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「ぬいぐるみも顔がいのち」吉德が“目が合うかわいさ”を生む理由と、セミリアルのこだわり

  • 2026.9.7

「ぬいぐるみも顔がいのち」吉德が“目が合うかわいさ”を生む理由と、セミリアルのこだわり

江戸最古の人形の老舗である吉德。実は70年にわたってぬいぐるみづくりを手がけています。人形づくりで培った技術と美意識を受け継ぎ、多くのファンに愛されるぬいぐるみをどのように生み出しているのでしょうか。

目が合った瞬間、誰が見ても「かわいい!」

2007年に発売した「幸福大熊猫(シンフーパンダ)」や、2011年に発売した「うみ・りくのなかまたち」シリーズのヒヨコなど、長く愛される商品がある一方で、デザイナーが自信をもって世に送り出した商品が支持を得ないこともある。そんなとき、社内ではこんな言葉が聞かれるという。

「これは吉德の顔じゃなかったかもね」

「人形は顔がいのち」の吉德だからこそ、「ぬいぐるみも顔がいのち」。ぬいぐるみの試作品が出来上がると、デザイン室では何種類もの目玉を実際に当てながら検討を重ねる。ほんの少し大きいだけで、幼く見える。逆に小さすぎると、急に無機質になることも。マニュアルがあるわけではない。それでも、長く携わるスタッフは皆、感覚的に理解している。大切なのは、動物そのものをリアルに再現するというより、「その動物に人が抱くイメージ」を形にしていくこと。デフォルメしすぎない。でも、本物に寄せすぎて怖くもしない。その「ちょうど真ん中」を探す。この絶妙なバランスを「セミリアル」と呼んでいる。流行に乗りすぎず、派手なことはしない。目が合った瞬間、誰が見ても「かわいい!」と自然に感じられるぬいぐるみこそが、吉德らしさなのだ。

試作を重ねていくぬいぐるみづくり

完成イメージが決まったら型紙を起こし、生地を縫い合わせながらサンプルを製作。目の位置や表情の違いも細かく確認し、一つひとつ丁寧に仕上げていく。

性別、性格、年齢、名前、すべては持つ人次第

最近ではコロナ禍を経て、いわゆる「ぬい活」が広がりを見せている。一人でお出かけするときのお供として、ぬいぐるみを連れていき、立ち寄ったカフェや旅先で撮った写真をSNSに投稿する。大人がぬいぐるみを持ち歩いたり、楽しんだりすることも自然になり、女性だけでなく、男性の「ぬい活」も増えている。吉德のぬいぐるみ売り場にも男性客が増えていて、「ペットにそっくりだから」などと、真剣なまなざしで選ぶ男性も珍しくない。

ぬいぐるみには性別がない。性格や年齢、名前も持つ人次第だ。「ぬい活」が支持される理由は、見た目のかわいらしさだけではないのかもしれない。

人気の「レトロぬいぐるみこれくしょん」

昭和から平成にかけて親しまれた人気商品の復刻シリーズが幅広い世代に大人気。当時のプリントや、のどかな表情、レトロな衣装などが忠実に再現されており、懐かしさを誘う。

ぬいぐるみは人生の相棒

吉德では今秋、ぬいぐるみ事業70周年を記念した展示を予定している。歴代の商品や当時のカタログが並び、吉德のぬいぐるみの歴史を振り返る企画になるという。子どもの頃、いつも一緒に眠っていた「あの子」の記憶が、ふいによみがえる人もいるだろう。

売り場で一つひとつ顔を見ていると、少し泣いているように見える子や、なぜかやけに目が合う子がいる。SNSでは、「少し困った顔に見えたから、この子にした」「なんだか自分に似ている気がした」と、「かわいいから」だけでなく、あえて少し個性的な表情のぬいぐるみを選ぶ人の投稿も少なくない。同じ型紙から生まれていても、ほんの少しの布の張り方やちょっとした目の位置の違いで、表情は微妙に変わる。

「この子とは仲良くなれそう」 「なんだか放っておけない」

そんな理由で選ばれていくぬいぐるみもいるという。いつの時代も、そしていくつになっても。ぬいぐるみは静かに、私たちのそばにいる。

ぬいぐるみと目が合うワケ

ぬいぐるみと目が合って、「この子だ」と感じた経験はないだろうか。実はそれ、偶然ではない。売り場で自然と目が合うよう、試作品ができるたびに何種類もの目を当て比べ、位置や顔の角度、大きさまで細かく調整されているからだ。同じ型紙から生まれても、ほんの少しの違いで表情は変わる。「なんだか放っておけない」と感じるのも、そんな工夫があるからで無理はない。

※この記事は「ゆうゆう」2026年夏号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

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