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【『ルックバック』W主演インタビュー】出口夏希「“演じてみたい”と思う余裕もなかった」蒔田彩珠「子ども時代を演じた二人が着ていた服を、そのまま私たちも着ていた」

  • 2026.9.11

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藤本タツキによる傑作漫画『ルックバック』が、是枝裕和監督・脚本・編集で実写映画化される。

漫画を描くことにひたむきに向き合う二人の少女、藤野と京本。自分の才能に絶対の自信を持っていた藤野は、学年新聞に掲載された京本の4コマ漫画をきっかけに、彼女の圧倒的な画力を知る。やがて漫画を通じて結ばれていく二人だったが、その先には、思いもよらない出来事が待ち受けていた――。

そんな藤野を演じるのは出口夏希。そして、藤野に憧れながらも、秘めた才能を開花させていく京本を蒔田彩珠が演じる。漫画というひとつのものを追いかけるなかで芽生える友情、嫉妬、憧れ、そしてかけがえのない時間。多くの読者の心を揺さぶった物語を、二人はどのように演じたのか。

今回、W主演を務めた出口夏希と蒔田彩珠にインタビュー。撮影のために訪れた秋田県にかほ市での時間や、それぞれが藤野、京本という役と向き合った日々、そして実写映画『ルックバック』という作品に込めた思いについて話を聞いた。

蒔田「子ども時代を演じた二人が着ていた服を、私たちもそのまま着ていました」

――『ルックバック』でお二人が演じたのは中学時代の途中からですが、「えっ、変わったよね!?」と何度見もしてしまうくらい自然といいますか、子ども時代を演じたお二人と雰囲気が同じだったので、驚いてしまいました。

出口夏希(以下、出口):そう言っていただけて嬉しいです。実は私も、公式写真のうしろ姿をみて、自分たちなのか子どもたちなのかわからなくなっちゃって。

蒔田彩珠(以下、蒔田):子ども時代を演じた二人が着ていた服を、私たちもそのまま着ていましたからね。

出口:我ながら、よく入るなあと思いました。

蒔田:サイズもね、S・M・Lじゃなくて、140、150って表記された、まごうことなき子ども服で。雪国ならではの厚着で、地元から出たことのない子たちの野暮ったさみたいなものも、衣装で表現されていて。そのおかげで、私たちも、年齢より幼く見えたのかもしれない。メイクも、ほとんどしなかったですし。

出口:これまでのどんなお仕事より、準備にかかる時間が短かった(笑)。衣装やメイクには、かなり助けられましたね。クランクインするまでは、正直、怖くてしかたがなかったけど、現場に入ったら、にかほ市(ロケ地)の情景や、その場で感じられる空気や音、それから、彩珠とのあいだに流れるまったり感が、緊張をといてくれました。

出口「“演じてみたい”と思う余裕もなかった」

 ©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社
©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社

――クランクイン、怖かったんですか。

出口:怖かったですね。原作はもちろん、アニメ映画も誰もが知る名作で、「演じてみたい」と思う余裕もなかったんです。脚本はわりと原作をそのまま書き起こした感じでしたけど、その土地の情景を映し出しながら演じることでなにかが変わる、繊細な作品なんだというのは読んでいるだけで伝わってきましたし。

蒔田:私たちはふたりとも、『舞妓さんちのまかないさん』で是枝監督とご一緒していますけど、やっぱりドラマの台本とは雰囲気が少し違っていて。より詩的というか、心情が描かれていたよね。

