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食べることで余命1ヶ月の女の子が9ヶ月生きた。体の状態だけではわからない命の不思議【監修者インタビュー】

  • 2026.9.9
 (C)牧野日和・かなしろにゃんこ。/竹書房
(C)牧野日和・かなしろにゃんこ。/竹書房

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「お食い締め(おくいじめ)」病気や高齢で口から食べられなくなった人に対し、最後まで“食べること”へ丁寧に向き合えるように、本人や家族を支えていく食支援のことである。この言葉を考案し20年以上前から活動しているのが、言語聴覚士で摂食嚥下障害領域(飲み込み)を専門とする牧野日和先生だ。

『お食い締め 口から食べられないアナタへ ~言語聴覚士が見たそれぞれの選択~』(牧野日和(愛知学院大学教授):原案・監修、かなしろにゃんこ。:漫画/竹書房)には、牧野先生がこれまで出会ってきた患者や家族の葛藤が描かれている。

もう一度焼き肉を食べたいと願う、寝たきりの男性。生きる気力をなくした高齢の母に、なんとか好物を食べてもらいたい娘。「食べること」にまつわる最期の時間を、牧野先生はどのように見つめてきたのだろうか。原案者・監修者としての想いを伺った。

——本作では、寝たきりでまったく食べる意欲がわかないのに、自分の子どもや孫のために食事を口にした、という患者さんのお話もありました。誰かを想うことで「食べたい気持ち」が生まれることもあるのですね。

牧野日和先生(以下、牧野):患者は病人としてではなく、家族の中の一存在をまっとうして余生を生き、亡くなっていくのだと思います。看取り期の支援は一般的に重苦しいネガティブなイメージがあるかもしれませんが、私は「命の美しさ」にふれることができる舞台でもあると思います。スタッフは対象患者と家族をつなぐための舞台を支える、黒子かもしれません。

——食べたいという願いが叶って、余命1ヶ月の女の子が9ヶ月生きたお話もありました。まるで奇跡のようですが、食べることが心や体にどう作用するのでしょうか。

牧野:最長で5年寿命が延びた方がいて、以前はそれを奇跡だと思っていました。命の中にまだ生きる力が残っていて、それが稼働するのだろうか、と。でも今の考え方は違います。

口から食べることで家族や周りの人たちと交流する社会性が高まり、笑顔が増えることで認知機能も高まって心が支えられ、生きる力が稼働させられたのかな、と思っています。

心身をすこやかに保つための3要素には、身体面・社会性・認知機能があります。口から管を入れれば必要な栄養は入りますが、それだけでは限界がある。食べることを通して家族と充実した時間を過ごし、心身ともに生き返る。生きるっていうのは体のことだけじゃないんだな、と今は思っています。

——科学的に説明できることなんですね。

牧野:東京大学教授の飯島勝矢さんという有名な先生がフレイル(虚弱/加齢に重なう心身の活力の低下)の予防を広めています。また、これは私の個人的な見解にはなりますが、「若い頃からフィジカル(体力や筋肉、体の強さなど)がしっかりしている人はリカバリーしやすいんじゃないか」とも考えています。

取材・文=吉田あき

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