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ファッション界からごみゼロの町へ。Z世代リーダーがつくる「捨てない暮らし」【世界クリーンアップデー】

  • 2026.9.16
Momona Otsuka, 株式会社BIG EYE COMPANY

毎年9月20日の「世界クリーンアップデー」は、世界各地で一斉に清掃活動を行い、人々が身の回りのごみに向き合う日のこと。徳島県にある「上勝町ゼロ・ウェイストセンター“WHY”」で働く大塚桃奈(おおつか・ももな)さんにとって、ごみに向き合い、ごみゼロに向けて取り組むことは日常の営み。

そんな大塚さんが幼いときから夢見ていたのは、実はファッションデザイナーになること。高校時代には海外でファッションを勉強した彼女が、いまでは日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言をした、日本屈指の“ごみを出さない町”で奔走しています。

なぜファッションへの強い興味からごみゼロの取り組みへ? 大塚さんの捨てない暮らしとは? ファッションへのトキメキが現在の道にどうつながっているのか、インタビュー内容をお届け!

ファッションデザイナーとして“ものをつくる”憧れ

「ファッションのキラキラした世界観に魅了されていました」―—そう話すのは、現在ごみの分別・学習・交流のための複合施設「上勝町ゼロ・ウェイストセンター“WHY”」(以下、ゼロ・ウェイストセンター)の現場統括として活躍する大塚さん。

「学生のときに家族と出かけたアメリカで1冊の本に出会いました。中にはトップスやボトムスの形の小さな型紙が入っていて、それを使って異なる色紙を切り抜き、さまざまなコーディネートを楽しめる本でした。それがとても楽しくて。それ以降もファッション雑誌でさまざまな服のデザインを見るたびに、とてもワクワクしたのを覚えています。私は手先が不器用だったのですが、それでも“ものをつくる”という行為に強い憧れを持っていました」

ファッションデザインを学びにロンドンへ留学した大塚さん Momona Otsuka

そんな大塚さんにとって、高校留学時にファッションを専攻したのは自然な流れだったと言います。ところが留学に旅立つ直前に、ファストファッションの裏側を描いた『ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償』を見たことが大きな転機に。「これから自分が携わり、学びたいと思っていたファッション業界の裏側に、環境問題や労働者の人権問題などこれほど多くの深刻な課題があるという現実を知り、大きなショックを受けました。留学先での授業はクリエイティブで本当に刺激的。才能豊かな学生たちにも出会うことができたのですが、頭をめぐっていたのは『世界中でこれだけ多くの人が服をつくりつづけているなかで、果たしてこれ以上服をつくっていいのだろうか』ということでした」

世界中から優秀な学生たちが英語でファッションについて学ぶ日々 Momona Otsuka

迷っていた大塚さんは、帰国後に大学進学を決め、教養学部で開発学や環境学などを学ぶように。その間もファッションへの強い興味は消えることはなく、日本のファッション業界についてもリサーチ。高齢化や少子化によって地方を拠点とする国内の繊維産業の衰退が問題視されていることに気づき、地域づくりや地方創生を学んだり、デザイナーの皆川明さんの服づくりに対する真摯な思いに共感し「ミナペルホネン」でのアルバイトもスタート。セールを一切行わずに生産者と対等な関係を築いたり、ものの価値を保ちつづける姿勢などから多くのことを吸収したそうです。

ゼロ・ウェイストタウン上勝町との出会い

「上勝町を知ったのは大学生のとき。山奥のとても小さな町なのに、2003年に日本で初めてごみを出さない社会を目指していることを知り驚きました。実際に自分の目で見たいと思い、訪れることに」

戦後から1997年頃まで、焼却施設以外で廃棄物を野外で燃やすこと(野焼き)が主流だった上勝町。関連法の改正で野焼きが廃止されて以降、焼却炉を設置してきたが、有害物質ダイオキシンが大きな社会問題となっていた時期に重なり、「ごみをできるだけ燃やさないために分別をする」という方向に政策がシフト。2016年には、ごみが13種類45分別されるようになり、リサイクル率が80%台を達成していた。

