1. トップ
  2. エピソード
  3. 「乾杯の前に、ひとつだけお願いがあります」披露宴での上司の乾杯の挨拶。だが、思わぬ一言に親族席が凍った瞬間

「乾杯の前に、ひとつだけお願いがあります」披露宴での上司の乾杯の挨拶。だが、思わぬ一言に親族席が凍った瞬間

  • 2026.9.10

グラスは、もう全員の手にあった

いとこの披露宴に出席したときのことです。新郎新婦は同じ会社に勤めていて、会場の右半分には職場の人たちがまとまって座っていました。

司会に呼ばれ、乾杯の発声を任された上司が立ち上がりました。そのころには、私たちもすでにグラスを手にしています。

「本日は、本当におめでとうございます」

上司は笑顔でそう切り出しました。

「いやあ、職場でも仲のいい二人ですからね。こうして並んでいるのを見ると、こちらまでうれしくなります」

会場から小さな笑い声が上がりました。隣にいた叔母も、「いい上司なのね」と小声で言いながら笑っていました。

ところが、上司はそこで少し間を置いたんです。

「ただね、乾杯の前に、お二人にひとつだけお願いがあります」

私はてっきり、「これからも仲良く」とでも続くのだと思いました。

上司は新郎新婦のほうを見て、少し笑いながら言いました。

「お願いだから、夫婦喧嘩したときに会社まで持ってこないでくださいね」

会場の空気が、一瞬で止まりました。

さらに上司は、困ったように笑いながら続けました。

「いや、本当にね。どっちの味方をすればいいのか、こっちも困っちゃうから」

冗談のつもりだったのかもしれません。でも、笑う人はほとんどいませんでした。

私も、持ち上げかけたグラスをそのまま止めていました。

「今、それ言う?」と叔母がつぶやいた

近くの席から、小さな声が聞こえました。

「え…今の、本気?」

「いや、さすがに冗談でしょ…」

そう言っている本人たちも、どう反応していいのか分からない顔をしています。

新郎新婦は並んだまま、なんとか笑顔を崩さないようにしていました。

いとこも口元では笑っていましたが、さっきまでとは明らかに表情が違って見えました。

上司は場の空気に気づいたのか、それとも気づかなかったのか、少し慌てたようにグラスを上げました。

「まあまあ、今日はめでたい日ですから。二人とも、末永く仲良くね。それでは……乾杯!」

「か、乾杯…」

あちこちから声が重なりましたが、最初の勢いはありませんでした。拍手も、少し遅れて広がっていきました。

席に座ると、叔母がすぐに私の耳元で言いました。

「ちょっと…今、それ言う?」

私も思わず苦笑いしました。

「びっくりしました。あれは会社で言ってほしいですよね」

「そうよねえ。今日くらいは黙っててあげればいいのに」

叔母はそう言って、心配そうに新郎新婦のほうを見ました。

実際に職場でどんなことがあったのか、親族の私には分かりません。上司にも、普段から何か困っていた事情があったのかもしれません。

それでも、披露宴の乾杯直前に伝える必要はなかったはずです。

そのあと料理が運ばれ、会場にも少しずつ笑い声が戻りました。それでも私はしばらく、さっきまで明るく笑っていた二人の表情が頭から離れませんでした。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