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西川美和監督、10年ぶりトロント映画祭へ!『わたしの知らない子どもたち』世界初上映

  • 2026.9.20
西川美和監督、10年ぶりトロント映画祭へ!『わたしの知らない子どもたち』世界初上映
(C) 2026 K2 Pictures・AOI Pro.

小八重葵美、初めての海外で観客の反応にびっくり

映画『わたしの知らない子どもたち』が、第51回トロント国際映画祭(TIFF)プラットフォーム部門のオープニング作品としてワールドプレミア上映され、西川美和監督と主演の小八重葵美がレッドカーペットと舞台挨拶に登壇した。同部門のオープニング作品に日本映画が選出されるのは、今回が初となる。

現地時間9月10日の上映には、西川美和監督と、主人公・琴子を演じ、本作が初主演となる小八重葵美が登壇。映画祭のプログラマーから「オープニング作品としてこの作品を上映できることを大変嬉しく思います! 今回初主演を務めたアミの初めての映画祭となります」と紹介され、西川監督と小八重がステージに姿を現した。

西川監督が現地を訪れるのは、映画『永い言い訳』(16年)がスペシャル・プレゼンテーション部門に招待されて以来、10年ぶり。前作『すばらしき世界』(21年)も2020年に同部門へ招待されたが、コロナ禍のためオンラインでの参加となった。当時を振り返り、東京から画面越しに見た客席はまばらだったものの、観客から寄せられた熱心で優れた質問が記憶に残っていると回顧。「それから6年が経ち、ようやく新作を携えて、こうしてトロントに戻ってくることができました。本当にうれしく思っています。この作品を選んでくださった映画祭の皆さんに、心から感謝申し上げます」と挨拶した。

続いて、この日が自身にとって初めての海外渡航であり、初参加の国際映画祭となった小八重は、初めて英語で「Hello, I’m Ami. I played Kotoko in this film. Thank you!(こんにちは、葵美です。この映画で琴子を演じました。ありがとうございます!)」と、照れながらも笑顔いっぱいに挨拶し、観客の心をつかんだ。

本作の企画を考え始めたのは、世界がコロナ禍からの回復という課題に向き合っていた2020年春。その後、2022年にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、世界各地で武力衝突が続く状況について、西川監督は「まるで世界が逆行しているように感じた」と話し、「今、世界中で、この映画に登場する子どもたちと同じような境遇に置かれる子どもが増えています。これ以上、どこであっても、子どもたちをこのような状況に置いてはならない。その思いを、この映画からのメッセージとして、皆さんの心に持ち帰っていただければと思います」と作品に込めた思いを語った。

最後に小八重が「素晴らしいシーンがたくさんあり、きっとさまざまな感情が湧き上がる作品です。ぜひ、たくさん泣いてください!!」と力いっぱいにアピール。会場を和ませ、大きな拍手に包まれる中、上映がスタートした。

上映後には、西川監督が再び登壇し、Q&Aを実施。脚本に先駆けて小説を書いた理由を問われると、自身もこの時代の歴史について知らないことが多く、さまざまな資料を調べるところから制作を始めたことを説明。「映画の脚本にする前に、登場人物それぞれの背景や、当時どのような出来事が起きていたのかを、自分の中できちんと整理する必要がありました。そのため、最初に小説を書き始めました」と語った。中でも、登場人物の一人である将吉について、空襲に遭う前にどのような家庭や家族関係の中で暮らしていたのかなど、映画では描き切れなかった背景を小説では詳しく記したという。

続いて、小説の強みについて聞かれると、「小説の強みは、映画の中では多くを語らない人物にも、たくさんのことを語らせられる点にあると思います」と回答。本作の登場人物の多くは子どもたちであり、映画の中で一人ひとりに長いせりふがあるわけではないことから、自らの内面を多くの言葉で語らない彼らについて、小説では胸の内を語る形を取り、それぞれの心情や物語を余すところなく描くことができたと語った。

司会者から、戦後の貧困や困難の中を生きる子どもたちの描写について、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の『靴みがき』(46年)をはじめとするイタリアン・ネオリアリズムからの影響を問われると、「『靴みがき』は、まさに戦後のイタリアを舞台にした作品です。そこでも、子どもたちが同じような道具を使い、進駐軍の兵士たちの靴を磨いています。日本とイタリアという遠く離れた国でありながら、戦災孤児たちが置かれていた状況は本当によく似ていると思います」と回答。本作のテーマを思いついた際に同作を久しぶりに見直し、2つの国の共通点の多さに改めて驚いたという。

また、日本映画では小津安二郎監督の『長屋紳士録』(47年)を挙げ、「終戦直後に作られた古い映画には、戦災孤児が登場する作品がいくつかあります。しかし近年では、このテーマを扱った作品は、あまり見当たらなくなっているように思います」と、このテーマを扱う難しさにも言及した。

小八重葵美を選んだ決め手については、琴子が内に秘める強い意志を芝居から感じさせる存在がなかなか見つからなかったことを明かしつつ、「葵美ちゃんのきらきらと輝く瞳と、何か強い意志を胸の奥に秘めているような存在感が、その場にいたスタッフ全員の心をつかみました。それで、葵美ちゃんを選びました」と理由を説明した。さらに、オーディションでは歌唱審査があり、そこで披露した歌声も決め手の一つになったそうで、西川監督は「本当に抜群に素晴らしく、とても素敵な声でした。完璧な子守唄を聴かせてくれました」と称賛した。

Q&Aの最後には、西川監督が主演の小八重のほか、会場に駆けつけたプロデューサーの小出大樹、伊藤太一、照明の宗賢次郎を紹介。会場から改めて大きな拍手が送られ、温かな雰囲気の中でイベントは幕を閉じた。

イベントを体験した小八重は「自分でも意外なところで笑っている人たちがいてびっくりしました」と、海外の観客から寄せられた新鮮な反応を振り返った。

上映終了後も、西川監督や小八重の周りにはサインや写真を求める観客が集まり、会場は大いに盛り上がった。また、オープニング上映に参加した観客からも、「本当に心に響く映画です。過去を描いた作品でありながら、物語全体が今の時代にも非常に通じるものだと思います」「子どもたちの存在は強く心に響きます。表情や感情がカメラを突き抜けてくるような力があります」という感動の声が寄せられた。

『わたしの知らない子どもたち』は2026年10月16日より全国公開。

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