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もっと匂いを嗅ぎたかった。もっと撫でたかった。17年間一緒にいた愛犬との別れが教えてくれた「今、この子といる時間」の尊さ【書評】

  • 2026.9.11

【漫画】本編を読む

『アルへ』(あるた梨沙/KADOKAWA)は、17年間ともに暮らした愛犬との別れを描いたコミックエッセイだ。ペットとの日々を振り返る作品は数多いが、本作は「もっと一緒にいたかった」という、ごく当たり前で、それでいて誰もが抱いてしまう後悔とその先のことをまっすぐに描いている。

主人公は、17年間をともに過ごした愛犬・アルと暮らした著者。散歩に行き、おもちゃで遊び、何気ないけどかけがえのない毎日を積み重ねてきた。しかし、ある日アルは余命1カ月と宣告される。耳が聞こえなくなり、目も見えにくくなっていくなかでも、アルは変わらず著者の姿を探し続ける。その姿に、著者はアルと過ごしてきた時間の尊さをあらためて噛みしめることになる。

胸を打たれるのは、「もっと○○してあげればよかった」という後悔が飾らず描かれていることだ。もっとなでればよかった。もっとにおいを嗅げばよかった。もっと写真を撮っておけばよかった。17年間を一緒に過ごしたはずなのに、それでも「足りなかった」と思うのは、ペットと暮らしたことがある人なら共感せずにはいられないはずだ。

アルとの思い出はどれも温かく、そのひとつひとつを見ていると自然と涙がこぼれてしまい、別れの場面が深く胸に迫る。しかし、残された著者ともう一匹の愛犬・ルルとの時間は続いていく。本作は悲しみだけを描いてはいない。アルへの悲しみを抱えながらも、ルルにさらなる愛情を注いでいこうと決意する姿に、悲しみを抱きながらも明日へ踏み出していくことの大切さを教えてくれるのだ。

いつか必ず訪れるペットとの別れ。その現実から目を背けるのではなく、「今」という時間をもっと大切にしようと思わせてくれる本作。今、愛犬と暮らしている人には一日一日をより大切にするきっかけを、そして、愛犬を見送ったことのある人には、思い出を優しく抱きしめる時間の大切さをあらためて教えてくれるはずだ。

文=松永 慎

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