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「俺も座りたかったんや。早い者勝ちやろ」年配女性のために空けた席へ先に座った男性。車内が急に静かになった瞬間

  • 2026.9.15
「俺も座りたかったんや。早い者勝ちやろ」年配女性のために空けた席へ先に座った男性。車内が急に静かになった瞬間

年配の女性のために、少しずつ空いた席

今年の春、朝の通勤時間帯のことです。混み合った電車の中で、私はドアのわきに立っていました。

座席の前には、四十代くらいの男性が立っていました。ずっと手元を見ていて、駅に着いて人が増えても、ほとんど顔を上げません。

次の駅で、年配の女性が乗ってきました。人の間をゆっくり進み、その男性のすぐ横で足を止めます。

女性に気づいた座席の人たちが、少しずつ体を寄せ始めました。端に座っていた学生も腰を詰めると、ちょうど一人が座れそうな場所ができます。

学生が女性を見上げ、空いたところを手で示しました。

「ここ、座れますよ。どうぞ」

「あら、ありがとう」

女性が一歩近づいた、そのときでした。

「あ、そこ俺座るわ」

それまで前に立っていた男性が振り向き、そのまま空いた場所へ腰を下ろしたのです。

女性は足を止めました。学生も驚いたように男性を見ます。

「え…すみません。この方にと思って空けたんですけど」

男性は少しむっとした顔になりました。

「俺も座りたかったんや。早い者勝ちやろ」

思ったより大きな声でした。

年配の女性は困ったように笑い、「いいの、いいの」と小さく手を振って後ろへ下がりました。

学生もそれ以上は言えず、ゆっくり手を下ろします。

「なんで俺が悪いみたいになってんの」

周囲にいた何人かが男性のほうを見ました。

その視線に気づいたのか、男性は座ったまま顔を上げます。

「なんで俺が悪いみたいになってんの。席なんて早い者勝ちやろ」

2度目の声は、さっきよりも大きく聞こえました。

けれど、誰も言い返しませんでした。

年配の女性は少し離れた手すりにつかまり、学生は前を向いたまま黙っています。私も何か言ったほうがいいのかと思いましたが、あの声を聞くと、口を挟んで揉めるのが怖くなりました。

車内にはさっきまでのざわつきが戻らず、男性の周りだけ妙に静かでした。

数駅たって、私は先に電車を降りました。ホームへ出てからも、あの女性が席の前で足を止めた瞬間が頭に残っていました。

家に帰ってから、妻に話した

その晩、家で妻にこの話をしました。

「今日、電車でさ。おばあさんのためにみんなで席を詰めたんだけど、別の人が先に座っちゃって」

「え、その人、分かってて座ったの?」

「たぶん。学生が『この方に』って言ったあとも、動かなかったから」

妻は少し黙ってから聞きました。

「誰も何も言わなかったの?」

「うん。俺も言えなかった」

「急にあんなふうに大きな声を出されたら、怖いよね」

私もそう思いました。

その場では「それは違うんじゃないか」と思っていても、知らない相手に声をかけるのは簡単ではありません。

今でも思い出すのは、「早い者勝ち」という言葉以上に、そのあと誰も男性のほうを見なくなった、あの気まずい車内の空気です。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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