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彼女のアルバムを見た日から、俺は椅子の背に毛糸を結んで練習していました

  • 2026.10.27
ハウコレ

「理由は、伸びたら言う」と答えた俺の本棚で、あの本が移動していました。彼女に見られたのかもしれません。

椅子の背に結んだ3本の毛糸は、何度編んでも途中で曲がります。ほどいて、また最初から。彼女が帰ったあと、毎晩練習していました。うまく編めるまでは言わないと決めていたのです。

古いアルバムの三つ編み

半年前、彼女の実家でアルバムを見せてもらいました。小学生の彼女は、どの写真でも長い髪をきれいに編んでいました。

「これ、母が毎日編んでくれてたの。自分じゃできなくて、結局切っちゃった」

笑っていた彼女が、その写真だけは長く見つめていました。

帰りにヘアアレンジの本を買いました。俺は人の髪を編んだことがありません。手芸店で買った毛糸を椅子の背に結び、本に付箋を貼って練習を始めました。使い終わると、仕事のファイルの間に隠していました。

言えなかった残りの半分

編み目が少しまっすぐになってきた頃、鏡の前の彼女が言いました。

「そろそろ髪切りに行こうかな」

今切られたら、また振り出しに戻る。思わず口にしていました。

「髪、伸ばしてほしい」

「急にどうしたの?」

本当のことを言いかけてやめました。毛糸では編めても、人の髪で失敗しない自信はありません。彼女のお母さんのようにできなかったら。そんなことを考えてしまったのです。

「理由は、伸びたら言う」

麦茶を取りに立ち、冷蔵庫の中を眺めるふりをしていました。

棚の端に移っていた本

次の週末、買ってきたアイスを並べていると、彼女が言いました。

「短いほうが、楽なんだけどな」

「無理にじゃなくていいよ」

本心でした。嫌がることを押しつけるつもりはありません。ただ、自分でも声が小さくなったのが分かりました。

彼女を駅まで送って戻ると、仕事のファイルの間にあった本が棚の端に移っていました。

見られたのでしょう。余白に書いた字も、きっと。何の本だと思われたのか気になりましたが、確かめるには練習のことまで話さなければなりません。

毛糸の三つ編みさえ、まだまっすぐにできないのです。

そして...

3週間後、美容院帰りの彼女が部屋に寄りました。髪は前とほとんど同じ長さでした。

「あんまり変わってないね」

「うん、今回はね」

それ以上聞かなかったのは、練習のことを話してしまいそうだったからです。

彼女が帰ったあと、また毛糸を編み直しました。3本目を重ねるところで、少し左に曲がってしまいます。

あの本は、棚の端から戻さないことにしました。

(20代男性・設計職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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