースさんにお願いしているので、きっとすばらしいものになると思います。
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――岡野先生が雅楽に惹かれたきっかけは、やはり漫画『陰陽師』の連載だったのですか?

岡野:そうです。夢枕獏さんの『陰陽師』をぜひ漫画にしたいと思ったのは、小説を読んだ時に、稀代の陰陽師・安倍晴明とその親友・博雅の会話が続いていく最初のシーンで、もう頭の中に映像が見えてきたからなんですね。それを知り合いの編集者に話したら、驚いたことに1週間も経たないうちに、獏さんのほうから「僕の原作で漫画を描きませんか」というオファーをいただいて、企画が決まりました。

それで、源博雅について書かれている『今昔物語』といった古典作品を読み出したら、管絃の人だと書いてあって。やはり雅楽の世界を知らないことには描けないなと思っていたところ、夫の手塚(ヴィジュアリスト・映画監督の手塚眞)が「これを聴いてみれば?」と、芝祐靖先生(雅楽師・作曲家)の『天竺からの音楽』というCDを貸してくれたんです。その中の「安摩乱声(あまらんじょう)」という曲を聴いた時、あまりにも力強くすばらしい笛の音に、椅子から立ち上がるほどびっくりしてしまって。

――それほど魅せられたのですね。

岡野:ええ、鳥肌が立つような音楽で。こんなにも人を惹きつける力を持った雅楽という音楽をもっと知りたい、そうでなければ、雅楽の神様といわれている源博雅を描くことはできない。笛の1本も吹けなくては、管絃の名人である博雅の気持ちは分からないだろうと思いました。それで、笙の音に魅せられて、宮田まゆみさん(笙奏者)から笙を習い始めたという手塚の友人に、龍笛を教えてくださる方を紹介してもらって、龍笛を習い始めたんです。その後、やはり「和琴を描くためには、和琴の音の力を知らなくては」という思いから、日本古来の絃楽器・和琴も始めました。その時は「和琴を手に入れるにはどうしたらいいのでしょう?」と京都のある方にご相談して、職人さんに和琴を作っていただくことから始めました。

■「雅楽は楽しむもの」『music for 陰陽師』初の公演化へ

――2000年リリースのアルバム『music for 陰陽師』のdisk1に収められた曲が上演される本公演。演奏なさる伶楽舎さんとは、いつ頃からのお付き合いなのですか?

岡野:件(くだん)の友人が笙で参加していたのが伶楽舎で、その演奏会を観に来ませんか? と誘ってくれたんです。そこで初めて主宰の芝先生に紹介していただき、リハーサルから見学して楽器の写真も撮らせてもらったことが、お付き合いの始まりです。源博雅にも、琵琶の名手で大津に庵を結んでいた蝉丸法師のもとに3年間通い続け、琵琶の秘曲を伝授されたという逸話があるんですけれども、私も芝先生が伶楽舎のメンバーのために月に1度開いていらした講座に4年間毎月通いました。そんな関係性があったからこそ、1999年にビクターのディレクターさんから「陰陽五行の理に則った漫画『陰陽師』のための雅楽のアルバムを作りませんか」とオファーがあった時、即、芝先生にご相談して、伶楽舎さんと一緒にアルバム『music for 陰陽師』を作ることができたのだと思います。
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――アルバム『music for 陰陽師』の公演化は、今回が初めてだそうですね。

岡野:この内容で演奏会を行うのは初めてだと思います。アルバムのリリースから26年経った今、伶楽舎さんはより堂々としてすばらしい、美しくバランスのとれた楽団になっています。雅楽は楽しむものなので、緊張せずに楽しんで演奏して欲しいなと思いますし、お客様も変にかしこまったりすることなく、リラックスして楽しんでいただけたらうれしいです。

――ピアニスト・作曲家の橋本一子さんの演奏も楽しみです。改めて、雅楽のどんなところに魅力をお感じですか?

岡野:たとえば龍笛を森で吹くと、樹々がザワザワと聴き耳を立てているのを感じますし、池のそばで吹けば魚が跳ねます。そんなふうに自然の中で雅楽の楽器を鳴らしたり、歌ったりすると、平安時代だけでなく、今も自然が何かを返してくれることを体感して、私は驚嘆しました。それを忘れてしまった現代人は、本当にもったいないなと感じます。

今回は屋内での演奏ですが、ブルースさんをはじめとする映像・音響スタッフの皆さんから、最新の立体音響システムをフルに使ったサウンドスケープを作ると伺っています。他にもすばらしいスタッフの方々がそろっているので、きっと今まで誰も体感したことがない素敵な演奏会になると思います。芝先生(2019年に他界)や、いにしえの楽師陣にも来ていただけるのかなと、私自身も楽しみにしています。皆様ぜひ、MoN Takanawaに「漫画『陰陽師』を聴く -天地をむすぶ雅楽の宇宙-」を体験しにいらしてください。

(取材・文:岡崎香 ※「崎」は「たつさき」が正式表記)

「漫画『陰陽師』を聴く -天地をむすぶ雅楽の宇宙-」は、11月27日~28日に東京・Box1000にて開催。

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