「宿泊先の方々は免許を持っていない私を車で送迎してくれたり、名所を一緒に歩いて案内してくれたりと、たくさん助けていただきました。畑作業を一緒にお手伝いさせてもらうなど新しい体験も。初めて訪れた場所なのに、『ただいま』と言えるような温かい人々とその暮らしに感動していました」

上空から見ると「?」の形をしているゼロ・ウェイストセンター。ごみや消費のあり方に「問いを投げかける」という理念を表現。建設の資材やインテリアには、不要になった建具や家具などが活用されている 株式会社BIG EYE COMPANY

「その際、現在のゼロ・ウェイストセンターの運営会社(株式会社BIG EYE COMPANY)代表である田中達也にも出会い、彼がごみをなくしていくだけでなく、“ゼロ・ウェイスト”というコンセプトを上勝町のかっこよさとして発信し、この町が抱えている過疎化・高齢化の課題解決を目指していると知りました。面白い会社だなと思い、大学生の間に活動を手伝っていたところ、ゼロ・ウェイストセンターを立ち上げるから一緒にやってみないかと声をかけてもらいました。上勝町の温かさに惹かれただけでなく、これまでの経験や学んでいたことがつながっている気がして、大学卒業と同時に上勝町に移住することに決めました」

現在ゼロ・ウェイストの発信拠点となったゼロ・ウェイストセンターは、2020年にオープン。住民が自ら持ち込んだごみを分別する場所「ゴミステーション」や、まだ使える中古品を無料で持ち帰ることができるリユースショップ「くるくるショップ」、ゼロ・ウェイストを体験できる宿泊施設「HOTEL WHY」で構成されている複合施設です。

上勝町の住民の方から教えてもらいながらDIY! Momona Otsuka

「移住する前はゼロ・ウェイストと聞くと『あれも使えない、これも買ってはいけない』といった制限が強いられ我慢しなければならないもの、というイメージがありました。ですが、いまではごみを出さないことは制限ではなく『身の回りにある限られた資源をクリエイティブに活用し暮らしを楽しむこと』という発想に変わりました」

「地域の方が徳島県の方言で『あるもんで』という表現をよく使います。『いまここにあるもので』という意味です。地域の方から知恵を借りながら、ものを大事にしていく。そうした助け合いのなかで大事にした記憶の宿ったものには、新たに買ったものとは比較にならないほどの深い愛着が湧き、いつまでも大切に使いたいと思うようになります。この『あるもんで』という感覚こそが、上勝町で暮らすなかで私の中に新しく生まれた、最も豊かなライフスタイルでした」

上勝町が模索するゼロ・ウェイストな暮らし

ゼロ・ウェイストを町の魅力として発信していくためには、町を知ることが大前提。大塚さんをはじめ、メンバーの半分が多様なバックグランドを持つ移住者であるゼロ・ウェイストセンターでは、地域の方と同じ目線で一緒に何かをする時間を大事にしています。

上勝町で田植えに参加! Momona Otsuka

「例えば、町内で開催されるソフトボール大会やバレーボール大会などのイベントに参加したりお祭りにも参加したり。上勝町のように農業がさかんな地域にとって、お祭りは収穫を感謝する大事な行事。顔を合わせてお互いを思いやる大切な文化がそこにはあり、コミュニケーションの場にもなっています。その伝統的な文化の継承にゼロ・ウェイストセンターの若いメンバーが一緒に参加させていただけることに、本当にうれしく感じています」

地域の外に向けた発信では、ゼロ・ウェイストセンターの宿泊施設が活躍。地域外から訪れる人々に廃材を使って設計されたおしゃれな空間で出迎えたり、ごみを減らしていく体験を宿泊期間に織りこんだりしています。

「私たちはこの宿泊体験のなかで、楽しさやワクワク感をつくることを最も大切にしています。なので、お客様に『絶対にごみを出してはいけません』『これは使ってはいけません』といったことは言いません。例えば、ホテルの客室にはアメニティを置いていないので、その代わりにチェックインの際、フロントで滞在期間中にどれくらいの量の石鹸を消費するかを予測してもらい、必要な分だけカットして部屋に持って行ってもらいます。コーヒーやお茶も同様に、飲む分だけを自分で量り分けてもらいます。これによって、普段の生活のなかでいかに自分たちが必要以上にものを消費しているのか、自分にとっての適正量はどれくらいなのかを考えるきっかけや手触り感のある体験をつくっています」