出口:そう。だから、現場で五感で触れて演じてみないことには、どうなるかわからない不安もありました。

蒔田「役作りしようなんて思わなくても、自然と京本と藤野になれたのは、にかほという場所のおかげ」

――実際、演じてみていかがでしたか。

蒔田:初日は、撮影ではなく、マンガを描く練習をしたんだよね。

出口:そう。で、終わったらご飯行って飲んだりもして、すっかり意気投合したよね(笑)。今ふりかえると、なぜだかわからないけど、役についての話は一切しなかった。

蒔田:プライベートの話しかしなかったね(笑)。

出口:地酒もおいしかったよね~! お店の方から「撮影に来ているんでしょ、主役の子どもたちが来てたよ。あなたたちはどこの部署?」って聞かれたから「カメアシ(カメラアシスタント)です」「美術の助手です」って答えたりして。

蒔田:すぐにバレたけどね(笑)。

出口:地元のみなさんが本当にあたたかかったよね。撮影が終わる時間までお店を開けて待っていてくれて、しかも、私たちが行く時間にあわせてお米を炊いてくれた。秋田のお米、おいしかったな。お昼は毎日お弁当を食べているって言ったら、ほかほかのごはんを届けてくださったりもして。

蒔田:お店のおばあちゃん、エキストラとして参加してもらったよね。駅の階段を下りてくるシーンがあるので、ぜひ探してみてください。

出口:そういうのもあって、自然と、私たちはこの土地で育ったんだなあという気持ちになれて、撮影しているという感覚もどんどん抜けていきました。

 ©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社
©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社

蒔田:役作りしようなんて思わなくても、自然と京本と藤野になれたのは、にかほという場所のおかげだよね。

出口:そうかも。最初にマンガを読んだときは、藤野のことを、マンガが本当に好きで、負けず嫌いな子なんだなあという印象で。私はどちらかというと、負けたくないって張り合うより、京本みたいに「こんなことができるなんて、すごい! 私もできるようになりたい、吸収したい!」って思うほうだから、ものすごく共感しながら演じるってわけでもなかったけど、あたりまえのようにここで育って京本に出会ったんだな、という実感が生まれたおかげで、自然と藤野らしくなれた気がする。

蒔田:私も、同じかも。京本は藤野にものすごく憧れているけど、あんまり、この人みたいになりたいとか、思わないから。もちろん、自分がやりたかった役を誰かが演じていたら悔しくなるし、自分より年下の子たちの演技に圧倒されて、尊敬することもあるけど。

出口:でも、その人はその人だから、って思えるタイプだよね、彩珠は。

蒔田:うん、そうだね。悔しさをバネにするより、楽しみを見つけながらお仕事したいし。

出口:そういう意味では、今回の現場は本当に楽しかった。演技の相談なんて一度もしなかったけど、自然と呼吸があうのも、不思議だったな。

是枝監督は「私たちの演じる藤野と京本に、演出をあわせてくれた気がする」

 ©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社
©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社

――監督からは、なにか指導はあったんですか?

蒔田:それが、全然なかったんですよ。

出口:シーンごとに「ここに立って」とか「こういう動きをして」とか、画(え)的な指示はありましたけど、それ以上のことは何も言われなかったです。私たち、かなり自由に演じていたと思うんですけど……。

蒔田:いつも「うん、いいね」って言ってくださって。もうちょっとこうしてみよう、と足されることはあっても、「それはやめよう」とか「それは違う」とか、修正されることはなかったです。だから、シーンによってはけっこう、台本とは違う仕上がりになっているんですよ。

出口:私たちの演じる藤野と京本に、演出をあわせてくれた気がするよね。

蒔田:監督が何を思って私たちをキャスティングしてくれたのか、現場で聞いたことは一度もなかったので、一緒に取材を受けたときに聞いてみたんです。そうしたら、「私と夏希が二人を演じているところがイメージできた」っておっしゃっていました。似ているというよりも、こういうお芝居をするだろうなと思い浮かんだ、ってことだと私は受けとったんですけど。

出口:それを、生かしながら演出してくださったんだと思います。いわれてみれば、私たちの関係って、藤野と京本に似ているところがあったよね。一緒にいると落ち着くし、話していて楽しいんだけど、黙りたいときは黙って、それでも絶対に気まずくはならなくて。無の時間すら、心地がいい。お昼食べて眠くなったら、一緒にうたたねして……。

