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過激すぎてネット版が削除された問題作? ココナラに掲載された「濁唾濔蓏」と呼ばれる儀式とは。ネット怪文書を集めた話題のモキュメンタリー・ホラー【書評】

  • 2026.9.11
ダクダデイラ 餅屋䖸/KADOKAWA
ダクダデイラ 餅屋䖸/KADOKAWA

読むんじゃなかった。心の底から、そう思った。読めば読むほど感じるのは、本を握る指先から夥しい数の虫が這い上がってくるような、その虫がいつの間にか身体の中へ入り込み、体内をうじゃうじゃ這い回っているような感覚。一度想像してしまったらもうダメだった。気持ちが悪い。おぞましい。理解できない。それなのに、ページをめくる手が止められない。それどころか読み終えたあとも気になって、何度も何度も読み返してしまった。……私も、この世のものではない何かに呪われたのではないか。そうじゃないとしたら、自分の身に何が起きているのかわからない。

そんな最高で最悪の読書体験を味わわせてくれる問題作が、『ダクダデイラ』(餅屋䖸/KADOKAWA)。過去十数年にわたって作者がネット上で見つけた怪文書を収集・編纂した、という体裁のモキュメンタリー・ホラーだ。もともとは小説投稿サイト「カクヨム」で連載され、その異様な内容が話題となり書籍化。書籍版には、ネット版では過激すぎて削除された文書も収録され、約3分の1も増量しているという。「本書には一部極めて過激な表現が収録されておりますので、心臓の悪い方は十分ご注意のうえご一読ください」――帯に添えられたその言葉に、私はむしろこの本を読むのが楽しみになっていた。

誰か、全部作り話だと言ってくれ……あまりのリアルさが恐ろしい

だが、ページをめくり始めてすぐ、帯の警告が決して大げさではなかったと思い知った。これほど禍々しいものが待っているとは思いもよらなかった。「これ、本当にモキュメンタリーなの?」――読み進めるほど、この怪文書群が作者の創作とはとても思えなくなってくる。本当にネットのどこかに存在していたのではないか。本書に並ぶ怪文書の「出典」とされるのは、Googleの口コミ、YouTubeのコメント欄、ブログ、X、ネット掲示板など、誰もが見覚えのあるものばかり。それぞれの文章の癖や何気ない余計な一言、投稿者同士のやりとりまで妙に生々しく、ネットをさまよっていたら偶然「見てはいけない書き込み」を見つけてしまったような錯覚を覚える。……誰か、すべて作り話だと言ってくれ。あまりにも「ありそう」で、だからこそ、そこに書かれた不可解な出来事が現実をどんどん侵食してくる。

点と点がつながるほど、逃げ場がなくなっていく

それに、どれか一篇読むだけでも十分に気味が悪いが、読み重ねるほど、もっと嫌なことに気づいてしまう。ある街で鳴り続ける爆音。蜘蛛人間。蛾。真っ赤な夢。帰宅すると自宅にあった見知らぬ人の自殺体。熟れたメロンのような甘い香り……。バラバラの怪談だと思っていたものの間に、同じ言葉や現象の気配がちらつき始める。だが、点と点がつながれば謎が解けるわけではない。自分が見ているものは、巨大で訳のわからない「何か」のほんの一部分なのではないか。そう思った途端、この世界はますます禍々しくなる。

なかでも私を最も苦しめたのが、表題にもなっている「濁唾濔蓏(ダクダデイラ)」。ここに収録されているのは、スキルマーケットサイト・ココナラに掲載されたというサービスページとその利用者の口コミだ。どうやらこのページは、「濁唾濔蓏」と呼ばれる儀式を手伝ってくれるサービスを紹介するものらしい。ここにはその儀式の手順まで具体的に書かれているが、とにかく気持ち悪い。否応なくその情景が脳内に浮かび、身体中が汚染されたような気がして、思わずえずいてしまう。なんで人には、想像力なんてものが備わっているのだろう。頭の中に浮かんだ情景が今もなお消えてくれそうになく、気持ちが悪くて仕方がない。

書籍版で、さらに地獄の底が抜ける

そんなおぞましい文書と、己の想像力に痛めつけられながら、のたうち回るように読み進めた先に現れるのが、この本で最も凄惨な記録「人ノ形ヲシタ地獄–Inferno Humanoid–」だ。これは紛れもなく地獄。とりわけ書籍版でのみ読める♯2以降については、ここで詳細を書く気にもなれない。あまりにも血なまぐさい。あまりにも惨い。読んでいるうちに、すっと血の気が引く。心臓がばくばくと鳴り、背筋に冷水を流し込まれたような寒気が走る。涙が込み上げてくる。「もうやめてくれ」と身体は悲鳴を上げているようなのに、次に何が書かれているのか確かめずにはいられない。知れば知るほど苦しくなるのに、それでもまだ知りたくなる。

…ああ、どうして、こんな本を読み始めてしまったのだろう。読まなければよかった、と今でもそう思う。それなのに「面白かった?」と問われれば、悔しいが、「ものすごく面白かった」と答えるほかない。「だから皆さんにもぜひ」と言いたいところなのだが、本当に薦めていいのだろうか、この本。知らないほうが幸せなことも、きっと、この世界にはある。それでも怖いもの見たさ、それに触れたい人はこの本を手に取って、大いに後悔するがいい。

文=アサトーミナミ

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