汚れているプラスチックやきれいなプラスチック、飲料ボトルなど、宿泊中に出たごみはゴミステーションで細かく分別する 株式会社BIG EYE COMPANY

「チェックアウトの際には滞在中に出したごみをゴミステーションに持って行き、スタッフと一緒に分別していただきます。 私たちはお客様に『これが正解です』という答えを押しつけることはしません。なぜなら、私自身も何が完璧な答えなのか分からないからです。上勝の住民の方も私たちもベストではなく、少しでもベターなやり方を日々模索している最中です。『上勝町ではこのように取り組んでいますが、皆さんの暮らしだったら、何ができそうですか?』と問いかけ、余白のあるスタンスを常に大切にしています」

“ものを循環させる”暮らしのトキメキを広めるために

ゼロ・ウェイストセンターでの宿泊体験を通じて、「あ、これなら私でもできそう!」と宿泊客の意識が変わる瞬間に立ち会えることが、自身のやりがいにつながっていると言う大塚さん。同時にゼロ・ウェイストセンターには、まだまだできることはあると静かに、力強く話します。

「不要な衣類の回収プロジェクトをはじめたとき、町外・県外の方々から衣服の行き先に困っているというニーズがあることを強く認識させられました。その一方で、非常に大きな課題も浮き彫りになりました。実際に回収した衣服を調べたところ、その6割以上が複数の異なる繊維が混ざり合った混紡製品だったのです。現在の一般的な技術では異なる繊維が混ざり合っていると、それを元のきれいな繊維や衣服の原材料に戻すことは難しく、リサイクルできたとしてもクオリティは低下。コストがかさみ、結局燃やした方が経済的負担が低いのが現状です」

(上)回収した衣類を詳細に調べている様子。(下)大阪・関西万博や海外での講演など、ゼロ・ウェイストな暮らしの情報発信にも邁進中! Momona Otsuka

だからこそ、今後の目標は企業との本格的な連携だと語る大塚さん。「燃えるごみに分別せざるをえない不要な衣類をリサイクル可能にするためには、衣類のデザインといったものづくりの段階からアプローチが必要です。服をどうリサイクルできるのか。捨てずに長く着つづけるにはどうすればいいのか。着る人が後ろめたさを感じることなく、ファッションがもたらすトキメキを抱きつづけられるように、上勝町からゼロ・ウェイストな暮らしを世界へ発信し、本気で行動をともにしてくれる企業やブランドを一つでも多く増やしていきたいです」

上勝町の取り組みや魅力に惹きこまれ、ゼロ・ウェイストセンターで働く仲間も着実に増えている Momona Otsuka

ファッションデザイナーとしてものづくりに憧れた大塚さんの情熱は形や場所を変えて、いまも存在しているのは確かだ。「留学以降、私は服づくりという手段を通じて、どうやって環境問題や労働問題などの社会課題を解決し、社会に貢献できるかをずっと模索してきました。いまはアプローチこそ違いますが、ごみを切り口に社会課題の解決に取り組む仲間を増やすことに力を注いでいます」

「ぜひ上勝町にお越しいただき、この町のよさやごみ問題を一緒に考えていただけたらうれしいです。それが叶わなくても環境問題について関心があるけれど、何からはじめればいいかわからない人にお伝えしたいのは、すでに持っているものを大切に使いつづけるということ。特に服からはじめてみるのがおすすめ。例えば、お気に入りの1着が何からできているのか知ることは、適切なメンテナンスの方法を知る手段になり、ものを循環させる暮らしへの一歩につながります。誰でもいまこの瞬間からできる最も簡単でパワフルな方法です」

PROFILE

Momona Otsuka

大塚桃奈(オオツカ・モモナ)
株式会社BIG EYE COMPANY Chief Environmental Officer。1997年生まれ。トビタテ!留学JAPAN高校生コース1期生。国際基督教大学卒業。高3英国留学を機に服を捨てる社会構造に懸念を抱き、2020年に徳島県上勝町へ単身移住。上勝町ゼロ・ウェイストセンター“WHY”の現場統括として施設運営に携わりながら、循環型社会の実現に向けて現場での対話や情報発信を重ねている。

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