蒔田:たぶん感情の起伏が似ているんだよね。演じているときも、そうでないときも、ずっと自然体でいられた。二人で海に行くシーンは楽しかったな。

出口:台本では藤野だけが入ることになっていたけど、私が「絶対に京本も入れてやろう」と思って、腕を引っ張って。

蒔田:絶対に嫌だ!って私も本気で抵抗して(笑)。

出口:あのときの私たちは、もちろん藤野と京本で、素の私たちではないんだけど、でもすごく楽しかった。その自然な感情が、観る人にも伝わってくれるんじゃないかなと思う。

蒔田:逆に、はじめて出版社に行くシーンは、私たち自身の緊張がそのまま映し出されていたよね。菅田将暉さんが演じる編集者にふたりで向かい合っているときは、違う作品に迷い込んだような気持ちになっちゃった(笑)。

出口:それまで地元の秋田で育って……というか撮影をして、親と先生以外の大人と接することがなかったのに、急に東京に出ることになっちゃって。

蒔田:そう。東京だ!っていう緊張もあって。

 ©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社
©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社

出口:そのカチコチな感じも、藤野と京本の感情にシンクロしていた気がする。そういう、自然体で演じられている瞬間を拾い集めて監督は映画を作ってくれたんだと、試写を見て思いました。あと、どこで撮るかって大事なんだなということも、この作品を通じて実感しましたね。いちばん印象に残っているのは、やっぱり、ふたりが決別するあぜ道のシーンなんだけど……。

蒔田:それまでのシーンでは、一緒にいても、実はあんまり会話していないんだよね。マンガを描いているときも、はじめての原稿料で街に遊びに行ったときも、なにも言わなくても通じ合っている気がしていた。だけどあの別れのシーンで、唯一、ちゃんと気持ちをぶつけあったとき、言葉にならないくらい、胸がぎゅうっとなって……。

出口:ちゃんとお芝居をしたなって、あそこで思えたね。と同時に、相手が彩珠じゃなかったら、こんなふうに自然体で藤野にはなれなかったかもしれない、と思えた。ふたりで一心不乱にマンガを描きながらもどこかゆったりしたあの時間も、彩珠とじゃなかったら生み出せなかっただろうな、と。

蒔田:そうだね。最初は、原作はもちろんだけど、アニメのイメージに近づけなくちゃいけないんじゃないかというのがプレッシャーだったけど、自分たちらしくやればいいんだと思えたのは、夏希のおかげ。

出口:この役を演じられて嬉しいっていう気持ちを大事にしながら、感じるままにやろうって思えたよね。それは、やっぱり、にかほの美しい景色と、そこに暮らすみなさんのおかげでもある。この映画を通じて、にかほという帰りたいと思える場所に出会えたのも、私はすごくうれしいんだよね。

蒔田:わかる。撮影中はずっと、東京で仕事をして、にかほに帰るって気持ちだった。にかほも、撮影で行っているはずなのに。

出口:みんな、観てどんなことを想うんだろうね。私は、試写を観て、ただただ余韻に浸っちゃったけど……感想を聞くたび、感動したって言われるシーンが違うから、きっとそれぞれ大事な感情を持ち帰ってくれるんじゃないかなあと思う。

蒔田:私はもはや、フラットな気持ちで観ることはできないから、ぜひ、みなさんの感想を聞かせていただきたいです。

取材・文=立花もも 撮影=金澤正平

■実写映画『ルックバック』 2026年9月11日(金)公開

■出口さん

スタイリスト:道端亜未/ヘアメイク:渋沢知美(beauty direction)

■蒔田さん

スタイリスト:小蔵昌子/ヘアメイク:Chika Ueno

衣装:トップス¥28,600、パンツ¥198,000、ベルト¥24,200/アカネ ウツノミヤ、その他スタイリスト私物

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