1. トップ
  2. 実子である姉と、養子である妹。両親を亡くし、ふたりだけになった姉妹が互いを見つめ、一匹の猫とともに「家族」を形づくっていく物語【書評】

実子である姉と、養子である妹。両親を亡くし、ふたりだけになった姉妹が互いを見つめ、一匹の猫とともに「家族」を形づくっていく物語【書評】

  • 2026.9.15
 ©mikumo/SQUARE ENIX
©mikumo/SQUARE ENIX

【漫画】本編を読む

『おじさんとフィキサチーフ』(mikumo/スクウェア・エニックス)は、両親を亡くした血のつながらない姉妹が一匹の猫とともに暮らしながら、少しずつ家族になっていく姿を描いたヒューマンドラマ。10歳という年齢差に加え、実子と養子という複雑な関係がありながらも、この世界に残されたたったふたりの姉妹が不器用に距離を縮めていく姿が胸に残る物語だ。

妹の福島衣織は、施設で育ち、5歳の時に養子として福島家へやってきた。そこには10歳年上の義姉・莉子がいた。そして10年後、両親が交通事故で他界してしまう。実子である莉子と、養子として家族に加わった衣織をつないでいた両親という存在を突然失い、この姉妹はあらためて互いの関係と向き合うことになる。上京しひとり暮らしをしていた莉子は衣織を引き取ることを決め、東京・高幡不動の家に迎え入れるのだ。

血はつながっておらず年齢は10歳離れている。両親と過ごしてきた時間も、抱えている記憶も同じではないため、普通の姉妹とは違ってふたりの間には簡単には埋められない距離がある。だから「姉妹なのだからわかり合えて当然」とはいかないところに、本作の切なさとリアリティを感じられる。

それでも、ひとつ屋根の下で食事をともにし、言葉を交わしながら、ふたりは少しずつ相手を知っていく。母親から教えてもらった手料理の味がふたりに共通の記憶を呼び起こし、家族の絆を確認するシーンなどは、血のつながりを超えた家族という関係を表す象徴的なシーンだろう。そして、その傍らにいるのが、一匹の猫「おじさん」だ。遠慮や照れなど、人間特有の思いを吹き飛ばし、ふたりの間をやわらかくつないでくれる存在となっており、ふたりと一匹の何気ない日々がゆっくりと家族の形を作っていくところが本作の見どころだ。

突然両親を失い、ふたりぼっちになった姉妹。それでも、一匹の猫とともに新しい日常を積み重ねていく。血のつながりだけでは説明できない「家族」という関係の尊さを、不器用な姉妹の暮らしから描き出す、やさしさに溢れた物語である。

文=益田聖良

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